過去問で受かる登録販売者

関西広域連合の過去問をもとに登録販売者試験の学習範囲を解説しています。

2023年度(令和5年度)登録販売者試験過去問 第3章(問51~60)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第3章の問51~60を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

 

目次

問51 問52 問53 問54 問55 問56 問57 問58 問59 問60

 

 

問51
外皮用薬及びその配合成分に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a 温感刺激成分が配合された外皮用薬は、打撲や捻挫などの急性の腫れや熱感を伴う症状に対して適している。
ジフェンヒドラミンは、適用部位でプロスタグランジンの産生を抑えることで、湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも等の皮膚症状の緩和を目的として使用される。
c ヘパリン類似物質は、患部局所の血行を促す目的で用いられるほか、抗炎症作用や保湿作用も期待される。
アンモニアは、皮下の知覚神経に麻痺を起こさせる成分として、主に虫さされによる痒みに用いられる。

 

a 誤

外皮用薬の局所刺激成分には、冷感刺激成分と温感刺激成分があります。熱感を伴う部位に温感刺激成分を使用すると、より熱感が強くなってしまい逆効果です。基本的には、温感刺激成分は肩こり等の慢性の症状に使用します。

b 誤

湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも等の皮膚症状を緩和するという目的は正しいですが、作用相手はプロスタグランジンではなく、ヒスタミンです。抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンは、所謂アレルギー反応に分類される症状に作用します。

c 正

ヘパリン類似物質は主に血行促進成分として用いられますが、抗炎症作用や保湿作用も持ちます。血行を促進するために、血の止まりにくい血友病などの疾患を持つ人は、使用を避けます。

d 正

アンモニアは毒だから肝臓で尿素に変えられる、という話を聞いたことはあるでしょうか。アンモニアの毒性は主に神経への影響として現れます。皮膚の神経を麻痺させることで痒みを抑えます。

 

 

 

問52
毛髪用薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 効能・効果に「壮年性脱毛症」や「円形脱毛症」等の疾患名を掲げた製品の中には、医薬部外品として販売されているものもある。
b カシュウは、タデ科ツルドクダミの塊根を基原とする生薬で、頭皮における脂質代謝を高めて、余分な皮脂を取り除く作用を期待して用いられる。
エストラジオール安息香酸エステルは、女性ホルモンによる脱毛抑制効果を期待して配合されている場合がある。
d ヒノキチオールは、ヒノキ科のタイワンヒノキ、ヒバ等から得られた精油成分で、抗菌、抗炎症などの作用を期待して用いられる。

 

a 誤

医薬部外品は、言葉の通り医薬品ではないため、壮年性脱毛症や円形脱毛症のように、正式な疾患名を掲げて、それに対する作用を示すことは出来ません。これらの病名が記されている場合は医薬品であり、医薬部外品には育毛剤などがあげられます。

b 正

問題文は正しいです。もちろん頭皮から油分がなくなってしまってはかさかさ肌になってしまい問題ですが、油分が多すぎてもぎとぎとしてしまい、あまり見た目の良いものではありません。脂質の代謝とは、ここでは脂質を分解することを指しており、頭皮にたまった脂質を分解することによって全体の脂質量を減らします。

c 正

ご時世的に不適切な表現かもしれませんが、歳をとってはげになるのは男性のイメージではないでしょうか。いくらジェンダーバイアスを除こうと思っても、男性には男性ホルモンがあるし、女性には女性ホルモンがあるので、外見上の違いはホルモン治療でもしない限りどうすることもできません。

そしてこの男性の方が年を取ったら髪が薄くなりやすいイメージの通り、脱毛は男性ホルモンの過剰な働きにより生じると考えられています。よってこれと拮抗する女性ホルモンの成分の一部であるエストラジオールの使用は、脱毛抑制効果を持ちます。

d 正

ヒノキチオールとは、ヒノキからとれる油分を精製したもので、薄めず使うとダニよけにもなります。抗菌作用や抗炎症作用を覚えておきましょう。

 

 

 

問53
歯痛・歯槽膿漏薬の配合成分とその配合目的としての作用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
<配合成分ー配合目的としての作用>
a ジブカイン塩酸塩ー齲蝕(むし歯)で露出した歯髄の知覚神経の伝達を遮断して痛みを鎮める。
b カルバゾクロムー歯肉炎、歯周炎(歯槽膿漏)の症状である口臭を抑える。
c オイゲノールー齲蝕(むし歯)部分での細菌の繁殖を抑える。
d銅クロロフィリンナトリウムー炎症を起こした歯周組織の修復を促す。

 

a 正

ジブカイン塩酸塩は、神経伝達に必要なチャネルという体内のゲートが開くことを阻害するために、神経伝達、つまりそれによる痛みの伝達を遮断します。虫歯では歯が痛んで歯の神経が露出することで激痛が生じるため、神経伝達の抑制が局所麻酔作用をもたらします。

b 誤

カルバゾクロムには、毛細血管を補強することで出血を抑える作用があります。

歯肉炎などによる口臭を抑えるのは、銅クロロフィリンナトリウムです。

c 正

オイゲノールは、殺菌消毒成分です。虫歯が生じた部位での殺菌の繁殖を抑えます。刺激性があるため、歯に塗っても問題ありませんが、口腔粘膜にはつかないように注意します。

d 正

銅クロロフィリンナトリウムは、bで述べた口臭抑制効果の他に、組織(今回は歯周)を修復する作用があります。

 

 

 

問54
次の記述は、登録販売者と禁煙補助剤(咀嚼剤)の購入者との会話である。購入者からの相談に対する登録販売者の説明について、適切なものの組合せを一つ選べ。

<購入者>ニコチン離脱症状とはどのような症状ですか。
<登録販売者>血中のニコチン濃度の低下によって、イライラしたり、集中できなくなったり、落ち着かない等の症状がでます。

<購入者>ニコチン置換療法とはどのようなものですか。
<登録販売者>喫煙を継続しながら徐々に本剤に変更していく方法です。離脱症状の軽減を図りながら徐々に摂取量を減らし、最終的にニコチン摂取をゼロにします。

<購入者>本剤を使用する場合、食べ物や飲み物で気をつけることはありますか。
<登録販売者>口の中が酸性になるとニコチンの吸収が増加するので、口腔内を酸性にするコーヒーや炭酸飲料などを飲んだ後はしばらく使用を避ける必要があります。

<購入者>高血圧の薬を飲んでいるのですが、本剤を使用しても大丈夫ですか。
<登録販売者>使用している治療薬の効果に影響を生じたり、症状を悪化させる可能性があるため、使用の適否については主治医と相談してください。

 

a 正

タバコに含まれるニコチンという物質には依存性があります。何かの依存状態から抜け出そうとするとき、身体的離脱と精神的離脱という2つの離脱症状が起こります。(もちろんないこともあります。)身体的離脱としては、身体の震えや全身のだるさ、精神的離脱にイライラや集中力の低下があげられます。

b 誤

そもそもの治療の目的がタバコをやめることです。その障壁として主に、①たばこを吸うという行為をやめること②ニコチンへの依存から抜け出すこと、の2つがあげられます。依存した物質から一気に抜け出すと離脱症状が大きく生じかねないので、リスクを伴いますが、タバコを吸うという行為は治療初期からやめることが重要になります。

c 誤

ニコチンは塩基性の物質なので、口腔内が酸性の場合に中和反応が起こり、吸収量が低下します。ニコチン吸収量が少ないとだけ聞くと、いいようにも思えますが、あくまで治療の一環としてニコチンを摂取することが求められているので、吸収量が多いのも少ないのも問題になります。

d 正

ニコチンは血管を収縮させることで血圧を上昇させる作用を持つため、高血圧の人がニコチンを摂取すると病状を悪化させる恐れがあります。このようなケースの禁煙治療では、ニコチンをできる限り使用しない方法を医師が考えることになります。

 

 

 

問55
ビタミン成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a ビタミンB6は、脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素である。
b ビタミンB2は、炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、腸管運動を促進する作用がある。
c ビタミンDの欠乏症として、高カルシウム血症、異常石灰化が知られている。
d ビタミンAは、夜間視力を維持したり、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素である。

 

a 誤

 ビタミンB6は、脂質の代謝ではなくタンパク質の代謝に関わります。なお、問題文の説明はビタミンB2に該当します。

b 誤

ビタミンB2の説明は選択肢aの通りです。問題文のように、炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、腸管運動を促進するのはビタミンB1です。

c 誤

ビタミンDはカルシウムの吸収を促進する成分なので、高カルシウム血症になるのはビタミンDが欠乏しているときではなく、過剰に存在しているときです。なお、異常石灰化という言葉について、石灰の構造を覚える必要はありませんが、石灰=成分にカルシウムを含む、とは覚えておきましょう。

d 正

問題文が正しいです。ビタミンAが欠乏すると、夜に視力が弱まる夜盲症を発症しやすくなります。

 

 

 

問56
滋養強壮保健薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a コンドロイチン硫酸は、肝臓の働きを助け、肝血流を促進する働きがあり、全身倦怠感や疲労時の栄養補給を目的として配合される場合がある。
b カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素であり、筋肉の収縮、血液凝固、神経機能にも関与する。
アスパラギン酸ナトリウムは、アスパラギン酸のビタミンCの吸収を助ける等の作用を期待して、滋養強壮保健薬やかぜ薬に配合されている場合がある。
ナイアシンは、下垂体や副腎系に作用してホルモンの分泌の調節に関与するため、ときに経血量が多くなることがある。

 

a 誤

問題文の説明に合致するのはグルクロノラクトンです。健康サプリのCMで元気にウォーキングをする映像とともに、”コンドロイチン配合!”と謳うものを見たことがないでしょうか。コンドロイチンは関節痛や筋肉痛に効果があります。

b 正

骨を丈夫にするのにカルシウムが必要なのはイメージ通りではないでしょうか。このほか、体内では様々なシグナルとしてカルシウムが用いられます。普段は体のそこら中にあるものではなく、筋肉を収縮させたいとき、血液を凝固させたいときなど、特定のときに体内の収納庫から放出されることで、普段は作動しない機能を活性化させます。

c 誤

ビタミンCの吸収を助けるのはヘスペリジンです。アスパラギン酸は身体の構成要素であるタンパク質や、遺伝情報を保持するDNAのもとである核酸を作る際に非常に重要なアミノ酸であり、これを摂取することで体内の色々な代謝活動が活発になります。

d 誤

問題文の説明はビタミンEのものです。ナイアシンは、ニコチン酸アミドという、身体の様々な代謝を進める物質です。タバコに含まれるニコチンとは別物として扱いましょう。主に皮膚の機能を維持する役割を担います。

 

 

 

問57
一般用医薬品防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向があるものの胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症に適すとされる。
b 構成生薬としてマオウは含まれない。
c 便秘に用いられる場合には、漫然と長期の使用は避け、1週間位使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談するなどの対応が必要である。
d 肥満症又は肥胖症に用いられる場合、医薬品の販売等に従事する専門家においては、生活習慣の改善が重要であることを説明する等、正しい理解を促すことが重要である。

 

a 誤

問題文の説明は大柴胡湯を指します。

b 誤 c 正

防風通聖散は、体力が充実して腹部に皮下脂肪が多いものの、肩こりや便秘、吹き出物、肥満症に効きます。副作用を起こしやすい三大成分であるカンゾウ・マオウ・ダイオウを全て含んでいるため、長期使用は危険であり、1週間以上の使用は控えます。

d 正

肥満には生活習慣だけでなく、遺伝などの様々な要因が絡んでいるため、医薬品購入者の生活習慣が原因だと決めつける物言いは間違いです。しかし、肥満の状態を薬に頼ってしまうのが問題であることも伝える必要があります。

 

 

 

問58
感染症の防止及び消毒薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 滅菌は、物質中のすべての微生物を殺滅又は除去することである。
b 消毒薬の効果は、微生物の種類による影響を受けない。
c クレゾール石ケン液は、結核菌を含む一般細菌類、真菌類に対して殺菌消毒作用を示すが、大部分のウイルスに対する殺菌消毒作用はない。
次亜塩素酸ナトリウムは、皮膚刺激性が弱く、手指・皮膚の消毒に適している。

 

a 正

”滅”とは、絶滅や全滅など根こそぎいなくならせるような表現であり、すべての微生物排除を指します。殺菌や消毒は、滅菌とは違い、微生物の数を減らすことを指します。

b 誤

例えばアルコールは多くのウイルスに効きますが、これはアルコールが細菌の外側にある細胞壁と呼ばれるガードを溶かすからです。もともとこのガードをもたないノロウイルスのようなウイルスにはアルコール消毒は意味をなしません。このように、細菌やウイルスは1つ1つ特性を持つので、全てに効く薬品というのはほぼないと思っておいて問題ないでしょう。

c 正

問題文が正しいです。ちなみに、真菌とは、細胞よりも複雑な構造をもつ生物で、カビや酵母菌を含みます。

d 誤

次亜塩素酸ナトリウムはかなり皮膚刺激性の強い物質です。インターネット検索をすると、よく知っている洗剤が複数出てくるかと思います。病院内の清掃等にも使われます。

 

 

 

問59
殺虫剤・忌避剤及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a シラミの防除には、フェノトリンが配合されたシャンプーが有効である。
b ゴキブリの卵は、殺虫剤の成分が浸透しやすい殻で覆われているため、燻蒸処理を行えば駆除できる。
c イエダニは、ネズミを宿主として生息場所を広げていくため、まず、宿主動物であるネズミを駆除することが重要である。
イカリジンは、年齢による使用制限がない成分で、蚊やマダニに対して殺虫効果を示す。

 

a 正

フェノトリンはシラミに効く殺虫成分です。シャンプーに含ませておくことで、頭皮に寄生したシラミの駆除に役立ちます。シラミにより生じた腫れ等の症状には効きません。

b 誤

ゴキブリの殻は医薬品成分を通しません。よって燻蒸処理可能なのは孵化した後のものだけであり、タマゴがあると思われるときは、幼虫に孵化するまで待ってから処理し直します。

c 正

ペストなどを媒介するイエダニはネズミを宿主とします。よってネズミの駆除がイエダニの駆除にも関わってきます。ただし、すでにイエダニがいる状態で宿主のみを殺してしまうと、住処を失ったダニが動き回ってしまうため、イエダニの駆除も同時に行います。

d 誤

イカリジンは、ディートと呼ばれる殺虫成分と似た作用をもちます。ディートは最も効果的な殺虫成分とされています。

 

 

 

問60
尿糖・尿タンパク検査薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 通常、尿は弱アルカリ性であるが、食事その他の影響で中性~弱酸性に傾くと、正確な検査結果が得られなくなることがある。
b 尿タンパク検査の場合、中間尿ではなく出始めの尿を採取して検査することが望ましい。
c 尿タンパク検査の場合、原則として早朝尿(起床直後の尿)を検体とし、激しい運動の直後は避ける必要がある。
d 尿糖検査の結果に異常がある場合、その要因は、腎炎やネフローゼ、尿路感染症、尿路結石等がある。

a 誤

通常、尿は弱酸性です。この本来の状態を確認したいのに、食後に採尿すると尿が塩基性側に傾いてしまい、それが食事の影響なのか、普段から起こっていることなのかが分からなくなってしまいます。よって、尿検査は必ず朝一番の尿で行います。

b 誤

尿検査では、尿に含まれる細菌の量も確認します。尿道や、尿の排出部には細菌がついている可能性があり、出始めの尿はこれらの細菌を多く含んでしまいやすいために、一通り尿が尿道を洗い流した後のものを検査に使用します。

c 正

食後の尿を避けたとしても、どうしてもその日に食べたものやその日の生活スタイルによって、尿たんぱくの出方が変わってしまうものです。早朝の尿を取ることで、毎度同じ条件の下での検査が可能になります。また、強度の強い運動をしたあとの尿は、尿たんぱくが上昇していることが多いため、検査に使用することは控えます。

d 誤

尿糖検査の異常は主に高血糖の場合に起こります。高血糖以外には、腎性糖尿病といい、血中の糖分が多いわけではないのに尿中に糖分を多く出し過ぎてしまう疾患の可能性があります。

問題文にある腎炎やネフローゼ、尿路感染症、尿路結石はすべて、尿糖ではなく、尿たんぱくの異常の原因です。