2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第3章の問41~50を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)
いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。
目次
問41 問42 問43 問44 問45 問46 問47 問48 問49 問50
問41
貧血用薬(鉄製剤)及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンB12の構成成分である銅が配合されている場合がある。
b 消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つことを目的として、ビタミンCが配合されていることがある。
c 服用後、便が黒くなる場合には、重大な副作用の可能性があるため直ちに服用を中止する。
d 貧血の症状がみられる以前から予防的に使用することが適当である。
a 誤
正常な赤血球の形成にはビタミンB₁₂と葉酸が必要不可欠です。ビタミンB₁₂の構成成分は銅ではなくコバルトで、コバルトは骨髄での造血機能を高める役割があります。
b 正
鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄があります。動物の体内に存在するのがヘム鉄、食物として摂取したりする植物等に含まれる鉄分は非ヘム鉄です。もちろん、自分の体内での姿であるヘム鉄の方が吸収しやすいです。アスコルビン酸(通称ビタミンC)は、摂取した鉄分をヘム鉄に保つことで鉄の吸収を助けます。
c 誤
さびた鉄が黒くなるのは何となく想像できるでしょうか。もちろん褐色のサビが一般的なイメージではありますが、鉄製剤服用後の便を黒くしているのは、酸化された鉄です。体内で吸収されなかった分が便で排出されているだけなので特に問題はありません。鉄製剤服用後の症状であることだけ確認しておきます。
d 誤
鉄分の過剰摂取は、嘔吐下痢等の副作用から始まり、致死性の重篤な副作用までもたらす可能性があります。貧血が起こっていない状態での鉄製剤の摂取は控えます。
問42
次の成分を含む一般用医薬品の外用痔疾用薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
坐剤1個(1.75g)中:<成分ー分量>
リドカインー60 mg
グリチルレチン酸ー30 mg
アラントインー20 mg
トコフェロール酢酸エステルー50 mg
a リドカインは、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることがある。
b グリチルレチン酸は、比較的緩和な抗炎症作用を示す成分である。
c アラントインは、痛みや痒みを和らげることを目的として配合される局所麻酔成分である。
d トコフェロール酢酸エステルは、出血を抑えることを目的として配合される止血成分である。
各成分の作用は以下の通り
*ステロイド性の抗炎症剤はよく効果が強い分、正常組織にも強いダメージを与えるので、使用はなるべく控えます。
- アラントインー組織修復作用。肛門の傷を治す。
- トコフェロール酢酸エステルー通称ビタミンE。血行を改善する。
a 正
上記リドカインの説明通り、ショックを起こす可能性があります。
b 正
上記グリチルレチン酸の説明通り、この成分は抗炎症成分のうち、非ステロイド性のため、正常組織への害が少ない分、抗炎症作用も比較的緩和です。
c 誤
上記の通り、選択肢に記された効果を持つのはリドカインです。アラントインは傷を治すための成分です。
d 誤
上記の通り、トコフェロール酢酸エステルは血行改善の効果を持ちます。
止血成分には、①アドレナリン作動成分といって、身体が戦闘モードになる交感神経を活性化させるアドレナリンに作用し、血管を収縮させることで出血を止めるもの(メチルエフェドリン塩酸塩など)と、②傷部分に膜を作って止血するもの(タンニン酸など)があります。
問43
婦人薬として用いられる漢方処方製剤のうち、カンゾウを含むものの組合せを一つ選べ。
a 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
b 加味逍遙散(かみしょうようさん)
c 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
d 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
カンゾウ・マオウ・ダイオウは副作用を生じやすいため、これらを含む漢方の使用には特に注意が必要です。
a 誤
当帰芍薬散は、体力虚弱な人の女性ホルモンに関わる症状から、冷え性、頭痛などあらゆる症状に効きます。
b 正
加味逍遙散は、体力中等度以下の人の、虚弱体質や、女性ホルモン関連の症状に効きます。カンゾウを含みます。
c 誤
桂枝茯苓丸は、比較的体力がある人の、女性ホルモン関連の症状、頭痛・にきび・しもやけ等に効きます。重篤な副作用として肝機能障害がありますが、カンゾウは含んでいません。
d 正
桃核承気湯は、体力中等度以上の人の、女性ホルモン関連の症状、腰痛・便秘・高血圧などに効きます。カンゾウとダイオウを含みます。
問44
次の記述にあてはまる漢方処方製剤として、最も適切なものを一つ選べ。
比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの、月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきびに適すとされる。
1 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
2 温清飲(うんせいいん)
3 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
4 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
5 四物湯(しもつとう)
1 正
2 誤
温清飲は、体力中等度な人の虚弱体質や女性ホルモン関連の症状に効きます。重篤な副作用として肝機能障害があげられます。
3 誤
前問dと同じ。
4 誤
前問aと同じ。
5 誤
四物湯は体力虚弱な人の、女性ホルモン関連の症状や、出産流産後の疲労回復に効きます。
問45
鼻炎用内服薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a メチルエフェドリン塩酸塩は、依存性がある抗コリン成分であり、長期間にわたって連用された場合、薬物依存につながるおそれがある。
b ロラタジンは、肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げることにより、ヒスタミンの働きを抑える作用を示す。
c トラネキサム酸は、皮膚や鼻粘膜の炎症を和らげることを目的として用いられる。
d クレマスチンフマル酸塩が配合された内服薬を服用した後は、乗物又は機械類の運転操作を避けることとされている。
a 誤
抗コリン成分は依存性を持ちますが、メチルエフェドリン塩酸塩はアドレナリン作動成分であり、抗コリン成分ではありません。アドレナリン作動成分は、問42(d)で血管収縮による止血成分として出てきました。今回も同様に血管の収縮により、鼻の粘膜のかゆみや腫れを抑えます。
b 正
ヒスタミンは、主にアレルギー反応を生じさせる物質と考えます。このヒスタミンは、受容体と結合することで初めて働きます。よってこの受容体との結合を妨げることで、アレルギー反応を抑えることが出来ます。この作用をもたらす成分を抗ヒスタミン成分といいます。
c 正
トラネキサム酸は抗炎症成分です。鼻の粘膜にかかわらず、全身の様々な部位に対して抗炎症作用を持ちます。
d 正
クレマスチンフマル酸塩は、aのメチルエフェドリン塩酸塩と同じヒスタミン成分です。ヒスタミンは、主にアレルギーを起こす原因物質として出てきますが、睡眠覚醒をコントロールする作用を持っているため、ヒスタミンの作用を止めることで睡眠覚醒にも影響してしまい、眠気を催します。
問46
鼻炎用点鼻薬の配合成分に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a ナファゾリン塩酸塩は、鼻粘膜を通っている血管を拡張させることにより、鼻粘膜の充血や腫れを和らげる。
b ケトチフェンフマル酸塩は、ヒスタミンの働きを抑えることにより、くしゃみや鼻汁等の症状を緩和する。
c クロモグリク酸ナトリウムは、アレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎に対しても有効である。
d リドカイン塩酸塩は、鼻粘膜の過敏性や痛みや痒みを抑えることを目的として配合される場合がある。
a 誤
ナファゾリン塩酸塩も問42(d)で扱ったアドレナリン作動成分なので、血管を拡張するのではなく、収縮させることで充血や腫れを和らげます。
b 正
ケトチフェンフマル酸塩は抗ヒスタミン成分なので、アレルギー症状を抑える方向に成分が働くと考えます。よってこの選択肢は正解です。抗ヒスタミン成分の作用機構については→問45(b)
c 誤
クロモグリク酸ナトリウムは抗アレルギー成分なので、非アレルギー性の症状には効果がありません。なお、先ほどの抗ヒスタミン成分は、ヒスタミンの受容体との結合を阻害していましたが、抗アレルギー成分は、そもそものヒスタミンの放出を抑えることでアレルギー症状を改善します。
d 正
リドカインは問42で扱った局所麻酔成分です。ここでは鼻粘膜への局所麻酔作用によって痒みや腫れを抑えます。
問47
眼科用薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 人工涙液は、涙液成分を補うことを目的とするもので、目の疲れや乾き、コンタクトレンズ装着時の不快感等に用いられる。
b プラノプロフェンは、炎症の原因となる物質の生成を抑える作用を示し、目の炎症を改善する効果を期待して用いられる。
c ホウ酸は、角膜の乾燥を防ぐことを目的として用いられる。
d サルファ剤は、細菌及び真菌の感染に対する効果が期待できるが、ウイルスの感染に対する効果はない。
a 正
人工涙液が目の潤いが足りないときに用いられるのは何となく予想がつくかもしれません。目が乾燥しているときは、涙が足りていない時を指すので、人工涙液でその分の水分を補充します。
b 正
プラノプロフェンは、非ステロイド性の緩和な抗炎症作用を示します。炎症の原因物質の生成を抑えることで炎症を抑えます。
問42では同じ非ステロイド性抗炎症成分としてグリチルレチン酸が登場しました。
c 誤
角膜の乾燥を防ぐのはコンドロイチンです。
ホウ酸は洗眼液の成分で、眼の洗浄や消毒に使われる他、目薬に防腐剤として含まれている場合もあります。
d 誤
サルファ剤は眼科用の薬以外でも使用されるため覚えておきましょう。全ての細菌に効くわけでなければ、真菌にもウイルスにも効きません。簡単に言うと特定の細菌のみに効きます。化膿の改善に向いていて、スルファメトキサゾールのように”スルファ~”といった名の成分が多いです。
問48
30歳女性が、目の充血があるため、次の成分の一般用医薬品の一般点眼薬を購入する目的で店舗を訪れた。
100mL中:<成分ー分量>
テトラヒドロゾリン塩酸塩ー0.05 g
グリチルリチン酸二カリウムー0.25 g
クロルフェニラミンマレイン酸塩ー0.03 g
パンテノールー0.1 g
アスパラギン酸カリウムー1.0 g
(添加物として、ベンザルコニウム塩化物、pH調整剤等を含む。)
この点眼薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a この医薬品には、結膜を通っている血管を収縮させて目の充血を除去することを目的としてテトラヒドロゾリン塩酸塩が配合されている。
b この医薬品に配合されるアスパラギン酸カリウムは、新陳代謝を促し、目の疲れを改善する効果を期待して配合されているアミノ酸成分である。
c この医薬品を点眼する際には、容器の先端が眼瞼(まぶた)や睫毛(まつげ)に触れないようにする。
d この医薬品は、ソフトコンタクトレンズを装着したまま点眼することができる。
各成分の作用は以下の通り
- テトラヒドロゾリン塩酸塩ーアドレナリン作動成分として血管を収縮させて充血を除去する。アドレナリン作動成分については問42(d)参照。
- グリチルリチン酸二カリウムー比較的緩和な抗炎症作用
- クロルフェニラミンマレイン酸塩ー抗ヒスタミン成分として眼の痒みを和らげる。抗ヒスタミン成分の役割は問45(b)参照。
- パンテノールービタミンB₅の前駆物質。自律神経を整えて眼の調節機能を回復させる。
- アスパラギン酸カリウムー代謝を促すことによる疲労回復
a 正 b 正
上記の通り正解です。
c 正
眼瞼や睫毛には雑菌がついているため、点眼時に容器についてしまうと、容器や容器内の薬品で雑菌が繁殖してしまいます。多くの目薬は使い切りでないことから、より注意が必要です。
d 誤
ソフト・ハードに関わらず、コンタクト装着時の点眼は避けた方が良いとされています。薬品と、コンタクトにもともとついている物質とが反応して眼を傷つけるおそれがあるからです。一部のコンタクトレンズには、装着中の点眼が可能と記載されているため、そう書かれていないものは一律コンタクト装着時の点眼は避けた方が良いでしょう。
問49
きず口等の殺菌消毒成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a ベンザルコニウム塩化物は、石けんとの混合により殺菌消毒効果が高まる。
b ヨードチンキは、ヨウ素をポリビニルピロリドン(PVP)に結合させて水溶性とし、ヨウ素が遊離して殺菌作用を示すように工夫されている。
c クロルヘキシジン塩酸塩は、結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスに対して殺菌消毒作用を示す。
d 消毒用エタノールは、皮膚への刺激性が弱いため、脱脂綿やガーゼに浸して患部に貼付することができる。
a 誤
ベンザルコニウム塩化物は、石けんとの混合で殺菌消毒効果が弱まってしまいます。石鹸は多くが陰イオン性(マイナスの電気を持っている)で、これを利用して殺菌消毒していますが、ベンザルコニウム塩化物は陽イオン性(プラスの電気を持つ)の殺菌消毒作用をもっています。2つを混ぜることで電気がプラマイ0になり、お互いの作用を打ち消してしまいます。
b 誤
ヨウ素はうがい薬の主成分であり、消毒作用を持ちます。しかし、水には溶けにくく、エタノールに溶かしたヨードチンキと呼ばれる形で使用できます。ただしヨードチンキはかなり刺激性が強いので、うがい薬としては使用しません。
なお、選択肢の説明はポピドンヨードについてであり、こちらがうがい薬の成分です。先ほどのヨードチンキと作用はさほど変わりませんが、刺激が弱いため口腔内に利用できます。
c 誤
クロルヘキシジン塩酸塩は、一般細菌や真菌に効果がありますが、結核菌やウイルスには作用しません。
なお、一般細菌とは名の通り一般的な、大部分の細菌を指しています。結核菌は細菌の一種ですが、抗酸菌といって、細菌観察の際に酸性の溶液で上手く脱色できない特殊な細菌に含まれます。
d 誤
エタノールで消毒した後にその部分がスースーした経験はないでしょうか。間違って傷口にアルコールを噴射してしまって猛烈に痛くなる経験をしたことがある方も少なくないはずです。エタノールは皮膚刺激性が強いので、貼付して皮膚に触れ続けることがないようにします。
問50
外皮用薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一
つ選べ。
a 分子内にステロイド骨格を持たない非ステロイド性抗炎症成分として、デキサメタゾンがある。
b ケトプロフェンを主薬とする外皮用薬では、紫外線により、使用中又は使用後しばらくしてから重篤な光線過敏症が現れることがある。
c フェルビナクを主薬とする外皮用薬は、皮膚感染症に対して効果がなく、痛みや腫れを鎮めることでかえって皮膚感染が自覚されにくくなるおそれがある。
d インドメタシンを主薬とする外皮用薬は、妊婦又は妊娠していると思われる女性にも使用を推奨できる。
a 誤
デキサメタゾンは抗炎症成分ですが、分子内にステロイド骨格を持つステロイド性です。効き目が強い分正常組織へのダメージも大きいため、過剰使用や長期使用は避けます。
b 正
ケトプロフェンは、筋肉痛や打撲の鎮痛作用があり、重篤な副作用としてアナフィラキシーや光線過敏症、接触皮膚炎があります。
光線過敏症は、紫外線の刺激によって皮膚がかぶれたりする病気で、この症状を防ぐため、ケトプロフェン摂取後は屋外での長時間の活動は控えます。接触皮膚炎は、何かに触れたときに発疹や水ぶくれができる疾患です。
c 正
フェルビナクは、先ほどのケトプロフェンと同じく筋肉痛や打撲への鎮痛作用を持つ物質であり、皮膚感染症に対する効果はありません。根本である感染を治療しないまま、その症状である痛みだけを抑え続けてしまうと、その間に病状が悪化することも考えられます。むやみな長期使用は控えます。
d 誤
上記2つのケトプロフェン、フェルビナクと同じく鎮痛成分を持つインドメタシンですが、これら3成分は全て妊婦が飲むと胎児に移行する危険があるため、妊娠時の服用は控えなければいけません。