過去問で受かる登録販売者

関西広域連合の過去問をもとに登録販売者試験の学習範囲を解説しています。

2023年度(令和5年度)登録販売者試験過去問 第2章(問61~70)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第2章の問61~70を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

目次

問61 問62 問63 問64 問65 問66 問67 問68 問69 問70

 

 

問61
消化管に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a 食道の上端と下端には括約筋があり、胃の内容物が逆流しないように防いでいる。
b 胃で分泌されるペプシノーゲンは、胃酸によりペプシンとなって、脂質を消化する。
c 小腸は全長6~7mの臓器で、十二指腸、回腸、盲腸の3部分に分かれる。
d 大腸内には腸内細菌が多く存在し、腸管内の食物繊維(難消化性多糖類)を発酵分解する。

 

a 正

少しの刺激で食道の食べ物が口に戻ってきては気持ち悪いですし、胃の内容物が食道に逆流するというのは、食道に胃酸が流入することを指すので、胸焼けを起こすなど、かなり都合が悪いです。これらを防ぐために食道の上下には括約筋という、入り口と出口の開き具合を調節するための筋肉があります。

b 誤

脂質を消化するのはリパーゼと言われる消化酵素です。ペプシノーゲンから作られたペプシンはタンパク質を消化します。胃で消化されるのはタンパク質であり、その消化酵素ペプシンだと覚えておきましょう。

c 誤

盲腸は大腸の一部です。小腸を構成するのは十二指腸と空腸、回腸の3つです。十二指腸は胃からの接続部に位置し、かなり短いです。その後空腸と回腸を順に通ったのちに消化管内の食べ物は大腸に達します。

d 正

例えば、酪酸菌と呼ばれる細菌は、食物繊維を分解することで酪酸と呼ばれる、エネルギー源を生み出します。消化酵素の効かない食物繊維は基本は便として排出されるだけですが、細菌による発酵分解を受けることでエネルギー生産に役立てることが可能になります。

 

 

 

問62
肝臓及び胆嚢に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 腸内に放出された胆汁酸塩の大部分は、大腸で再吸収されて肝臓に戻る。
b 胆汁に含まれるビリルビンは、赤血球中のグロブリンが分解された老廃物である。
c 小腸で吸収されたブドウ糖は、肝臓に運ばれてグリコーゲンとして蓄えられる。
d 胆管閉塞によりビリルビンが循環血液中に滞留すると、黄疸を生じる。

 

a 誤

胆汁酸塩は、肝臓で作られたのちに、胆嚢から十二指腸に放出される胆汁の成分で、脂質の消化を容易にします(消化そのものは行わないため消化酵素ではありません)。この胆汁酸塩は、使い捨てではなくほとんどが小腸で再吸収されて肝臓に戻ります。これを腸肝循環を呼びます。

b 誤

ビリルビンは、赤血球中の酸素を運搬する成分であるヘモグロビンの老廃物で、便の色のもとです。(ただしビリルビンそのものの色は茶色でなく黄色です。)グロブリンは多くが免疫グロブリンという、免疫に関わる物質を指しています。これは赤血球とは別に血液中を流れています。

c 正

小さい分子であるブドウ糖がたくさんあっても扱いに困るので、吸収されたブドウ糖は鎖のようにつながれたグリコーゲンとして肝臓にためられます。グリコーゲンの状態では直接エネルギー産生には使用できないので、必要なときに必要な分のみグリコーゲンを分解してグルコースを取り出します。

d 正

bでも書いたとおり、ビリルビンは黄色い色素です。ビリルビンは通常、胆汁の一部として十二指腸に出されて消化経路に合流しますが、胆管が閉塞していると、この排出経路が機能しないためにビリルビンが特定の場所にたまってしまい、その色(黄色)が皮膚の上からも見えるようになります。これが黄疸です。

 

 

 

問63
呼吸器系に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 気道は上気道、下気道に分けられ、気管は上気道に含まれる器官である。
喉頭の大部分と気管から気管支までの粘膜は、線毛上皮で覆われている。
c 横隔膜や肋間筋によって、肺が拡張・収縮して呼吸運動が行われている。
d 肺胞の壁を介して、二酸化炭素が血液中の赤血球に取り込まれる。

 

a 誤

気道には上気道と下気道があります。上気道は鼻から吸った空気が最初に通る空間である鼻腔から、喉頭と呼ばれる、のどぼとけの少し下の方までの空気の通り道を指します。その先の気管、気管支、肺を合わせて下気道といいます。

b 正

喉頭から気管支まで広がる線毛上皮は、鼻や口から入ってきた異物を絡め取ることで、異物が体内に入ってしまうことを防ぎます。線毛に絡め取られた花粉やほこりなどの異物は、鼻水の一部として体外に出たり、くしゃみをした際にその勢いで体内から取り除かれます。

c 正

横隔膜は肺の下で肺を支えていて、肋間筋は肋骨の間を埋める筋肉として物理的に肺を包み込んでいます。この横隔膜と肋間筋の2つが協働して働くことで呼吸が行われます。具体的には、横隔膜が下がって、肋間筋も引き延ばされると、肺の入るスペースが大きくなるので、肺の中にたくさんの空気を取り込むことが出来ます。これが息を吸っている状態です。

d 誤

赤血球の役割は、肺で受けとった酸素を全身に運搬し、全身で受け取った二酸化炭素を肺に運搬して呼気として排出させることです。よって、選択肢のように、赤血球が肺で二酸化炭素を受け取ることはありません。

 

 

 

問64
循環器系に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a 四肢を通る動脈には、内腔に向かう薄い帆状のひだが一定間隔で存在する。
b 血管壁の収縮と弛緩は、自律神経系によって制御される。
心室には、血液を送り出す側には弁があるが、取り込む側には弁がない。
d 血管系は閉鎖循環系であるのに対して、リンパ系は開放循環系である。

 

a 誤

内腔とは、血管の内側の血液が通ってる空間のことです。また、動脈は、心臓から血液を送り出す方向の血管で、静脈は、身体から心臓に戻ってくる血液が通る血管です。動脈は血液を送り出すために心臓の強いパワー(収縮力)を使っているため逆流はほとんど起こりませんが、身体の末端から血液が返ってくる静脈は、勢いに欠け、逆流しやすいです。この逆流を防ぐため、静脈にのみ、弁という名のひだがついています。

b 正

血管壁の収縮は血圧上昇を、血管壁の弛緩は血圧低下を意味します。興奮しているときや緊張しているとき、全身の血圧が上がっているような変な感覚になったことはないでしょうか。興奮性の反応が起こるとき、自律神経の一つである交感神経の作用で血圧が上昇します。反対に、リラックスしているときは自律神経のもう一つの要素である副交感神経が亢進することで血圧の低下が起こります。

c 誤

aと考え方はほとんど同じです。血液を送り出すときは勢いがあるため、弁は必要ありませんが、取り込むときには送り出すときほどの勢いがなく、逆流しやすいために弁でこれを防ぎます。

d 正

人間の血管は閉鎖血管系、つまり血液は心臓から出て再び心臓に戻るまでに一度も血管をでることがありません。(正しくは液体成分が一部しみ出したり、一部成分が尿として濾し出されたりなどの例外もあります。)対してリンパ管は開放循環系、つまりリンパ液は全身を回る途中でリンパ管という専用の管から抜け出して、周囲の組織に浸潤していきます。

 

 

 

問65
血液に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 血液の粘稠性は、主として血漿の水分量や白血球の量で決まる。
アルブミンは、血液の浸透圧を保持する働きがある。
c 赤血球は、中央部がくぼんだ円盤状の細胞で、血液全体の約10%を占める。
d リンパ球は、血管壁を通り抜けて組織の中に入り込むと、マクロファージと呼ばれる。

 

a 誤

血液の粘稠性は、血漿の水分量と赤血球の量で決まります。血液の構成成分は、半分以上が血漿と呼ばれる、ほとんど水分からなる液体成分で、残りの固体成分のうち99%が赤血球です。よって血液の粘稠性に関わるのは、白血球でなく赤血球の量です。

b 正

アルブミンの働きは主に2つ、①浸透圧の調節(血液が血管外の液体より極端に濃いと、それを薄めようと血管が水分を取り込みすぎてしまったりと不都合が生じるため、血液の濃度を調節する)と、②物質の運搬(水分を多く含む血液中は、油のように疎水性の物質が流れるのは難しいため、アルブミンが結合して一緒に血流に乗って運搬される)です。

c 誤

aで述べたとおり、液体成分の血漿を除けば、血液の構成要素のほとんどが赤血球です。血液全体の10%というのは少なすぎで、およそ40%が赤血球だと覚えておきましょう。つまり血液のおよそ60%が液体成分(血漿)です。

d 誤

白血球は免疫反応に関わる血液成分の総称です。主に好中球やリンパ球、単球の3種に分かれており、マクロファージになるのは単球です。リンパ球はT細胞やB細胞といった、個々の細菌やウイルスに特化した免疫に関わっています。

 

 

 

問66
目に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 眼瞼(まぶた)は、物理的・化学的刺激から目を防護するために、皮下組織が多く厚くできていて、内出血や裂傷を生じにくい。
b 角膜と水晶体の間は、組織液(房水)で満たされ、眼圧を生じさせている。
c 雪眼炎は、赤外線に眼球が長時間曝されることにより、角膜の上皮が損傷を起こした状態である。
d 視細胞が光を感じる反応にはビタミンDが不可欠であるため、ビタミンDが不足すると夜間の視力が低下する夜盲症を生じる。

 

a 誤

目が腫れたり内出血を起こすのは日常的に聞く話です。眼瞼はたしかに外界の刺激から目を守る役割がありますが、皮下組織は厚くありません。皮膚で刺激を防ぎながらも、薄くあることによってまばたきを行いやすくしています。

b 正

眼圧というと、球形の眼全体の話をしているようにも思えますが、正確には角膜という眼の1番外側をおおう膜と、眼のレンズである水晶体の間にたまっている房水と呼ばれる液体が、多いときは眼圧が高く、少ないときは低い、というように調節されています。

なお、房水とはこの角膜と水晶体の間にある液体を特定する表現であり、組織液は房水を含み、身体のあらゆるところに存在する液体成分です。

c 誤

雪眼炎は、雪のある場所で長時間遊んだときによくなる病気です。雪で反射した紫外線が直接角膜に当たり続けるのが原因で、赤外線は関係ありません。

d 誤

光を感じるのに必要なのはビタミンDではなくビタミンAです。何かを見るときに働く視細胞には、明るいところでしか働けないが色を識別できるものと、暗いところで働けるが色は識別できないものの2種があります。暗い場所で働く方の細胞は、普段(明るいところ)は不活性化されており、暗いところにいくとビタミンAの作用で活性化されます。よってビタミンAがないと、明るいところでは問題ないものの、暗いところで視力が低下します。つまり、夜になって暗くなると視力が低下するため、夜盲症と呼ばれます。

 

 

 

問67
鼻及び耳に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 鼻中隔の前部は、毛細血管が豊富に分布していることに加えて粘膜が薄いため、傷つきやすく鼻出血を起こしやすい。
b 鼻腔粘膜に炎症が起きて腫れた状態を鼻炎といい、鼻閉(鼻づまり)や鼻汁過多などの症状が生じる。
c 中耳は、外耳と内耳をつなぐ部分であり、鼓膜、鼓室、耳小骨、耳管からなる。
d 内耳は、平衡器官である蝸牛と聴覚器官である前庭の2つの部分からなり、いずれも内部はリンパ液で満たされている。

 

a 正

鼻中隔は、右鼻と左鼻を仕切るためのもので、骨と軟骨で出来ています。鼻中隔の前部、つまり鼻に近い側は出血しやすいのが特徴です。小さい子が鼻をほじってすぐに鼻血を出しますよね。あれは鼻中隔の粘膜が薄いからです。

b 正

イメージ通りかと思います。鼻で炎症が起こればそれは鼻炎であり、鼻水が止まらなくなったり鼻づまりが生じるなどの症状を起こします。

c 正

耳は大きく外耳・中耳・内耳の3つに分かれます。外側から鼓膜に到達するまでが外耳、中耳は問題文の通りです。内耳はdで扱います。鼓膜と耳小骨は外界の音を増幅するのに使われ、耳管は気圧が変化した際に開くことで耳の詰まった感じを取り除くことができます。

d 誤

内耳は蝸牛と前庭に分かれますが、聴覚器官は蝸牛の方で、前庭が平衡器官です。平衡器官というと三半規管を思い浮かべる方もいるかもしれません。こちらも平衡器官であり、前庭は身体の傾き(その瞬間の状況)を感じ取るのに対し、三半規管は名前に三とある通り、三方向の軸で傾きを捉えられます。つまり三半規管は立体的に状況を捉え、回転を感じ取るのが得意です。

 

 

 

問68
皮膚に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 皮膚の主な機能は、身体の維持と保護,体水分の保持、熱交換及び外界情報の感知である。
b 皮膚は、表皮、真皮、皮下組織からなり、このうち皮下組織は、角質細胞と細胞間脂質で構成されている。
メラニン色素は、真皮の最下層にあるメラニン産生細胞で産生され、太陽光に含まれる紫外線から皮膚組織を防護する役割がある。
d 体温調節のための発汗は全身の皮膚に生じるが、精神的緊張による発汗は手のひらや足底、脇の下、顔面などの限られた皮膚に生じる。

 

a 正

皮膚は、シンプルに1枚の膜として体内に異物が入るのを物理的に防ぐ身体の維持や保護の機能に加え、対外環境と体内環境を隔てる膜として、体内外の水分の調節や熱の交換を行い、体外の情報を体内に伝えるための感知機能があります。

b 誤

皮膚が表皮、真皮、皮下組織からなるというのは正しい説明です。ただし、角質細胞と細胞間脂質から構成されるのは皮下組織ではなく表皮です。お風呂などで角質汚れを落とす、という表現を聞いたことはないでしょうか。角質は古くなったら皮膚表面からぽろぽろととれていくもので、皮下の組織ではなく、最も外側の表皮に所属します。

c 誤

メラニンは、髪を黒くする色素として知られています。これがメラニン産生細胞から産生されるのは、真皮の最下層ではなく表皮の最下層です。メラニンはシミの原因になります。

d 正

走り回ったときは全身で汗をかきますが、何か怖いことがあったときの冷や汗は髪の生え際や脇の下からかくのではないでしょうか。どちらも汗を出す分泌腺は同じですが、発汗の生じる機構によって、発汗の生じる部位も変化します。

 

 

 

問69
骨組織に関する記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せを一つ選べ。
 骨は生きた組織であり、( a )と骨形成が互いに密接な連絡を保ちながら進行し、これを繰り返すことで( b )が行われる。骨組織の構成成分のうち、( c )は、骨に硬さを与える役割をもつ。

 

a 骨吸収 b 骨の新陳代謝

骨は常に破壊されながら新たに作り直されていると聞いたことはありますか?これを言い換えたのが骨吸収と骨形成が絶えず行われている、ということであり、このことを骨の新陳代謝と呼びます。骨吸収は、骨が成分を吸収して成長するのではなく、骨組織が吸収されて破壊されていく過程なので気をつけましょう。

c 無機質

ここでの無機質はカルシウムやリンを指します。これらは骨の形成に必要な成分です。先にも書いた通り、骨は常に破棄されて作り直されているために、新たな骨の構成成分の供給が非常に重要になります。これらの無機質の成分が多いほど、骨はより正常に、つまり強く硬く成長します。

 

 

 

問70
脳や神経系の働きに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 中枢神経系は脳と脊髄から構成され、脳は脊髄と延髄でつながっている。
b 脳における血液の循環量は、心拍出量の約15%、ブドウ糖の消費量は全身の約25%、酸素の消費量は全身の約20%と多い。
末梢神経系は、脳や脊髄から体の各部に伸びており、体性神経系と自律神経系に分類されている。
d 自律神経系は、交感神経系と副交感神経系からなり、各臓器・器官でそれぞれの神経線維の末端から神経伝達物質と呼ばれる生体物質を放出している。

 

a 正

延髄は呼吸中枢がある領域で、人間が生きていくのに欠かせません。この部分がちょうど脳と脊髄の仲介地点として作用しています。延髄は脳の一部として考えられる場合と、そうでない場合があります。今回は、延髄によって脳と脊髄がつながっているという表現のため、延髄は脳としてはカウントせず、大脳と小脳を脳の構成要素として考えます。

b 正

ややこしいですが、この3つの数字はときどき出題されるので覚えておいた方が良いでしょう。脳は全身の様々な働きを司る部位なので、多くのエネルギーを消費します。

また、脳は脆弱なので、色々な物質が入り込まないように血液脳関門というゲートがあるのですが、ここを通れるものが限られているために、脳はエネルギー源としてブドウ糖しか利用できません。(他の組織では脂肪をもとにエネルギーを得たり様々な対策がとれます。)よって脳の独占率1番が高いのがブドウ糖になっています。

c 正

脳と脊髄から構成される中枢神経以外の全ての神経を総称して末梢神経と呼びます。このうち体性神経系は、感覚神経と運動神経からなっており、皮膚で触れた何かを感じ取ったり、五感で得られた情報に対して何か動きを起こすときに働きます。自律神経系は交感神経と副交感神経からなり、自分の意思でコントロールする体性神経系とは違い、全て無意識下で調節されています。

d 正

全身の神経は全てつながっているわけではありません。1つの神経の中では簡単に神経伝達できるのですが、神経同士での情報のやりとりには、神経伝達物質という物質を介することが必要になります。