過去問で受かる登録販売者

関西広域連合の過去問をもとに登録販売者試験の学習範囲を解説しています。

2023(令和5年度)登録販売者試験過去問 第1章(問11~20)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第1章の問11~20を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

 

目次

問11 問12 問13 問14 問15 問16 問17 問18 問19 問20

 

 

問11
高齢者への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」において、おおよその目安として65歳以上を「高齢者」としている。
b 高齢者は、持病(基礎疾患)を抱えていることが多いが、一般用医薬品の使用によって基礎疾患の症状が悪化することはない。
c 高齢者は、生理機能の衰えの度合いに個人差が小さいため、年齢から副作用を生じるリスクがどの程度増大しているか判断することができる。
d 高齢者は、喉の筋肉が衰えて飲食物を飲み込む力が弱まっている場合があり、内服薬を使用する際に喉に詰まらせやすい。

 

a 正

問題文の通り、「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」において、65歳以上が高齢者と定められています。また、1歳未満が乳児、1歳以上7歳未満が幼児、7歳以上15歳未満が小児です。小児というと小学生までをイメージするかもしれませんが、正しくは15歳未満ですので、特に用法用量を間違わないよう注意が必要です。

b 誤

薬には禁忌とが存在することがあります。例えば、副作用として腎機能を低下させることが分かっている薬を、腎臓病の人に飲ますのは禁忌です。腎機能に関わらず、高齢者は心機能や肝機能など、身体のあらゆる部位に不調が生じていることが予想されるため、一般用医薬品を利用する際に、注意が必要です。

c 誤

高齢者の生理機能の衰えは個人差が大きいとされています。ぱっとイメージしても、毎日元気に水泳やランニングをされている高齢者の方と、ほぼ寝たきりの高齢者の方と、どちらも簡単に思い浮かぶのではないでしょうか。なお、高齢者の個人差が大きいのは事実ですが、高齢者に限らずどの世代の人間でも個人差はあります。

d 正

高齢者が餅を詰まらせるのはよく聞く話でしょう。多くの高齢者は嚥下能力(ものを飲み込む力)が弱っているため、特に大きめの錠剤を服用するとき、喉に詰まらせやすいです。

 

 

 

問12
妊婦又は妊娠していると思われる女性及び母乳を与える女性(授乳婦)への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られており、母乳を介して乳児が医薬品の成分を摂取することになる場合がある。
b 多くの一般用医薬品は、妊婦が使用した場合における胎児への安全性に関する評価は困難とされている。
c 便秘薬には、配合成分やその用量によっては、流産や早産を誘発するおそれがあるものがある。
d ビタミンAは、胎児にとって非常に重要な成分の一つであるため、妊婦に対して特に妊娠初期(妊娠3か月以内)のビタミンA含有製剤の過剰摂取には留意する必要はない。

 

a 正

問題文の通り、一部の医薬品は、その成分が乳汁に移行する場合があります。この際に乳児に及ぶ影響は、明確には分かっていないですが、乳児に必要のない薬の成分を摂取させるのは避けるべきです。授乳中でも問題のない成分で構成されているかの確認が必要です。

b 正

妊婦が医薬品を使用した場合における胎児への影響は、その評価のために人体実験を行うわけにもいかないので、不明瞭であることが多いです。よって、一般に医薬品の使用は「相談すること」とされています。この表示があるときは、使用前の医師への相談が勧められています。

c 正

問題文の通り、便秘薬は流産や早産の誘発リスクがあるので、妊婦は使用を控えるべきです。

d 誤

ビタミンAが一切ないのも問題ですが、ビタミンAの過剰摂取は胎児の先天性異常を招く恐れがあるとされています。よって、様々な注意が必要な妊娠中の薬剤の中でも、ビタミンA含有製剤は特に注意が必要です。

 

 

 

問13
プラセボ効果に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
プラセボ効果は、医薬品を使用したこと自体による楽観的な結果への期待(暗示効果)は関与しないと考えられている。
プラセボ効果によってもたらされる反応や変化は、望ましいもの(効果)であり、不都合なもの(副作用)はない。
プラセボ効果は、主観的な変化だけでなく、客観的に測定可能な変化として現れることがある。
d 医薬品の使用によってプラセボ効果と思われる反応や変化が現れたときには、それを目的として使用の継続が推奨される。

 

a 誤

プラセボ効果とは、薬を飲んだことで生じる、薬の成分に依らない作用のことです。具体的には、”薬を飲んだからもう大丈夫だという安心感で症状が治ってしまい、薬の成分は関係なかった”という”暗示効果”と、”純粋に時間が経ったから症状が治まった”という”自然寛解”の2つが原因として考えられています。

b 誤

本来副作用の生じない量の薬を、ただ渡されるのと、「これを飲んだら高確率で嘔吐と下痢が止まらなくなるけど頑張って飲もうね」と言って渡されるのとでは薬へのイメージがだいぶ変わるでしょう。わざわざ悪いことを他人から吹き込まれなくても、自分自身が何となく悪いイメージを抱いている薬を飲んだ後は、気分が悪くなってしまうこともあるかもしれません。暗示効果は良いようにも悪いようにも働きます。

c 正 d 誤

先ほどの例のように、勝手な副作用を吹き込んで、その際の反応を客観的に統計を取ることは事実上は可能です。そこで測定可能な結果が得られる場合もありますが、あくまで科学的な根拠には基づかないものであり、信用性に欠けます。医薬品開発の目的としては利用されません。

 

 

 

問14
医薬品の品質に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 医薬品の有効成分には、高温や多湿により品質劣化を起こすものはあるが、光(紫外線)による品質劣化を起こすものはない。
b 医薬品が保管・陳列される場所については、清潔性が保たれるとともに、その品質が十分保持される環境となるよう留意する必要がある。
c 品質が承認等された基準に適合しない医薬品、その全部又は一部が変質・変敗した物質から成っている医薬品は販売が禁止されている。
一般用医薬品は家庭の常備薬として購入されることも多いため、外箱等に表示されている使用期限から十分な余裕をもって販売することが重要である。

 

a 誤

「高温や多湿により品質劣化を起こすものがある」は正解です。そして光によっても薬品は劣化します。薬の多くはややこしい構造の化合物で出来ています。光に当て続けることでその成分が分解してしまうと品質劣化に繋がります。

b 正

身体に利用する薬品ですから、もちろん清潔性を維持するのは重要です。また、aで述べたとおり、薬品は高温や多湿、直射日光下で劣化しうるなど、保管に注意を要する物を多いです。保管環境は重要になります。

c 正

感覚的にも正しいでしょう。医薬品は本来体内に入れるべき物ではなく、少しの間違いと思われても身体に甚大な悪影響を及ぼしてしまうこともあります。変性・変質した医薬品は絶対に販売してはいけません。

d 正

スーパーで買うお惣菜と違い、医薬品は購入してからも長期間保存し続ける物です。100錠入りの薬品を1ヶ月で使い切ったりすることなどそうそうないでしょう。よって、使用期限ギリギリの薬品は、期限内に購入しても使用するのは期限後、といった自体が発生しかねないので、販売を控えるべきです。

 

 

 

問15
一般用医薬品で対処可能な症状等の範囲に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
一般用医薬品の役割として、健康の維持・増進があるが、健康状態の自己検査は含まれない。
b 科学的・合理的に効果が期待できるものであれば、生活習慣病の治療も一般用医薬品の役割として含まれる。
c 乳幼児や妊婦等では、通常の成人の場合に比べ、一般用医薬品で対処可能な範囲は限られる。
一般用医薬品にも使用すればドーピングに該当する成分を含んだものがあるため、スポーツ競技者から相談があった場合は、専門知識を有する薬剤師などへの確認が必要である。

 

a 誤

一般医薬品の分類の中には、一般用検査薬という物が含まれます。尿糖・尿たんぱく検査薬や、妊娠検査薬が例であり、これらの、日常のイメージでは医薬品と言うより検査用品である物品も、検査”薬”の名の通り、医薬品として扱います。

b 誤

生活習慣病に関わる一般用医薬品の役割としては、「生活習慣病の疾病に伴う症状発現の予防」とされています。一般用医薬品は、医療機関での治療を受けるほどではない症状に対して用いられる物であり、”治療”が必要なほどの状態にある場合は、一般用医薬品で対処できる科学的根拠が整っていても適切とは言えません。

c 正

乳幼児や妊婦の場合、服用者本人や胎児に対する医薬品の副作用が生じやすかったり、副作用の深刻化を起因するリスクが高まったりします。医薬品の使用者がこれらに含まれる場合、注意が必要です。

d 正

例えば、市販されている多くの総合感冒薬(風邪薬)にはドーピングを疑われる成分が含まれています。近年、悪気がないのに市販薬の服用によりドーピング違反となってしまうスポーツ選手がしばしば見受けられるので、安易に判断せずにその分野に詳しい専門家に確認を取ります。

 

 

 

問16
一般用医薬品の販売時のコミュニケーションに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
一般用医薬品では、情報提供を受けた当人のみが医薬品を使用するとして、販売時のコミュニケーションを考える。
一般用医薬品の購入者は、使用者の体質や症状等を考慮して製品を事前に調べて選択しているのでなく、宣伝広告や販売価格等に基づき漠然と製品を選択していることがあることにも留意しなければならない。
c 登録販売者は、生活者のセルフメディケーションに対して、第二類医薬品及び第三類医薬品の販売、情報提供等を担う観点から、支援する姿勢が基本となる。
d 登録販売者からの情報提供は、説明内容が購入者等にどう理解されたかなどの実情を把握しながら行う必要はなく、専門用語を分かりやすい平易な表現で説明するだけでよい。

 

a 誤

誰かが調子を悪くしたら、それを心配して家族が薬を買いに行くことはよくあるかと思います。購入者=使用者とは限りません。

b 正

同じ胃腸薬であれば一番安いものにしよう、という考え方をする人がいてもおかしくないでしょう。しかし、ある胃腸薬は腎機能が悪い人は飲んではいけないとされているかもしれません。また、喉が痛いなと思って、たまたまそのときにCMでやっていた薬を買いに行くということもあるでしょう。その選択が危険な要素を含んでいないか確認することが必要です。

c 正

医師の処方箋なしに購入できる薬である一般用医薬品は、大きく第1類医薬品(リスクが特に高い)、第2類医薬品(リスクが比較的高い)、第3類医薬品(リスクが比較的低い)に分けられます。登録販売者が扱えるのはこのうち第2類医薬品と第3類医薬品で、これだけで一般用医薬品の9割を占めます。購入者の支援をあらゆる面から行います。

d 誤

もちろん自分なりにわかりやすく伝えたからと言って、それが伝わっていなければ意味がありません。購入者が正しく理解できているかを随時確かめながら説明を行います。

 

 

 

問17
医薬品の販売等に従事する専門家が、一般用医薬品の購入者から確認しておきたい基本的なポイント(事項)としての正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者等のニーズ、購入の動機)。
b その医薬品を使用する人が医療機関で治療を受けていないか。
c その医薬品を使用する人がアレルギーや医薬品による副作用等の経験があるか。
d その医薬品がすぐに使用される状況にあるか(その医薬品によって対処しようとする症状等が現にあるか)。

 

a 正

もし夜眠れないほどの頭痛が1週間続いているのが購入の動機であれば、市販薬の購入は勧めずに病院での診察を勧めなければなりません。

b 正

もし医療機関で治療を受けていて薬を処方されていれば、その薬と相互作用を起こす成分の入った市販薬を服用してしまわないように確認する必要があります。また、医療機関で治療を受けている、持病を持った方の場合、そうでない方よりも薬の副作用が出やすいことも考えられるため注意が必要です。

c 正

医薬品による副作用発症の経験がある場合、同じ成分を含む医薬品に注意するのはもちろんのこと、その副作用やアレルギーが体質等から生じている場合、他の成分の医薬品に対しても副作用を起こしやすい可能性が考えられるため、販売前に確認しておきます。

d 正

医薬品には劣化しやすい物が一定数存在します。例えば多湿にとても弱い薬品を、使用予定はないが常備薬としておいておこうと梅雨の季節に購入しようとしている人がいたら、購入を禁止はせずとも、劣化を招きやすいとアドバイスすることにもつながります。

 

 

 

問18
厚生省(当時)は、悲惨な被害を再び発生させることのないように、その決意を銘記した「誓いの碑」を建立した。この「誓いの碑」の記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せを一つ選べ。
「誓いの碑」には、「命の尊さを心に刻みサリドマイド、スモン、( a )のような( b )による悲惨な被害を再び発生させることのないよう( c )の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する 千数百名もの感染者を出した『( d )』事件 このような事件の発生を反省しこの碑を建立した平成11年8月 厚生省」と刻まれている。

 

a HIV感染 b 医薬品 c 医薬品の安全性・有効性 d 薬害エイズ

もちろん碑の文章を覚える必要はありませんが、過去の薬害を把握しておくことは必要です。なお、薬害とは医薬品の副作用によって甚大な被害が及んだケースを指します。

サリドマイドは、催眠鎮静剤として利用されていたものの、妊婦が飲むとその成分が胎児に移行し、血管新生が阻害されたために四肢欠損等の障害が生じました。副作用情報収集のきっかけになっています。

スモンは整腸剤であるキノホルム製剤の服用で生じた亜急性脊髄視神経症という疾患の略称です。主に麻痺や失明などの神経症状を引き起こします。医薬品副作用救済制度設立のきっかけです。

HIV、通称エイズは、血友病という血の止まりにくい病気の治療に使われていた、ヒトの血液成分が由来の医薬品にHIVウイルスが含まれていたために多くのエイズ患者が発生た薬害エイズの原因ウイルスです。問題にある誓いの碑がたてられたきっかけです。

 

 

 

問19
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)及びCJD訴訟に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a CJD訴訟とは、脳外科手術等に用いられていたウシ原料由来の人工硬膜を介してCJDに罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
b CJDは、細菌の一種であるプリオンが原因とされている。
c 本訴訟では、輸入販売業者及び製造業者が被告として提訴されたが、国は提訴されなかった。
d 本訴訟を一因として、生物由来製品による感染等被害救済制度が創設された。

 

a 誤

ヒト乾燥硬膜という、ウシではなくヒトの硬膜に由来しています。

b 誤

プリオンとは細菌ではなくタンパク質の一種です。タンパク質が上手く本来の形になれなかったときにプリオンというタンパク質の塊になります。アルツハイマー病の原因はプリオンとされており、CDJにおいても認知症に似た症状が現れます。

c 誤

国、輸入販売業者及び製造業者全てが被告として提訴されました。のちに地裁で和解が成立しています。

d 正

問題文の通りです。この薬害事件を契機に、「生物由来製品による感染等被害救済制度」が作られました。

 

 

 

問20
C型肝炎及びC型肝炎訴訟に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
C型肝炎訴訟とは、ウイルスに汚染された注射器(注射針や注射筒)が連続使用されたことが原因で、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
b 国及び製薬企業を被告として、複数の地裁で提訴されたが、判決は、国及び製薬企業が責任を負うべき期間等について判断が分かれていた。
C型肝炎ウイルス感染者の早期・一律救済の要請にこたえるべく、2008年1月に議員立法による特別措置法が制定、施行された。
d 「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」を受け、医師、薬剤師、法律家、薬害被害者などの委員により構成される医薬品等行政評価・監視委員会が設置された。

 

a 誤

本文のように注射器の使い回しにより生じたのはB型肝炎です。C型肝炎は、血液から作られた医薬品である血液製剤C型肝炎ウイルスが含まれていたために広まってしまいました。

b 正 c 正

国や製薬企業を被告として裁判が行われ、その判決内容は地域ごとに相違がありました。国によるC肝特措法の成立に伴う被害者救済策の提示により和解が進んでいますが、まだ完全には解決していません(2024年2月現在)

d 正

医薬品等行政評価・監視委員会とは、C型肝炎のみに留まらず、様々な薬害に対して議論していく厚生労働省管轄下の組織です。医療関係者や法律家など、薬害に携わる多領域の専門家から構成されています。