過去問で受かる登録販売者

関西広域連合の過去問をもとに登録販売者試験の学習範囲を解説しています。

2023年度(令和5年度)登録販売者試験過去問 第3章(問21~30)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第3章の問21~30を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

 

目次

問21 問22 問23 問24 問25 問26 問27 問28 問29 問30

 

 

問21
かぜ及びかぜ薬(総合感冒薬)に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a かぜは様々な症状が組み合わさって現れるため、様々な症状を緩和させるために多くの成分を含有する総合感冒薬を選択することが推奨される。
b かぜ薬は症状の緩和に加えて、原因となるウイルスの増殖抑制効果も期待できる。
c 冷気や乾燥、アレルギーのような非感染性の要因は、かぜの原因とはならない。
d かぜはウイルス(ライノウイルス、コロナウイルスなど)の感染が原因であり、細菌の感染は原因とはならない。

 

a 誤

一言に風邪といっても様々な症状を指すので、総合感冒薬(風邪薬)はあらゆる成分を含んでいます。しかし、不必要な成分を身体に取り込むのは良くないので、頭痛や発熱のように症状が明確な場合は、その症状に特化した医薬品を使用します。

b 誤

風邪薬にはウイルスを除去する力は存在しません。ウイルスは生物と非生物の間と位置づけられる特殊な存在であり、細菌に効く抗生物質も使えません(なお抗生物質一般用医薬品ではありません)。風邪薬はあくまで対症療法と言い、ウイルス等(細菌含む)による症状をひとまず抑えることを目的としています。

なお、風邪の8割はウイルスで起こるとされますが、細菌や冷気など他の要因も存在します。

c 誤

ウイルスや細菌が繁殖していなくても、寒くて鼻風邪を引いた、喉が痛いから風邪を引いたのだろう、などと言うことがあるはずです。乾燥や冷気による身体の不調も風邪の場合があります。

d 誤

先にも述べたとおり、風邪の8割ほどはウイルスが原因ですが、その他にも細菌が原因のものなどがあります。

 

 

 

問22
かぜ薬(総合感冒薬)の配合成分とその配合目的との関係について、正しいものの組合せを一つ選べ。
<配合成分ー配合目的>
a サリチルアミドー咳を抑える。
b グアイフェネシンー痰の切れを良くする。
c チペピジンヒベンズ酸塩ー発熱を鎮める。
ベラドンナアルカロイドーくしゃみや鼻汁を抑える。

 

a 誤

サリチルアミドは、風邪薬の中の解熱鎮痛成分に含まれます。15歳未満の小児でインフルエンザに罹患しているときは、ライ症候群と呼ばれる脳症を引き起こす恐れがあるため使用できません。

b 正

グアイフェネシンは風邪薬に去痰成分として含まれます。

c 誤

ペピジンヒベンズ酸塩は、風邪薬に鎮咳成分として含まれます。

d 正

ベラドンナアルカロイドは、風邪薬の中の抗コリン成分というくしゃみや鼻水を抑える成分です。これらの症状が起こっているとき、自律神経系の一環である副交感神経が優位に働いているのですが、この副交感神経の働きに必要なコリンを抑えることで症状を和らげます。

 

 

 

問23
かぜの症状緩和に用いられる漢方処方製剤のうち、マオウを含むものの組合せを一つ選べ。
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
b 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
c 小青竜湯(しょうせいりゅとう)
d 葛根湯(かっこんとう)

 

漢方は多くの成分からなりますが、中でもマオウとカンゾウは、重篤な副作用を起こしやすいために、注意が必要です。これらが含まれている漢方を把握しておきます。

a 誤 

柴胡桂枝湯は、風邪に効く漢方で、体力中程度またはやや虚弱な人向けです。重篤な副作用に間質性肺炎や肝機能障害、副作用として膀胱炎等があります。カンゾウを含みます。

b 誤

麦門冬湯は体力中等度以下の人向けで、痰や気管支の症状に効きます。重篤な副作用には間質性肺炎や肝機能障害があり、カンゾウを含みます。

c 正

青竜湯は、体力中等度またはやや虚弱な人の痰や気管支、鼻の症状に効きます。重篤な副作用には、間質性肺炎や肝機能障害、偽アルドステロン症があり、カンゾウとマオウを両方含みます。

なお、偽アルドステロン症とは、低カリウムや高血圧を招く病態です。アルドステロン症はアルドステロンというカリウムなどの濃度を調節するホルモンの値が上昇するのに対し、薬品等によって生じる偽アルドステロン症では、似た症状が現れるもののアルドステロンの値が上がりません。

d 正

葛根湯は、体力中等度以上の人の風邪に効きます。重篤な副作用には肝機能障害や偽アルドステロン症があり、カンゾウとマオウを両方含みます。

 

 

 

問24
解熱鎮痛薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
アセトアミノフェンは、15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も一般用医薬品として使用してはならない。
アスピリン喘息は、アスピリン特有の副作用であり、他の解熱鎮痛成分では起こらない。
c 解熱鎮痛薬の服用期間中は、飲酒は避けることとされている。
d 多くの解熱鎮痛薬には、体内におけるプロスタグランジンの産生を抑える成分が配合されている。

 

a 誤

アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬の1つです。同じ解熱鎮痛薬の成分のうち、アスピリン、サザピリン、イブプロフェンの3つが、いかなる場合も15歳未満の小児に使用してはいけないとされています。

b 誤

一般的な喘息と似た症状が出る、風邪薬の服用により生じる病態はアスピリン喘息と呼ばれます。アスピリンが原因の場合もありますが、他の解熱鎮痛成分由来でもアスピリン喘息になり得ます。

c 正

風邪薬に限らずですが、アルコール摂取後はアルコールの成分を分解するために肝臓が通常以上に働きを増します。その状態で医薬品を摂取すると本来期待されている以上の代謝が行われてしまい、肝機能障害を初めとする副作用を生じやすくなります。

d 正

プロスタグランジンは脳が感じる痛みを増強させる役割があります。よってプロスタグランジンの生成抑制によって解熱鎮痛効果が期待できます。

 

 

 

問25
解熱鎮痛薬に配合される成分の配合目的に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a ケイヒは、骨格筋の緊張を鎮める目的で配合される。
b 水酸化アルミニウムゲルは、解熱鎮痛成分(生薬成分を除く。)による胃腸障害の軽減を目的として配合される。
c メトカルバモールは、中枢神経系を刺激して頭をすっきりさせたり、疲労感・倦怠感を和らげることなどを目的として配合される。
d ビタミンB1は、発熱等によって消耗されやすいビタミンの補給を目的として配合される。

 

a 誤

ケイヒは生薬の成分で、発汗を促すことで解熱を助けます。

骨格筋の緊張を緩める成分にはメトカルバモールがあげられます。主に筋肉のこりを和らげる作用があります。

b 正

酸化アルミニウムゲルは制酸成分として扱われます。胃酸を中和する成分のことで、胃腸障害を軽減できますが、胃腸薬のように薬効を表示することはできません。

c 誤

aに示したとおり、メトカルバモールは骨格筋の緊張を緩める成分です。

「中枢神経系を刺激して頭をすっきりさせたり、疲労感・倦怠感を和らげる」のはカフェインの作用です。

d 正

ビタミンB₁はチアミン硝化物等を指します。作用は疲労回復と覚えてけば問題ありません。

 

 

 

問26
25歳女性が月経痛の症状があるため、次の成分の一般用医薬品の解熱鎮痛薬を購入する目的で店舗を訪れた。
 1錠中:<成分ー分量>
 イソプロピルアンチピリンー75 mg
 アセトアミノフェンー125 mg
 アリルイソプロピルアセチル尿素ー30 mg
 無水カフェインー25 mg
この解熱鎮痛薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
イソプロピルアンチピリンは、ピリン系解熱鎮痛成分によって薬疹等のアレルギーを起こしたことのある人は使用しない。
b 本剤には、血栓予防薬としても用いられる成分が含まれている。
アセトアミノフェンは、他の解熱鎮痛成分に比べて胃腸障害を起こしやすいため、本剤は空腹を避けて服用する。
アリルイソプロピルアセチル尿素は、脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする効果が期待できる。

 

各成分の作用は以下の通り。

イソプロピルアンチピリンー解熱鎮痛作用

アセトアミノフェンー解熱鎮痛作用

アリルイソプロピルアセチル尿素ー鎮痛作用

カフェインー頭をすっきりさせ、疲労感や倦怠感を和らげる

a 正

ピリン系とはピラゾロン骨格というある決まった構造が、化合物の中に含まれている医薬品を指します。イソプロピルアンチピリンは、名前から予想できるようにピリン系です。解熱鎮痛効果はかなり強いですが、抗炎症作用はあまり強くなく、他のピリン系医薬品でアレルギーを起こしたことがある場合は、似た構造で構成されるイソプロピルアンチピリンの服用にもリスクが生じるため使用は控えます。

なお、現在使用されているピリン系医薬品はイソプロピルアンチピリンのみで、アスピリンは商品名のため、ピリン系ではありません。

b 誤

上記成分一覧の通り、血栓予防の成分は含まれません。

同じく解熱鎮痛薬によく含まれるアスピリンという解熱鎮痛成分は、医療用医薬品としては血栓を予防するために使用することもありますが、一般用医薬品において同様の効果を期待することはありません。

c 誤

アセトアミノフェンは胃腸障害を起こしにくい解熱鎮痛作用の代表として覚えておきましょう。解熱鎮痛薬は、痛みを増幅するプロスタグランジンという物質に作用しますが、その過程で胃粘膜を調節する機構も鈍らせてしまうために、一般に胃腸障害を招きやすいです。そうでないものを覚えておきましょう。

d 正

アリルイソプロピルアセチル尿素は鎮痛作用を持つので正解です。なお、鎮痛成分には依存性があることも同時に覚えておきましょう。

 

 

 

問27
神経質、精神不安、不眠等の症状の改善を目的とした漢方処方製剤に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 加味帰脾湯(かみきひとう)は、体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う高血圧の随伴症状、神経症、更年期神経症、小児夜なき、便秘に適すとされる。
b 抑肝散(よくかんさん)は、体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症不眠症、小児夜なき、小児疳症、歯ぎしり、更年期障害血の道症に適すとされる。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)は、体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの不眠症神経症に適すとされる。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は、体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの貧血、不眠症、精神不安、神経症に適すとされる。

 

a 誤 d 誤

aで示されているのが柴胡加竜骨牡蛎湯、dが加味帰脾湯です。それぞれ逆の内容となっています。なお、柴胡加竜骨牡蛎湯重篤な副作用としては、肝機能障害や間質性肺炎があり、ダイオウ(副作用が生じやすい)を含みます。加味帰脾湯は重篤な副作用として偽アルドステロン症があり、カンゾウを含みます。

間質性肺炎は、肺全体が硬くなり、空咳を生じる病気です。

b 正 c 正

抑肝散・酸棗仁湯の説明は問題文の通りです。どちらもカンゾウを含みます。

 

 

 

問28
眠気防止薬の有効成分として配合されるカフェインに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 腎臓におけるナトリウムイオンの再吸収抑制作用があり、尿量の増加をもたらす。
b 胃液分泌抑制作用があるため、胃酸過多の人でも服用できる。
c 作用は弱いながら反復摂取により依存を形成するという性質がある。
d 乳汁中に移行しないことから、授乳中の女性でも摂取量を気にせず摂取できる。

 

a 正

カフェインを摂取するとトイレが近くなるのはご存知の方も多いかと思います。人間は腎臓で一度尿として濾しだした成分から、ナトリウムのような身体に有用な成分を再吸収という名の機構で血液内に取り戻します。この作用を抑制すると、尿が濃くなるで、きゅうりを塩に漬けると水分が出てくるのと同じ効果(浸透圧と言います)で、尿量が増えます。

b 誤

カフェインは胃酸の分泌を亢進(より激しく)します。よって胃腸障害を起こしやすく、胃酸過多の人には勧められません。

c 正

カフェイン依存という言葉を聞いたことはありませんでしょうか。毎日コーヒーを飲まないと、エナジードリンクを飲まないとやっていけない!といった状態をカフェイン依存と呼びます。もちろん違法薬物ほどの依存性はありませんが、一定の依存性を孕みます。

d 誤

カフェインは、妊娠中の母体から乳児に移行することが明確に知られている数少ない成分で、これにより胎児の発育不良につながる恐れがあります。乳汁中にも移行するため授乳中の女性も使用を控えます。

なお、母体から胎児に成分が移行する際、血液胎盤関門という場所を通ります。単純に胎盤を通って胎児に影響が及ぶというイメージで問題ありません。

 

 

 

問29
乗物酔い防止薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a ジプロフィリンは、不安や緊張などの心理的な要因を和らげることにより乗物酔いの発現を抑える。
b メクリジン塩酸塩は、胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激を和らげる。
c スコポラミン臭化水素酸塩水和物は、肝臓で速やかに代謝されるため、抗ヒスタミン成分と比べて作用の持続時間は短い。
d ジフェニドール塩酸塩は、内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流を改善する作用を示す。

乗り物酔いとは簡単に言うと目眩が生じている状態です。めまいは別名眩暈といい、乗り物酔いを防ぐ薬のことを鎮暈薬と言います。

a 誤

ジプロフィリンは、気管支を拡張する成分です。キサンチンという構造を含む通称キサンチン成分で、自律神経系を介さずに直接筋肉に作用して気管支を広げるのが特徴です。

b 誤

胃粘膜を麻痺させることで吐き気を抑えるのは、局所麻酔成分であるアミノ安息香酸エチルです。この成分は6歳未満は使用禁止です。メクリジンは抗ヒスタミン成分の一種として乗り物酔いを防ぎます。

基本的にヒスタミンは、自律神経に関わるアレルギーを起こす物質と認識しておけば問題ありません。このヒスタミンの効果を抑制することで、自律神経による嘔吐中枢の刺激等を抑えることができます。

c 正

スコポラミン臭化水素酸塩水和物については問題文に書かれている程度のことを覚えておけば良いです。抗コリン成分です。

d 正

ジフェニドール塩酸塩も問題文の通りです。作用は抗ヒスタミン成分に似ていて、自律神経反射に関わるような作用を持ちます。ただし、抗ヒスタミン成分ではなく抗めまい成分です。抗めまいと言えばジフェニドール塩酸塩ですので、必ず覚えておきましょう。

 

 

 

問30
小児の疳を適応症とする生薬製剤・漢方処方製剤(小児鎮静薬)に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a ゴオウ、ジャコウは、鎮静、健胃、強壮などの作用を期待して、小児の疳を適応症とする生薬製剤に用いられる。
b 身体的な問題がなく生じる夜泣き、ひきつけ、疳の虫等の症状については、症状が治まるまでは保護者側の安眠等を図ることを優先して小児鎮静薬を使用することは適すとされている。
c 小児の疳を適応症とする漢方処方製剤のうち、用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合は、生後1か月の乳児にも使用できる。
小建中湯(しょうけんちゅうとう)を乳幼児に使用する場合は、体格の個人差から体重当たりのグリチルリチン酸の摂取量が多くなることがあるので、特に留意する必要がある。

 

小児の疳とは、簡単に言えば癇癪を起こしているような状態です。

a 誤

問題文のような作用を示す生薬成分はジコウです。

ゴオウやジャコウは、緊張や興奮を静めることで血液の循環を促します。

b 誤

もちろん小児の夜泣きを全て親がひたすら我慢することを正当化してはいけませんが、子供の疳を親のために薬で抑えることも正当化されてはいけません。冷静に考えて、"泣きわめくなようるさいな!薬飲んで大人しくなっとけ!”とはならないのです。もし本当に子供の疳に疲れ果てている親がいた場合は、カウンセラーの紹介や、社会福祉サービスの利用につなげましょう。

c 誤

漢方は、必ず、全てのものにおいて、3ヶ月未満の乳児は使用禁止です。

d 正

問題文の通り、小建中湯の使用はグリチルリチン酸の摂取量を増加させます。グリチルリチン酸の過剰摂取は、偽アルドステロン症のリスクを急激に増大させるので、注意が必要です。