過去問で受かる登録販売者

関西広域連合の過去問をもとに登録販売者試験の学習範囲を解説しています。

2023年度(令和5年度)登録販売者試験過去問 第3章(問31~40)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第3章の問31~40を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

目次

問31 問32 問33 問34 問35 問36 問37 問38 問39 問40

 

 

問31
呼吸器官に作用する薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物は、延髄の咳嗽中枢に作用する麻薬性鎮咳成分である。
b メチルエフェドリン塩酸塩は、交感神経系を抑制して気管支を拡張させる作用がある。
c キサンチン系成分は、心臓刺激作用も示すことから、副作用として動悸が現れることがある。
d クロルフェニラミンマレイン酸塩は、気道粘膜からの粘液の分泌を促進し、痰を出しやすくする。

 

a 誤

 デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物は鎮咳成分ですが、麻薬性ではなく非麻薬性です。鎮咳成分には、延髄に直接作用する麻薬性のものとそうでないものがあります。麻薬性のものは”コデイン”という単語が入っています。それ以外は非麻薬性として覚えましょう。

b 誤

メチルエフェドリン塩酸塩は気管支を拡張させる成分ですが、アドレナリン作動成分と言い、交感神経系を亢進させます。神経に作用する分依存性が強く、成分が乳汁中に移行することも知られています。

c 正

キサンチン成分は、ジプロフィリンという気管支拡張成分に代表され、キサンチン骨格と呼ばれる構造を持ちます。自律神経系を介さずに平滑筋に直接作用するのが特徴です。これらは、心臓刺激作用による動悸や、間接的に中枢神経系が刺激されることによる甲状腺機能障害や癲癇等、持病の悪化を引き起こす場合があります。

d 誤

クロルフェニラミンマレイン酸塩は抗ヒスタミンという、アレルギーに効く成分であり、主に気管支の症状に作用します。この成分は、気管粘膜の粘液分泌を抑制するために、痰は出にくくなります。

 

 

 

問32
咳止めや痰を出しやすくする目的で用いられる漢方処方製剤として、次の記述にあてはまる最も適切なものを一つ選べ。
 体力中程度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、しわがれ声、のどのつかえ感に適すとされる。
1 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
2 響声破笛丸(きょうせいはてきがん)
3 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
4 五虎湯(ごことう)
5 甘草湯(かんぞうとう)

 

マオウ、カンゾウ、ダイオウは副作用を生じやすいため、これらを含む成分を把握しておきます。

1 誤

麻杏甘石湯は、体力中等度またはそれ以上な人の咳や気管支炎、喘息など主に気管支の症状に作用します。マオウとカンゾウを含みます。

2 誤

響声破笛丸は体力にかかわらず利用でき、しわがれ声等に効きます。カンゾウを含みます。

3 正

4 誤

五虎湯は体力中等度以上の人の気管支喘息、気管支炎など気管支の症状に効きます。マオウやカンゾウを含みます。

5 誤

甘草湯は体力を問わず、咳、しわがれ声等に使用します。カンゾウのみを成分として含んでおり、過剰摂取はグリチルリチン酸の摂取量増加とそれによる偽アルドステロン症発症に繋がります。偽アルドステロン症は低カリウム状態を伴う高血圧を引き起こします。

 

 

 

問33
胃に作用する薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
スクラルファートは、マグネシウムを含む成分であるため、透析を受けている人では使用を避ける必要がある。
b ピレンゼピン塩酸塩は、血栓のある人、血栓を起こすおそれのある人では、生じた血栓が分解されにくくなることが考えられる。
c ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)は、消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すことを目的として配合されている場合がある。
d ウルソデオキシコール酸は、胆汁の分泌を促す作用(利胆作用)があるとされ、消化を助ける効果を期待して用いられる。

 

a 誤

スクラルファートは胃粘膜の保護や修復を行います。透析を受けている人は使用を避けなければいけませんが、その理由はマグネシウムでなく、アルミニウムが含まれているからです。同じようにアルミニウムが含まれている胃粘膜保護成分としてアルジオキサがあります。

b 誤

ピレンゼピン塩酸塩は、胃液の分泌を抑制します。副作用には排尿困難や動悸、目のかすみがあります。血栓に注意するのは、胃粘膜保護成分であるセトラキセート塩酸塩と、これが少し形を変えたトラネキサム酸という感冒薬に含まれる成分です。

c 正

ジメチルポリシロキサンは消泡成分として利用されます。お腹にたまった空気を出すことで整腸作用が期待されます。

d 正

ウルソデオキシコール酸は消化成分として働きます。腸での食物の消化には胆汁という成分がとても重要です。この胆汁の成分がコール酸やデオキシコール酸であり、その仲間であるウルソデオキシコール酸の摂取は胆汁分泌を増やし、消化を進めます。

 

 

 

問34
整腸薬又は止瀉薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 腸内殺菌成分の入った止瀉薬は、下痢の予防で服用したり、症状が治まったのに漫然と服用したりすると、腸内細菌のバランスを崩し、腸内環境を悪化させることがある。
b トリメブチンマレイン酸塩は、消化管の平滑筋に直接作用して、消化管の運動を調整する作用があるが、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある。
c ロペラミド塩酸塩が配合された止瀉薬は、効き目が強すぎて便秘が現れることがあり、まれに重篤な副作用としてイレウス様症状を生じることがある。
d ベルベリン塩化物は、海外において長期連用した場合に精神神経症状が現れたとの報告があるため、1週間以上継続して使用しないこととされている。

 

a 正

腸内には善玉菌と悪玉菌がいると聞いたことはあるでしょうか。善玉菌は乳酸菌など、腸の環境を整えたりする、身体に害のない細菌を指します。悪玉菌がいないからといって、善玉菌も排除してしまえば、結局腸内環境は悪化してしまいます。しかし、一般用医薬品の範疇で、悪玉菌だけを上手く識別して排除するのは難しいので、腸内殺菌成分の過剰摂取は、善玉菌への影響を考えて控える必要があります。

悪玉菌の方が多いときは、善玉菌とのバランスがずれているため服用を勧めますが、ある程度症状が治まった後は、バランスが整ってきたと考えられるため、服用を中止します。

b 正

問題文の通りです。文中の事項を覚えておけば問題ありません。

c 正

ロペラミド塩酸塩は食べ過ぎ飲み過ぎによる下痢に効きます。効き過ぎることがあるため3日ほどで治らなければ使用は控えます。下痢に効きすぎるため、便が硬くなりすぎて腸閉塞(イレウス)を起こすこともあります。その他の重篤な副作用にはショックや皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症があります。

皮膚粘膜眼症候群(別名スティーヴンスジョンソン症候群)と中毒性表皮壊死症はどちらも、顔から始まり全身に赤発疹やただれが生じます。前者は全身の10%未満、後者は30%以上に症状が出た状態を指し、10%未満以上30%未満では2つがオーバーラップしていると言います。

d 誤

海外において長期連用した場合に精神神経症状が現れたのは、細菌性の胃腸障害に対し腸の運動を鎮める成分である収斂成分を含む次没食子ビスマスです。

ベルベリン塩化物はそのような制約をもたない腸内殺菌成分です。aで述べた理由の通り、漫然とした長期服用は避けます。

 

 

 

問35
瀉下薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 酸化マグネシウムは、腸内容物の浸透圧をさげることにより、糞便中の水分量を増やす作用がある。
b センノシドが配合された瀉下薬については、妊婦又は妊娠していると思われる女性では、使用を避けるべきである。
c ビサコジルを含む腸溶性製剤は、胃内でビサコジルが溶け出すおそれがあるため、服用後1時間以内は牛乳の摂取を避けることとされている。
d ジオクチルソジウムスルホサクシネートは、糞便中の水分量を増して柔らかくすることによる瀉下作用を期待して用いられる。

 

a 誤

酸化マグネシウムは腸内容物の浸透圧を上げます。糞便の水分量を増やすには腸内に多くの水分を取り込まないといけません。腸内容物の浸透圧をあげることでこれを実現します。酸化マグネシウムが腸内にあることで腸内容物の濃度が高くなり、それに対して塩に水分を取られるキュウリの要領で水分が湧き出てきます。

b 正

センノシドはセンナという生薬に由来する大腸刺激性瀉下成分です。小腸・大腸刺激性瀉下成分は、腸を急激に運動させるために、早産や流産を誘発しやすく、妊婦の服用は避ける必要があります。

c 正

ビザコジルを含む腸溶性製剤は、名前の通り腸で溶けることで役割を発揮するため、胃で溶けてしまわないよう錠剤がコーティングされています。胃の中では胃酸の影響で溶けにくく、そこから抜けて腸に到達するとコーティングが解ける仕組みのため、牛乳のような制酸作用があるものを摂取すると、本来より早くコーティングが溶けてしまい、上手く効果が得られません。

d 正

ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)は問題文に示された内容のみ覚えておきましょう。

 

 

 

問36
次の記述にあてはまる漢方処方製剤として、最も適切なものを一つ選べ。
 体力中程度以下で、ときに便が硬く塊状なものの便秘、便秘に伴う頭重、のぼせ、湿疹・皮膚炎、ふきでもの、食欲不振、腹部膨満、腸内異常醗酵、痔などの症状の緩和に適すとされる。
六君子湯(りっくんしとう)
2 大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)
3 人参湯(にんじんとう)
4 麻子仁丸(ましにんがん)
5 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

 

1 誤

体力中等度以下の人の胃腸虚弱、消化不良などの胃の不調に作用します。カンゾウを含みます。

2 誤

大黄牡丹皮湯は体力中等度以上の人の月経不順や便秘に作用します。特徴的な月経への作用を覚えておきましょう。ダイオウを含みます。

3 誤

人参湯、別名理中丸は体力虚弱な人の胃腸虚弱や下痢嘔吐に作用します。カンゾウを含みます。

4 正

5 誤

桂枝加芍薬湯は体力中等度以上な人の、残便感のあるしぶり腹や下痢便秘に効きます。カンゾウを含みます。

 

 

 

問37
胃腸鎮痛鎮痙薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a チキジウム臭化物には、口渇、便秘、排尿困難等の副作用が現れることがある。
b ブチルスコポラミン臭化物は、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることが知られている。
c ロートエキスは、吸収された成分の一部が母乳中に移行して乳児の脈が速くなる(頻脈)おそれがある。
d パパベリン塩酸塩は、抗コリン成分と異なり、眼圧を上昇させる作用はない。

 

a 正

抗コリン成分であるチキジウム臭化物は、副交感神経を抑制することで口渇、便秘、排尿困難等の副作用を生じます。これは、副交感神経というリラックスの神経を抑制することで、逆の作用を持つ戦闘モードの交感神経系が優位に働いてしまうためです。戦闘モードの時に便は出ないし尿意も感じないことから、症状が予想できます。この作用の一環で、胃腸の鎮痛や鎮痙を担います。

b 正

ブチルスコプラミン臭化物は、aで述べたのと同じ抗コリン成分で作用も先ほどと同じです。それに加えて、重篤な副作用としてショックがあげられます。

なお、アナフィラキシーショックを単にショックと略すことがありますが、意味は特に変わりません。

c 正

ロートエキスは上記と同じ抗コリン作用を示す生薬です。先ほどと同じく戦闘モードなので、脈は比較的速くなっています。成分が乳汁中に移行する場合があり、移行した場合は乳児にも同じ作用を及ぼしてしまうため、授乳中の利用は控えます。

d 誤

パパベリン塩酸塩は上記3つと異なり、抗コリン作用なしで鎮痙作用を得られますが、これとは関係のない経路で眼圧の上昇を招いてしまいます。

 

 

 

問38
一般用医薬品の強心薬に配合される生薬成分のうち、鎮静作用を目的として配合されるものの組合せを一つ選べ。
a ロクジョウ
b シンジュ
c センソ
d ジンコウ

 

a 誤

ロクジョウは、強心・強壮作用を持ちます。心筋を刺激することで心臓をより収縮させることを強心作用と言います。

b 正

シンジュは鎮静作用を持ちます。強心成分と同時に摂取することで強心作用を助けます。

c 誤

センソは微量で強い強心作用を示します。一日5mg以上だと劇薬と指定されるくらいに強いです。皮膚や粘膜に触れると局所麻酔作用を示します。ヒキガエルの毒腺から分泌されたもので、毒のイメージを強めに持っておくと雰囲気をつかみやすいです。

d 正

ジンコウは、小児の疳に対してよく利用されます。鎮痛・健胃などの作用を持ちます。

 

 

 

問39
一般用医薬品の苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 体力中等度以下で、めまい、ふらつきがあり、ときにのぼせや動悸があるものの立ちくらみ、めまい、頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、神経症、神経過敏に適すとされる。
b 利尿作用により、水毒(漢方の考え方で、体の水分が停滞したり偏在して、その循環が悪いことを意味する。)の排出を促す。
c 強心作用が期待される生薬を含んでいる。
d 構成生薬としてカンゾウを含むため、高血圧、心臓病、腎臓病の診断を受けた人では、偽アルドステロン症を生じやすい。

 

a 正 b 正 d 正

苓桂朮甘湯についてはこの3つの選択肢に書かれた内容を覚えておけば問題ありません。

c 誤

bで述べられているとおり、この漢方は主に水毒の排出を目的としており、強心作用は期待できません。

 

 

 

問40
次の成分の一般用医薬品の高コレステロール改善薬を購入しようとする者への登録販売者の説明について、適切なものの組合せを一つ選べ。
 6カプセル中:<成分ー分量>
 パンテチンー375 mg
 大豆油不けん化物ー600 mg
 トコフェロール酢酸エステルー100 mg
a 腸管におけるコレステロールの吸収を抑える働きがある成分が含まれています。
b 末梢血管における血行を促進する成分が含まれています。
c 尿が黄色くなる成分が含まれていますが心配ありません。
d 1年くらい服用を続けても症状・コレステロール値に改善が見られない時には、服用を中止し、医療機関を受診してください。

 

 各成分の作用は以下の通り

 *リポタンパク質リパーゼの活性を高めてHDLの生産を促すと記述されている参考書等もあります。これは、HDLがいきなりそのものとして体内で作られるのではなく、肝臓で作ったLDLの中身が、リポタンパク質リパーゼという酵素によって分解されることでHDLに変化するという仕組みに依っています。

 *過酸化脂質には血栓を生じやすくさせるなどの害があります。

a 正

大豆油不けん化物の性質です。

b 正

トコフェロール酢酸エステルの性質です。血行の促進は末梢の血管でも起こります。

c 誤

同じ高コレステロール改善の作用を持ち、尿が黄色くなるのはリボフラビン(通称ビタミンB₂)です。尿が黄色くなるのは薬品の性質にすぎないので、使用中止の検討は不要です。

d 誤

市販薬で1年は様子の見過ぎです。即効性がないとはいえ、1~3ヶ月で症状の改善が見られなかった場合は医療機関の受診を勧めます。高コレステロールには、食生活が原因のものだけでなく、家族性のものや、他の持病から派生した病態である可能性もあることに注意が必要です。