過去問で受かる登録販売者

関西広域連合の過去問をもとに登録販売者試験の学習範囲を解説しています。

2023年度(令和5年度)登録販売者試験過去問 第2章(問61~70)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第2章の問61~70を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

目次

問61 問62 問63 問64 問65 問66 問67 問68 問69 問70

 

 

問61
消化管に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a 食道の上端と下端には括約筋があり、胃の内容物が逆流しないように防いでいる。
b 胃で分泌されるペプシノーゲンは、胃酸によりペプシンとなって、脂質を消化する。
c 小腸は全長6~7mの臓器で、十二指腸、回腸、盲腸の3部分に分かれる。
d 大腸内には腸内細菌が多く存在し、腸管内の食物繊維(難消化性多糖類)を発酵分解する。

 

a 正

少しの刺激で食道の食べ物が口に戻ってきては気持ち悪いですし、胃の内容物が食道に逆流するというのは、食道に胃酸が流入することを指すので、胸焼けを起こすなど、かなり都合が悪いです。これらを防ぐために食道の上下には括約筋という、入り口と出口の開き具合を調節するための筋肉があります。

b 誤

脂質を消化するのはリパーゼと言われる消化酵素です。ペプシノーゲンから作られたペプシンはタンパク質を消化します。胃で消化されるのはタンパク質であり、その消化酵素ペプシンだと覚えておきましょう。

c 誤

盲腸は大腸の一部です。小腸を構成するのは十二指腸と空腸、回腸の3つです。十二指腸は胃からの接続部に位置し、かなり短いです。その後空腸と回腸を順に通ったのちに消化管内の食べ物は大腸に達します。

d 正

例えば、酪酸菌と呼ばれる細菌は、食物繊維を分解することで酪酸と呼ばれる、エネルギー源を生み出します。消化酵素の効かない食物繊維は基本は便として排出されるだけですが、細菌による発酵分解を受けることでエネルギー生産に役立てることが可能になります。

 

 

 

問62
肝臓及び胆嚢に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 腸内に放出された胆汁酸塩の大部分は、大腸で再吸収されて肝臓に戻る。
b 胆汁に含まれるビリルビンは、赤血球中のグロブリンが分解された老廃物である。
c 小腸で吸収されたブドウ糖は、肝臓に運ばれてグリコーゲンとして蓄えられる。
d 胆管閉塞によりビリルビンが循環血液中に滞留すると、黄疸を生じる。

 

a 誤

胆汁酸塩は、肝臓で作られたのちに、胆嚢から十二指腸に放出される胆汁の成分で、脂質の消化を容易にします(消化そのものは行わないため消化酵素ではありません)。この胆汁酸塩は、使い捨てではなくほとんどが小腸で再吸収されて肝臓に戻ります。これを腸肝循環を呼びます。

b 誤

ビリルビンは、赤血球中の酸素を運搬する成分であるヘモグロビンの老廃物で、便の色のもとです。(ただしビリルビンそのものの色は茶色でなく黄色です。)グロブリンは多くが免疫グロブリンという、免疫に関わる物質を指しています。これは赤血球とは別に血液中を流れています。

c 正

小さい分子であるブドウ糖がたくさんあっても扱いに困るので、吸収されたブドウ糖は鎖のようにつながれたグリコーゲンとして肝臓にためられます。グリコーゲンの状態では直接エネルギー産生には使用できないので、必要なときに必要な分のみグリコーゲンを分解してグルコースを取り出します。

d 正

bでも書いたとおり、ビリルビンは黄色い色素です。ビリルビンは通常、胆汁の一部として十二指腸に出されて消化経路に合流しますが、胆管が閉塞していると、この排出経路が機能しないためにビリルビンが特定の場所にたまってしまい、その色(黄色)が皮膚の上からも見えるようになります。これが黄疸です。

 

 

 

問63
呼吸器系に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 気道は上気道、下気道に分けられ、気管は上気道に含まれる器官である。
喉頭の大部分と気管から気管支までの粘膜は、線毛上皮で覆われている。
c 横隔膜や肋間筋によって、肺が拡張・収縮して呼吸運動が行われている。
d 肺胞の壁を介して、二酸化炭素が血液中の赤血球に取り込まれる。

 

a 誤

気道には上気道と下気道があります。上気道は鼻から吸った空気が最初に通る空間である鼻腔から、喉頭と呼ばれる、のどぼとけの少し下の方までの空気の通り道を指します。その先の気管、気管支、肺を合わせて下気道といいます。

b 正

喉頭から気管支まで広がる線毛上皮は、鼻や口から入ってきた異物を絡め取ることで、異物が体内に入ってしまうことを防ぎます。線毛に絡め取られた花粉やほこりなどの異物は、鼻水の一部として体外に出たり、くしゃみをした際にその勢いで体内から取り除かれます。

c 正

横隔膜は肺の下で肺を支えていて、肋間筋は肋骨の間を埋める筋肉として物理的に肺を包み込んでいます。この横隔膜と肋間筋の2つが協働して働くことで呼吸が行われます。具体的には、横隔膜が下がって、肋間筋も引き延ばされると、肺の入るスペースが大きくなるので、肺の中にたくさんの空気を取り込むことが出来ます。これが息を吸っている状態です。

d 誤

赤血球の役割は、肺で受けとった酸素を全身に運搬し、全身で受け取った二酸化炭素を肺に運搬して呼気として排出させることです。よって、選択肢のように、赤血球が肺で二酸化炭素を受け取ることはありません。

 

 

 

問64
循環器系に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a 四肢を通る動脈には、内腔に向かう薄い帆状のひだが一定間隔で存在する。
b 血管壁の収縮と弛緩は、自律神経系によって制御される。
心室には、血液を送り出す側には弁があるが、取り込む側には弁がない。
d 血管系は閉鎖循環系であるのに対して、リンパ系は開放循環系である。

 

a 誤

内腔とは、血管の内側の血液が通ってる空間のことです。また、動脈は、心臓から血液を送り出す方向の血管で、静脈は、身体から心臓に戻ってくる血液が通る血管です。動脈は血液を送り出すために心臓の強いパワー(収縮力)を使っているため逆流はほとんど起こりませんが、身体の末端から血液が返ってくる静脈は、勢いに欠け、逆流しやすいです。この逆流を防ぐため、静脈にのみ、弁という名のひだがついています。

b 正

血管壁の収縮は血圧上昇を、血管壁の弛緩は血圧低下を意味します。興奮しているときや緊張しているとき、全身の血圧が上がっているような変な感覚になったことはないでしょうか。興奮性の反応が起こるとき、自律神経の一つである交感神経の作用で血圧が上昇します。反対に、リラックスしているときは自律神経のもう一つの要素である副交感神経が亢進することで血圧の低下が起こります。

c 誤

aと考え方はほとんど同じです。血液を送り出すときは勢いがあるため、弁は必要ありませんが、取り込むときには送り出すときほどの勢いがなく、逆流しやすいために弁でこれを防ぎます。

d 正

人間の血管は閉鎖血管系、つまり血液は心臓から出て再び心臓に戻るまでに一度も血管をでることがありません。(正しくは液体成分が一部しみ出したり、一部成分が尿として濾し出されたりなどの例外もあります。)対してリンパ管は開放循環系、つまりリンパ液は全身を回る途中でリンパ管という専用の管から抜け出して、周囲の組織に浸潤していきます。

 

 

 

問65
血液に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 血液の粘稠性は、主として血漿の水分量や白血球の量で決まる。
アルブミンは、血液の浸透圧を保持する働きがある。
c 赤血球は、中央部がくぼんだ円盤状の細胞で、血液全体の約10%を占める。
d リンパ球は、血管壁を通り抜けて組織の中に入り込むと、マクロファージと呼ばれる。

 

a 誤

血液の粘稠性は、血漿の水分量と赤血球の量で決まります。血液の構成成分は、半分以上が血漿と呼ばれる、ほとんど水分からなる液体成分で、残りの固体成分のうち99%が赤血球です。よって血液の粘稠性に関わるのは、白血球でなく赤血球の量です。

b 正

アルブミンの働きは主に2つ、①浸透圧の調節(血液が血管外の液体より極端に濃いと、それを薄めようと血管が水分を取り込みすぎてしまったりと不都合が生じるため、血液の濃度を調節する)と、②物質の運搬(水分を多く含む血液中は、油のように疎水性の物質が流れるのは難しいため、アルブミンが結合して一緒に血流に乗って運搬される)です。

c 誤

aで述べたとおり、液体成分の血漿を除けば、血液の構成要素のほとんどが赤血球です。血液全体の10%というのは少なすぎで、およそ40%が赤血球だと覚えておきましょう。つまり血液のおよそ60%が液体成分(血漿)です。

d 誤

白血球は免疫反応に関わる血液成分の総称です。主に好中球やリンパ球、単球の3種に分かれており、マクロファージになるのは単球です。リンパ球はT細胞やB細胞といった、個々の細菌やウイルスに特化した免疫に関わっています。

 

 

 

問66
目に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 眼瞼(まぶた)は、物理的・化学的刺激から目を防護するために、皮下組織が多く厚くできていて、内出血や裂傷を生じにくい。
b 角膜と水晶体の間は、組織液(房水)で満たされ、眼圧を生じさせている。
c 雪眼炎は、赤外線に眼球が長時間曝されることにより、角膜の上皮が損傷を起こした状態である。
d 視細胞が光を感じる反応にはビタミンDが不可欠であるため、ビタミンDが不足すると夜間の視力が低下する夜盲症を生じる。

 

a 誤

目が腫れたり内出血を起こすのは日常的に聞く話です。眼瞼はたしかに外界の刺激から目を守る役割がありますが、皮下組織は厚くありません。皮膚で刺激を防ぎながらも、薄くあることによってまばたきを行いやすくしています。

b 正

眼圧というと、球形の眼全体の話をしているようにも思えますが、正確には角膜という眼の1番外側をおおう膜と、眼のレンズである水晶体の間にたまっている房水と呼ばれる液体が、多いときは眼圧が高く、少ないときは低い、というように調節されています。

なお、房水とはこの角膜と水晶体の間にある液体を特定する表現であり、組織液は房水を含み、身体のあらゆるところに存在する液体成分です。

c 誤

雪眼炎は、雪のある場所で長時間遊んだときによくなる病気です。雪で反射した紫外線が直接角膜に当たり続けるのが原因で、赤外線は関係ありません。

d 誤

光を感じるのに必要なのはビタミンDではなくビタミンAです。何かを見るときに働く視細胞には、明るいところでしか働けないが色を識別できるものと、暗いところで働けるが色は識別できないものの2種があります。暗い場所で働く方の細胞は、普段(明るいところ)は不活性化されており、暗いところにいくとビタミンAの作用で活性化されます。よってビタミンAがないと、明るいところでは問題ないものの、暗いところで視力が低下します。つまり、夜になって暗くなると視力が低下するため、夜盲症と呼ばれます。

 

 

 

問67
鼻及び耳に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 鼻中隔の前部は、毛細血管が豊富に分布していることに加えて粘膜が薄いため、傷つきやすく鼻出血を起こしやすい。
b 鼻腔粘膜に炎症が起きて腫れた状態を鼻炎といい、鼻閉(鼻づまり)や鼻汁過多などの症状が生じる。
c 中耳は、外耳と内耳をつなぐ部分であり、鼓膜、鼓室、耳小骨、耳管からなる。
d 内耳は、平衡器官である蝸牛と聴覚器官である前庭の2つの部分からなり、いずれも内部はリンパ液で満たされている。

 

a 正

鼻中隔は、右鼻と左鼻を仕切るためのもので、骨と軟骨で出来ています。鼻中隔の前部、つまり鼻に近い側は出血しやすいのが特徴です。小さい子が鼻をほじってすぐに鼻血を出しますよね。あれは鼻中隔の粘膜が薄いからです。

b 正

イメージ通りかと思います。鼻で炎症が起こればそれは鼻炎であり、鼻水が止まらなくなったり鼻づまりが生じるなどの症状を起こします。

c 正

耳は大きく外耳・中耳・内耳の3つに分かれます。外側から鼓膜に到達するまでが外耳、中耳は問題文の通りです。内耳はdで扱います。鼓膜と耳小骨は外界の音を増幅するのに使われ、耳管は気圧が変化した際に開くことで耳の詰まった感じを取り除くことができます。

d 誤

内耳は蝸牛と前庭に分かれますが、聴覚器官は蝸牛の方で、前庭が平衡器官です。平衡器官というと三半規管を思い浮かべる方もいるかもしれません。こちらも平衡器官であり、前庭は身体の傾き(その瞬間の状況)を感じ取るのに対し、三半規管は名前に三とある通り、三方向の軸で傾きを捉えられます。つまり三半規管は立体的に状況を捉え、回転を感じ取るのが得意です。

 

 

 

問68
皮膚に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 皮膚の主な機能は、身体の維持と保護,体水分の保持、熱交換及び外界情報の感知である。
b 皮膚は、表皮、真皮、皮下組織からなり、このうち皮下組織は、角質細胞と細胞間脂質で構成されている。
メラニン色素は、真皮の最下層にあるメラニン産生細胞で産生され、太陽光に含まれる紫外線から皮膚組織を防護する役割がある。
d 体温調節のための発汗は全身の皮膚に生じるが、精神的緊張による発汗は手のひらや足底、脇の下、顔面などの限られた皮膚に生じる。

 

a 正

皮膚は、シンプルに1枚の膜として体内に異物が入るのを物理的に防ぐ身体の維持や保護の機能に加え、対外環境と体内環境を隔てる膜として、体内外の水分の調節や熱の交換を行い、体外の情報を体内に伝えるための感知機能があります。

b 誤

皮膚が表皮、真皮、皮下組織からなるというのは正しい説明です。ただし、角質細胞と細胞間脂質から構成されるのは皮下組織ではなく表皮です。お風呂などで角質汚れを落とす、という表現を聞いたことはないでしょうか。角質は古くなったら皮膚表面からぽろぽろととれていくもので、皮下の組織ではなく、最も外側の表皮に所属します。

c 誤

メラニンは、髪を黒くする色素として知られています。これがメラニン産生細胞から産生されるのは、真皮の最下層ではなく表皮の最下層です。メラニンはシミの原因になります。

d 正

走り回ったときは全身で汗をかきますが、何か怖いことがあったときの冷や汗は髪の生え際や脇の下からかくのではないでしょうか。どちらも汗を出す分泌腺は同じですが、発汗の生じる機構によって、発汗の生じる部位も変化します。

 

 

 

問69
骨組織に関する記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せを一つ選べ。
 骨は生きた組織であり、( a )と骨形成が互いに密接な連絡を保ちながら進行し、これを繰り返すことで( b )が行われる。骨組織の構成成分のうち、( c )は、骨に硬さを与える役割をもつ。

 

a 骨吸収 b 骨の新陳代謝

骨は常に破壊されながら新たに作り直されていると聞いたことはありますか?これを言い換えたのが骨吸収と骨形成が絶えず行われている、ということであり、このことを骨の新陳代謝と呼びます。骨吸収は、骨が成分を吸収して成長するのではなく、骨組織が吸収されて破壊されていく過程なので気をつけましょう。

c 無機質

ここでの無機質はカルシウムやリンを指します。これらは骨の形成に必要な成分です。先にも書いた通り、骨は常に破棄されて作り直されているために、新たな骨の構成成分の供給が非常に重要になります。これらの無機質の成分が多いほど、骨はより正常に、つまり強く硬く成長します。

 

 

 

問70
脳や神経系の働きに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 中枢神経系は脳と脊髄から構成され、脳は脊髄と延髄でつながっている。
b 脳における血液の循環量は、心拍出量の約15%、ブドウ糖の消費量は全身の約25%、酸素の消費量は全身の約20%と多い。
末梢神経系は、脳や脊髄から体の各部に伸びており、体性神経系と自律神経系に分類されている。
d 自律神経系は、交感神経系と副交感神経系からなり、各臓器・器官でそれぞれの神経線維の末端から神経伝達物質と呼ばれる生体物質を放出している。

 

a 正

延髄は呼吸中枢がある領域で、人間が生きていくのに欠かせません。この部分がちょうど脳と脊髄の仲介地点として作用しています。延髄は脳の一部として考えられる場合と、そうでない場合があります。今回は、延髄によって脳と脊髄がつながっているという表現のため、延髄は脳としてはカウントせず、大脳と小脳を脳の構成要素として考えます。

b 正

ややこしいですが、この3つの数字はときどき出題されるので覚えておいた方が良いでしょう。脳は全身の様々な働きを司る部位なので、多くのエネルギーを消費します。

また、脳は脆弱なので、色々な物質が入り込まないように血液脳関門というゲートがあるのですが、ここを通れるものが限られているために、脳はエネルギー源としてブドウ糖しか利用できません。(他の組織では脂肪をもとにエネルギーを得たり様々な対策がとれます。)よって脳の独占率1番が高いのがブドウ糖になっています。

c 正

脳と脊髄から構成される中枢神経以外の全ての神経を総称して末梢神経と呼びます。このうち体性神経系は、感覚神経と運動神経からなっており、皮膚で触れた何かを感じ取ったり、五感で得られた情報に対して何か動きを起こすときに働きます。自律神経系は交感神経と副交感神経からなり、自分の意思でコントロールする体性神経系とは違い、全て無意識下で調節されています。

d 正

全身の神経は全てつながっているわけではありません。1つの神経の中では簡単に神経伝達できるのですが、神経同士での情報のやりとりには、神経伝達物質という物質を介することが必要になります。

2023年度(令和5年度)登録販売者試験過去問 第3章(問51~60)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第3章の問51~60を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

 

目次

問51 問52 問53 問54 問55 問56 問57 問58 問59 問60

 

 

問51
外皮用薬及びその配合成分に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a 温感刺激成分が配合された外皮用薬は、打撲や捻挫などの急性の腫れや熱感を伴う症状に対して適している。
ジフェンヒドラミンは、適用部位でプロスタグランジンの産生を抑えることで、湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも等の皮膚症状の緩和を目的として使用される。
c ヘパリン類似物質は、患部局所の血行を促す目的で用いられるほか、抗炎症作用や保湿作用も期待される。
アンモニアは、皮下の知覚神経に麻痺を起こさせる成分として、主に虫さされによる痒みに用いられる。

 

a 誤

外皮用薬の局所刺激成分には、冷感刺激成分と温感刺激成分があります。熱感を伴う部位に温感刺激成分を使用すると、より熱感が強くなってしまい逆効果です。基本的には、温感刺激成分は肩こり等の慢性の症状に使用します。

b 誤

湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも等の皮膚症状を緩和するという目的は正しいですが、作用相手はプロスタグランジンではなく、ヒスタミンです。抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンは、所謂アレルギー反応に分類される症状に作用します。

c 正

ヘパリン類似物質は主に血行促進成分として用いられますが、抗炎症作用や保湿作用も持ちます。血行を促進するために、血の止まりにくい血友病などの疾患を持つ人は、使用を避けます。

d 正

アンモニアは毒だから肝臓で尿素に変えられる、という話を聞いたことはあるでしょうか。アンモニアの毒性は主に神経への影響として現れます。皮膚の神経を麻痺させることで痒みを抑えます。

 

 

 

問52
毛髪用薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 効能・効果に「壮年性脱毛症」や「円形脱毛症」等の疾患名を掲げた製品の中には、医薬部外品として販売されているものもある。
b カシュウは、タデ科ツルドクダミの塊根を基原とする生薬で、頭皮における脂質代謝を高めて、余分な皮脂を取り除く作用を期待して用いられる。
エストラジオール安息香酸エステルは、女性ホルモンによる脱毛抑制効果を期待して配合されている場合がある。
d ヒノキチオールは、ヒノキ科のタイワンヒノキ、ヒバ等から得られた精油成分で、抗菌、抗炎症などの作用を期待して用いられる。

 

a 誤

医薬部外品は、言葉の通り医薬品ではないため、壮年性脱毛症や円形脱毛症のように、正式な疾患名を掲げて、それに対する作用を示すことは出来ません。これらの病名が記されている場合は医薬品であり、医薬部外品には育毛剤などがあげられます。

b 正

問題文は正しいです。もちろん頭皮から油分がなくなってしまってはかさかさ肌になってしまい問題ですが、油分が多すぎてもぎとぎとしてしまい、あまり見た目の良いものではありません。脂質の代謝とは、ここでは脂質を分解することを指しており、頭皮にたまった脂質を分解することによって全体の脂質量を減らします。

c 正

ご時世的に不適切な表現かもしれませんが、歳をとってはげになるのは男性のイメージではないでしょうか。いくらジェンダーバイアスを除こうと思っても、男性には男性ホルモンがあるし、女性には女性ホルモンがあるので、外見上の違いはホルモン治療でもしない限りどうすることもできません。

そしてこの男性の方が年を取ったら髪が薄くなりやすいイメージの通り、脱毛は男性ホルモンの過剰な働きにより生じると考えられています。よってこれと拮抗する女性ホルモンの成分の一部であるエストラジオールの使用は、脱毛抑制効果を持ちます。

d 正

ヒノキチオールとは、ヒノキからとれる油分を精製したもので、薄めず使うとダニよけにもなります。抗菌作用や抗炎症作用を覚えておきましょう。

 

 

 

問53
歯痛・歯槽膿漏薬の配合成分とその配合目的としての作用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
<配合成分ー配合目的としての作用>
a ジブカイン塩酸塩ー齲蝕(むし歯)で露出した歯髄の知覚神経の伝達を遮断して痛みを鎮める。
b カルバゾクロムー歯肉炎、歯周炎(歯槽膿漏)の症状である口臭を抑える。
c オイゲノールー齲蝕(むし歯)部分での細菌の繁殖を抑える。
d銅クロロフィリンナトリウムー炎症を起こした歯周組織の修復を促す。

 

a 正

ジブカイン塩酸塩は、神経伝達に必要なチャネルという体内のゲートが開くことを阻害するために、神経伝達、つまりそれによる痛みの伝達を遮断します。虫歯では歯が痛んで歯の神経が露出することで激痛が生じるため、神経伝達の抑制が局所麻酔作用をもたらします。

b 誤

カルバゾクロムには、毛細血管を補強することで出血を抑える作用があります。

歯肉炎などによる口臭を抑えるのは、銅クロロフィリンナトリウムです。

c 正

オイゲノールは、殺菌消毒成分です。虫歯が生じた部位での殺菌の繁殖を抑えます。刺激性があるため、歯に塗っても問題ありませんが、口腔粘膜にはつかないように注意します。

d 正

銅クロロフィリンナトリウムは、bで述べた口臭抑制効果の他に、組織(今回は歯周)を修復する作用があります。

 

 

 

問54
次の記述は、登録販売者と禁煙補助剤(咀嚼剤)の購入者との会話である。購入者からの相談に対する登録販売者の説明について、適切なものの組合せを一つ選べ。

<購入者>ニコチン離脱症状とはどのような症状ですか。
<登録販売者>血中のニコチン濃度の低下によって、イライラしたり、集中できなくなったり、落ち着かない等の症状がでます。

<購入者>ニコチン置換療法とはどのようなものですか。
<登録販売者>喫煙を継続しながら徐々に本剤に変更していく方法です。離脱症状の軽減を図りながら徐々に摂取量を減らし、最終的にニコチン摂取をゼロにします。

<購入者>本剤を使用する場合、食べ物や飲み物で気をつけることはありますか。
<登録販売者>口の中が酸性になるとニコチンの吸収が増加するので、口腔内を酸性にするコーヒーや炭酸飲料などを飲んだ後はしばらく使用を避ける必要があります。

<購入者>高血圧の薬を飲んでいるのですが、本剤を使用しても大丈夫ですか。
<登録販売者>使用している治療薬の効果に影響を生じたり、症状を悪化させる可能性があるため、使用の適否については主治医と相談してください。

 

a 正

タバコに含まれるニコチンという物質には依存性があります。何かの依存状態から抜け出そうとするとき、身体的離脱と精神的離脱という2つの離脱症状が起こります。(もちろんないこともあります。)身体的離脱としては、身体の震えや全身のだるさ、精神的離脱にイライラや集中力の低下があげられます。

b 誤

そもそもの治療の目的がタバコをやめることです。その障壁として主に、①たばこを吸うという行為をやめること②ニコチンへの依存から抜け出すこと、の2つがあげられます。依存した物質から一気に抜け出すと離脱症状が大きく生じかねないので、リスクを伴いますが、タバコを吸うという行為は治療初期からやめることが重要になります。

c 誤

ニコチンは塩基性の物質なので、口腔内が酸性の場合に中和反応が起こり、吸収量が低下します。ニコチン吸収量が少ないとだけ聞くと、いいようにも思えますが、あくまで治療の一環としてニコチンを摂取することが求められているので、吸収量が多いのも少ないのも問題になります。

d 正

ニコチンは血管を収縮させることで血圧を上昇させる作用を持つため、高血圧の人がニコチンを摂取すると病状を悪化させる恐れがあります。このようなケースの禁煙治療では、ニコチンをできる限り使用しない方法を医師が考えることになります。

 

 

 

問55
ビタミン成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a ビタミンB6は、脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素である。
b ビタミンB2は、炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、腸管運動を促進する作用がある。
c ビタミンDの欠乏症として、高カルシウム血症、異常石灰化が知られている。
d ビタミンAは、夜間視力を維持したり、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素である。

 

a 誤

 ビタミンB6は、脂質の代謝ではなくタンパク質の代謝に関わります。なお、問題文の説明はビタミンB2に該当します。

b 誤

ビタミンB2の説明は選択肢aの通りです。問題文のように、炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、腸管運動を促進するのはビタミンB1です。

c 誤

ビタミンDはカルシウムの吸収を促進する成分なので、高カルシウム血症になるのはビタミンDが欠乏しているときではなく、過剰に存在しているときです。なお、異常石灰化という言葉について、石灰の構造を覚える必要はありませんが、石灰=成分にカルシウムを含む、とは覚えておきましょう。

d 正

問題文が正しいです。ビタミンAが欠乏すると、夜に視力が弱まる夜盲症を発症しやすくなります。

 

 

 

問56
滋養強壮保健薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a コンドロイチン硫酸は、肝臓の働きを助け、肝血流を促進する働きがあり、全身倦怠感や疲労時の栄養補給を目的として配合される場合がある。
b カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素であり、筋肉の収縮、血液凝固、神経機能にも関与する。
アスパラギン酸ナトリウムは、アスパラギン酸のビタミンCの吸収を助ける等の作用を期待して、滋養強壮保健薬やかぜ薬に配合されている場合がある。
ナイアシンは、下垂体や副腎系に作用してホルモンの分泌の調節に関与するため、ときに経血量が多くなることがある。

 

a 誤

問題文の説明に合致するのはグルクロノラクトンです。健康サプリのCMで元気にウォーキングをする映像とともに、”コンドロイチン配合!”と謳うものを見たことがないでしょうか。コンドロイチンは関節痛や筋肉痛に効果があります。

b 正

骨を丈夫にするのにカルシウムが必要なのはイメージ通りではないでしょうか。このほか、体内では様々なシグナルとしてカルシウムが用いられます。普段は体のそこら中にあるものではなく、筋肉を収縮させたいとき、血液を凝固させたいときなど、特定のときに体内の収納庫から放出されることで、普段は作動しない機能を活性化させます。

c 誤

ビタミンCの吸収を助けるのはヘスペリジンです。アスパラギン酸は身体の構成要素であるタンパク質や、遺伝情報を保持するDNAのもとである核酸を作る際に非常に重要なアミノ酸であり、これを摂取することで体内の色々な代謝活動が活発になります。

d 誤

問題文の説明はビタミンEのものです。ナイアシンは、ニコチン酸アミドという、身体の様々な代謝を進める物質です。タバコに含まれるニコチンとは別物として扱いましょう。主に皮膚の機能を維持する役割を担います。

 

 

 

問57
一般用医薬品防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向があるものの胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症に適すとされる。
b 構成生薬としてマオウは含まれない。
c 便秘に用いられる場合には、漫然と長期の使用は避け、1週間位使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談するなどの対応が必要である。
d 肥満症又は肥胖症に用いられる場合、医薬品の販売等に従事する専門家においては、生活習慣の改善が重要であることを説明する等、正しい理解を促すことが重要である。

 

a 誤

問題文の説明は大柴胡湯を指します。

b 誤 c 正

防風通聖散は、体力が充実して腹部に皮下脂肪が多いものの、肩こりや便秘、吹き出物、肥満症に効きます。副作用を起こしやすい三大成分であるカンゾウ・マオウ・ダイオウを全て含んでいるため、長期使用は危険であり、1週間以上の使用は控えます。

d 正

肥満には生活習慣だけでなく、遺伝などの様々な要因が絡んでいるため、医薬品購入者の生活習慣が原因だと決めつける物言いは間違いです。しかし、肥満の状態を薬に頼ってしまうのが問題であることも伝える必要があります。

 

 

 

問58
感染症の防止及び消毒薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 滅菌は、物質中のすべての微生物を殺滅又は除去することである。
b 消毒薬の効果は、微生物の種類による影響を受けない。
c クレゾール石ケン液は、結核菌を含む一般細菌類、真菌類に対して殺菌消毒作用を示すが、大部分のウイルスに対する殺菌消毒作用はない。
次亜塩素酸ナトリウムは、皮膚刺激性が弱く、手指・皮膚の消毒に適している。

 

a 正

”滅”とは、絶滅や全滅など根こそぎいなくならせるような表現であり、すべての微生物排除を指します。殺菌や消毒は、滅菌とは違い、微生物の数を減らすことを指します。

b 誤

例えばアルコールは多くのウイルスに効きますが、これはアルコールが細菌の外側にある細胞壁と呼ばれるガードを溶かすからです。もともとこのガードをもたないノロウイルスのようなウイルスにはアルコール消毒は意味をなしません。このように、細菌やウイルスは1つ1つ特性を持つので、全てに効く薬品というのはほぼないと思っておいて問題ないでしょう。

c 正

問題文が正しいです。ちなみに、真菌とは、細胞よりも複雑な構造をもつ生物で、カビや酵母菌を含みます。

d 誤

次亜塩素酸ナトリウムはかなり皮膚刺激性の強い物質です。インターネット検索をすると、よく知っている洗剤が複数出てくるかと思います。病院内の清掃等にも使われます。

 

 

 

問59
殺虫剤・忌避剤及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a シラミの防除には、フェノトリンが配合されたシャンプーが有効である。
b ゴキブリの卵は、殺虫剤の成分が浸透しやすい殻で覆われているため、燻蒸処理を行えば駆除できる。
c イエダニは、ネズミを宿主として生息場所を広げていくため、まず、宿主動物であるネズミを駆除することが重要である。
イカリジンは、年齢による使用制限がない成分で、蚊やマダニに対して殺虫効果を示す。

 

a 正

フェノトリンはシラミに効く殺虫成分です。シャンプーに含ませておくことで、頭皮に寄生したシラミの駆除に役立ちます。シラミにより生じた腫れ等の症状には効きません。

b 誤

ゴキブリの殻は医薬品成分を通しません。よって燻蒸処理可能なのは孵化した後のものだけであり、タマゴがあると思われるときは、幼虫に孵化するまで待ってから処理し直します。

c 正

ペストなどを媒介するイエダニはネズミを宿主とします。よってネズミの駆除がイエダニの駆除にも関わってきます。ただし、すでにイエダニがいる状態で宿主のみを殺してしまうと、住処を失ったダニが動き回ってしまうため、イエダニの駆除も同時に行います。

d 誤

イカリジンは、ディートと呼ばれる殺虫成分と似た作用をもちます。ディートは最も効果的な殺虫成分とされています。

 

 

 

問60
尿糖・尿タンパク検査薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 通常、尿は弱アルカリ性であるが、食事その他の影響で中性~弱酸性に傾くと、正確な検査結果が得られなくなることがある。
b 尿タンパク検査の場合、中間尿ではなく出始めの尿を採取して検査することが望ましい。
c 尿タンパク検査の場合、原則として早朝尿(起床直後の尿)を検体とし、激しい運動の直後は避ける必要がある。
d 尿糖検査の結果に異常がある場合、その要因は、腎炎やネフローゼ、尿路感染症、尿路結石等がある。

a 誤

通常、尿は弱酸性です。この本来の状態を確認したいのに、食後に採尿すると尿が塩基性側に傾いてしまい、それが食事の影響なのか、普段から起こっていることなのかが分からなくなってしまいます。よって、尿検査は必ず朝一番の尿で行います。

b 誤

尿検査では、尿に含まれる細菌の量も確認します。尿道や、尿の排出部には細菌がついている可能性があり、出始めの尿はこれらの細菌を多く含んでしまいやすいために、一通り尿が尿道を洗い流した後のものを検査に使用します。

c 正

食後の尿を避けたとしても、どうしてもその日に食べたものやその日の生活スタイルによって、尿たんぱくの出方が変わってしまうものです。早朝の尿を取ることで、毎度同じ条件の下での検査が可能になります。また、強度の強い運動をしたあとの尿は、尿たんぱくが上昇していることが多いため、検査に使用することは控えます。

d 誤

尿糖検査の異常は主に高血糖の場合に起こります。高血糖以外には、腎性糖尿病といい、血中の糖分が多いわけではないのに尿中に糖分を多く出し過ぎてしまう疾患の可能性があります。

問題文にある腎炎やネフローゼ、尿路感染症、尿路結石はすべて、尿糖ではなく、尿たんぱくの異常の原因です。

2023年度(令和5年度)登録販売者試験過去問 第3章(問41~50)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第3章の問41~50を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

目次

問41 問42 問43 問44 問45 問46 問47 問48 問49 問50

 

 

問41
貧血用薬(鉄製剤)及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンB12の構成成分である銅が配合されている場合がある。
b 消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つことを目的として、ビタミンCが配合されていることがある。
c 服用後、便が黒くなる場合には、重大な副作用の可能性があるため直ちに服用を中止する。
d 貧血の症状がみられる以前から予防的に使用することが適当である。

 

a 誤

正常な赤血球の形成にはビタミンB₁₂と葉酸が必要不可欠です。ビタミンB₁₂の構成成分は銅ではなくコバルトで、コバルトは骨髄での造血機能を高める役割があります。

b 正

鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄があります。動物の体内に存在するのがヘム鉄、食物として摂取したりする植物等に含まれる鉄分は非ヘム鉄です。もちろん、自分の体内での姿であるヘム鉄の方が吸収しやすいです。アスコルビン酸(通称ビタミンC)は、摂取した鉄分をヘム鉄に保つことで鉄の吸収を助けます。

c 誤

さびた鉄が黒くなるのは何となく想像できるでしょうか。もちろん褐色のサビが一般的なイメージではありますが、鉄製剤服用後の便を黒くしているのは、酸化された鉄です。体内で吸収されなかった分が便で排出されているだけなので特に問題はありません。鉄製剤服用後の症状であることだけ確認しておきます。

d 誤

鉄分の過剰摂取は、嘔吐下痢等の副作用から始まり、致死性の重篤な副作用までもたらす可能性があります。貧血が起こっていない状態での鉄製剤の摂取は控えます。

 

 

 

問42
次の成分を含む一般用医薬品の外用痔疾用薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
 坐剤1個(1.75g)中:<成分ー分量>
 リドカインー60 mg
 グリチルレチン酸ー30 mg
 アラントインー20 mg
 トコフェロール酢酸エステルー50 mg
a リドカインは、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることがある。
b グリチルレチン酸は、比較的緩和な抗炎症作用を示す成分である。
c アラントインは、痛みや痒みを和らげることを目的として配合される局所麻酔成分である。
d トコフェロール酢酸エステルは、出血を抑えることを目的として配合される止血成分である。

 

 各成分の作用は以下の通り

  • リドカインー局所麻酔作用。痔による痛みやかゆみを和らげる。重篤な副作用としてショックがある。
  • グリチルレチン酸ー非ステロイド性の緩和な抗炎症作用。

  *ステロイド性の抗炎症剤はよく効果が強い分、正常組織にも強いダメージを与えるので、使用はなるべく控えます。

  • アラントインー組織修復作用。肛門の傷を治す。
  • トコフェロール酢酸エステルー通称ビタミンE。血行を改善する。

a 正

上記リドカインの説明通り、ショックを起こす可能性があります。

b 正

上記グリチルレチン酸の説明通り、この成分は抗炎症成分のうち、非ステロイド性のため、正常組織への害が少ない分、抗炎症作用も比較的緩和です。

c 誤

上記の通り、選択肢に記された効果を持つのはリドカインです。アラントインは傷を治すための成分です。

d 誤

上記の通り、トコフェロール酢酸エステルは血行改善の効果を持ちます。

止血成分には、①アドレナリン作動成分といって、身体が戦闘モードになる交感神経を活性化させるアドレナリンに作用し、血管を収縮させることで出血を止めるもの(メチルエフェドリン塩酸塩など)と、②傷部分に膜を作って止血するもの(タンニン酸など)があります。

 

 

 

問43
婦人薬として用いられる漢方処方製剤のうち、カンゾウを含むものの組合せを一つ選べ。
a 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
b 加味逍遙散(かみしょうようさん)
c 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
d 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

 

カンゾウ・マオウ・ダイオウは副作用を生じやすいため、これらを含む漢方の使用には特に注意が必要です。

a 誤

当帰芍薬散は、体力虚弱な人の女性ホルモンに関わる症状から、冷え性、頭痛などあらゆる症状に効きます。

b 正

加味逍遙散は、体力中等度以下の人の、虚弱体質や、女性ホルモン関連の症状に効きます。カンゾウを含みます。

c 誤

桂枝茯苓丸は、比較的体力がある人の、女性ホルモン関連の症状、頭痛・にきび・しもやけ等に効きます。重篤な副作用として肝機能障害がありますが、カンゾウは含んでいません。

d 正

桃核承気湯は、体力中等度以上の人の、女性ホルモン関連の症状、腰痛・便秘・高血圧などに効きます。カンゾウとダイオウを含みます。

 

 

 

問44
次の記述にあてはまる漢方処方製剤として、最も適切なものを一つ選べ。
 比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの、月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきびに適すとされる。
1 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
2 温清飲(うんせいいん)
3 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
4 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
5 四物湯(しもつとう)

 

1 正

2 誤

温清飲は、体力中等度な人の虚弱体質や女性ホルモン関連の症状に効きます。重篤な副作用として肝機能障害があげられます。

3 誤

前問dと同じ。

4 誤

前問aと同じ。

5 誤

四物湯は体力虚弱な人の、女性ホルモン関連の症状や、出産流産後の疲労回復に効きます。

 

 

 

問45
鼻炎用内服薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a メチルエフェドリン塩酸塩は、依存性がある抗コリン成分であり、長期間にわたって連用された場合、薬物依存につながるおそれがある。
b ロラタジンは、肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げることにより、ヒスタミンの働きを抑える作用を示す。
c トラネキサム酸は、皮膚や鼻粘膜の炎症を和らげることを目的として用いられる。
d クレマスチンフマル酸塩が配合された内服薬を服用した後は、乗物又は機械類の運転操作を避けることとされている。

 

a 誤

抗コリン成分は依存性を持ちますが、メチルエフェドリン塩酸塩はアドレナリン作動成分であり、抗コリン成分ではありません。アドレナリン作動成分は、問42(d)で血管収縮による止血成分として出てきました。今回も同様に血管の収縮により、鼻の粘膜のかゆみや腫れを抑えます。

b 正

ヒスタミンは、主にアレルギー反応を生じさせる物質と考えます。このヒスタミンは、受容体と結合することで初めて働きます。よってこの受容体との結合を妨げることで、アレルギー反応を抑えることが出来ます。この作用をもたらす成分を抗ヒスタミン成分といいます。

c 正

トラネキサム酸は抗炎症成分です。鼻の粘膜にかかわらず、全身の様々な部位に対して抗炎症作用を持ちます。

d 正

クレマスチンフマル酸塩は、aのメチルエフェドリン塩酸塩と同じヒスタミン成分です。ヒスタミンは、主にアレルギーを起こす原因物質として出てきますが、睡眠覚醒をコントロールする作用を持っているため、ヒスタミンの作用を止めることで睡眠覚醒にも影響してしまい、眠気を催します。

 

 

 

問46
鼻炎用点鼻薬の配合成分に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a ナファゾリン塩酸塩は、鼻粘膜を通っている血管を拡張させることにより、鼻粘膜の充血や腫れを和らげる。
b ケトチフェンフマル酸塩は、ヒスタミンの働きを抑えることにより、くしゃみや鼻汁等の症状を緩和する。
c クロモグリク酸ナトリウムは、アレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎に対しても有効である。
d リドカイン塩酸塩は、鼻粘膜の過敏性や痛みや痒みを抑えることを目的として配合される場合がある。

 

a 誤

ナファゾリン塩酸塩も問42(d)で扱ったアドレナリン作動成分なので、血管を拡張するのではなく、収縮させることで充血や腫れを和らげます。

b 正

ケトチフェンフマル酸塩は抗ヒスタミン成分なので、アレルギー症状を抑える方向に成分が働くと考えます。よってこの選択肢は正解です。抗ヒスタミン成分の作用機構については→問45(b)

c 誤

クロモグリク酸ナトリウムは抗アレルギー成分なので、非アレルギー性の症状には効果がありません。なお、先ほどの抗ヒスタミン成分は、ヒスタミンの受容体との結合を阻害していましたが、抗アレルギー成分は、そもそものヒスタミンの放出を抑えることでアレルギー症状を改善します。

d 正

リドカインは問42で扱った局所麻酔成分です。ここでは鼻粘膜への局所麻酔作用によって痒みや腫れを抑えます。

 

 

 

問47
眼科用薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 人工涙液は、涙液成分を補うことを目的とするもので、目の疲れや乾き、コンタクトレンズ装着時の不快感等に用いられる。
b プラノプロフェンは、炎症の原因となる物質の生成を抑える作用を示し、目の炎症を改善する効果を期待して用いられる。
c ホウ酸は、角膜の乾燥を防ぐことを目的として用いられる。
d サルファ剤は、細菌及び真菌の感染に対する効果が期待できるが、ウイルスの感染に対する効果はない。

 

a 正

人工涙液が目の潤いが足りないときに用いられるのは何となく予想がつくかもしれません。目が乾燥しているときは、涙が足りていない時を指すので、人工涙液でその分の水分を補充します。

b 正

 プラノプロフェンは、非ステロイド性の緩和な抗炎症作用を示します。炎症の原因物質の生成を抑えることで炎症を抑えます。

問42では同じ非ステロイド性抗炎症成分としてグリチルレチン酸が登場しました。

c 誤

角膜の乾燥を防ぐのはコンドロイチンです。

ホウ酸は洗眼液の成分で、眼の洗浄や消毒に使われる他、目薬に防腐剤として含まれている場合もあります。

d 誤

サルファ剤は眼科用の薬以外でも使用されるため覚えておきましょう。全ての細菌に効くわけでなければ、真菌にもウイルスにも効きません。簡単に言うと特定の細菌のみに効きます。化膿の改善に向いていて、スルファメトキサゾールのように”スルファ~”といった名の成分が多いです。

 

 

 

問48
30歳女性が、目の充血があるため、次の成分の一般用医薬品の一般点眼薬を購入する目的で店舗を訪れた。
 100mL中:<成分ー分量>
 テトラヒドロゾリン塩酸塩ー0.05 g
 グリチルリチン酸二カリウムー0.25 g
 クロルフェニラミンマレイン酸塩ー0.03 g
 パンテノールー0.1 g
 アスパラギン酸カリウムー1.0 g
 (添加物として、ベンザルコニウム塩化物、pH調整剤等を含む。)
この点眼薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a この医薬品には、結膜を通っている血管を収縮させて目の充血を除去することを目的としてテトラヒドロゾリン塩酸塩が配合されている。
b この医薬品に配合されるアスパラギン酸カリウムは、新陳代謝を促し、目の疲れを改善する効果を期待して配合されているアミノ酸成分である。
c この医薬品を点眼する際には、容器の先端が眼瞼(まぶた)や睫毛(まつげ)に触れないようにする。
d この医薬品は、ソフトコンタクトレンズを装着したまま点眼することができる。

 

 各成分の作用は以下の通り

a 正 b 正

上記の通り正解です。

c 正

眼瞼や睫毛には雑菌がついているため、点眼時に容器についてしまうと、容器や容器内の薬品で雑菌が繁殖してしまいます。多くの目薬は使い切りでないことから、より注意が必要です。

d 誤

ソフト・ハードに関わらず、コンタクト装着時の点眼は避けた方が良いとされています。薬品と、コンタクトにもともとついている物質とが反応して眼を傷つけるおそれがあるからです。一部のコンタクトレンズには、装着中の点眼が可能と記載されているため、そう書かれていないものは一律コンタクト装着時の点眼は避けた方が良いでしょう。

 

 

 

問49
きず口等の殺菌消毒成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a ベンザルコニウム塩化物は、石けんとの混合により殺菌消毒効果が高まる。
b ヨードチンキは、ヨウ素をポリビニルピロリドン(PVP)に結合させて水溶性とし、ヨウ素が遊離して殺菌作用を示すように工夫されている。
c クロルヘキシジン塩酸塩は、結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスに対して殺菌消毒作用を示す。
d 消毒用エタノールは、皮膚への刺激性が弱いため、脱脂綿やガーゼに浸して患部に貼付することができる。

 

a 誤

ベンザルコニウム塩化物は、石けんとの混合で殺菌消毒効果が弱まってしまいます。石鹸は多くが陰イオン性(マイナスの電気を持っている)で、これを利用して殺菌消毒していますが、ベンザルコニウム塩化物は陽イオン性(プラスの電気を持つ)の殺菌消毒作用をもっています。2つを混ぜることで電気がプラマイ0になり、お互いの作用を打ち消してしまいます。

b 誤

ヨウ素はうがい薬の主成分であり、消毒作用を持ちます。しかし、水には溶けにくく、エタノールに溶かしたヨードチンキと呼ばれる形で使用できます。ただしヨードチンキはかなり刺激性が強いので、うがい薬としては使用しません。

なお、選択肢の説明はポピドンヨードについてであり、こちらがうがい薬の成分です。先ほどのヨードチンキと作用はさほど変わりませんが、刺激が弱いため口腔内に利用できます。

c 誤

クロルヘキシジン塩酸塩は、一般細菌や真菌に効果がありますが、結核菌やウイルスには作用しません。

なお、一般細菌とは名の通り一般的な、大部分の細菌を指しています。結核菌は細菌の一種ですが、抗酸菌といって、細菌観察の際に酸性の溶液で上手く脱色できない特殊な細菌に含まれます。

d 誤

エタノールで消毒した後にその部分がスースーした経験はないでしょうか。間違って傷口にアルコールを噴射してしまって猛烈に痛くなる経験をしたことがある方も少なくないはずです。エタノールは皮膚刺激性が強いので、貼付して皮膚に触れ続けることがないようにします。

 

 

 

問50
外皮用薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一
つ選べ。
a 分子内にステロイド骨格を持たない非ステロイド性抗炎症成分として、デキサメタゾンがある。
b ケトプロフェンを主薬とする外皮用薬では、紫外線により、使用中又は使用後しばらくしてから重篤な光線過敏症が現れることがある。
フェルビナクを主薬とする外皮用薬は、皮膚感染症に対して効果がなく、痛みや腫れを鎮めることでかえって皮膚感染が自覚されにくくなるおそれがある。
インドメタシンを主薬とする外皮用薬は、妊婦又は妊娠していると思われる女性にも使用を推奨できる。

 

a 誤

デキサメタゾンは抗炎症成分ですが、分子内にステロイド骨格を持つステロイド性です。効き目が強い分正常組織へのダメージも大きいため、過剰使用や長期使用は避けます。

b 正

ケトプロフェンは、筋肉痛や打撲の鎮痛作用があり、重篤な副作用としてアナフィラキシーや光線過敏症、接触皮膚炎があります。

光線過敏症は、紫外線の刺激によって皮膚がかぶれたりする病気で、この症状を防ぐため、ケトプロフェン摂取後は屋外での長時間の活動は控えます。接触皮膚炎は、何かに触れたときに発疹や水ぶくれができる疾患です。

c 正

フェルビナクは、先ほどのケトプロフェンと同じく筋肉痛や打撲への鎮痛作用を持つ物質であり、皮膚感染症に対する効果はありません。根本である感染を治療しないまま、その症状である痛みだけを抑え続けてしまうと、その間に病状が悪化することも考えられます。むやみな長期使用は控えます。

d 誤

上記2つのケトプロフェン、フェルビナクと同じく鎮痛成分を持つインドメタシンですが、これら3成分は全て妊婦が飲むと胎児に移行する危険があるため、妊娠時の服用は控えなければいけません。

2023年度(令和5年度)登録販売者試験過去問 第3章(問31~40)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第3章の問31~40を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

目次

問31 問32 問33 問34 問35 問36 問37 問38 問39 問40

 

 

問31
呼吸器官に作用する薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物は、延髄の咳嗽中枢に作用する麻薬性鎮咳成分である。
b メチルエフェドリン塩酸塩は、交感神経系を抑制して気管支を拡張させる作用がある。
c キサンチン系成分は、心臓刺激作用も示すことから、副作用として動悸が現れることがある。
d クロルフェニラミンマレイン酸塩は、気道粘膜からの粘液の分泌を促進し、痰を出しやすくする。

 

a 誤

 デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物は鎮咳成分ですが、麻薬性ではなく非麻薬性です。鎮咳成分には、延髄に直接作用する麻薬性のものとそうでないものがあります。麻薬性のものは”コデイン”という単語が入っています。それ以外は非麻薬性として覚えましょう。

b 誤

メチルエフェドリン塩酸塩は気管支を拡張させる成分ですが、アドレナリン作動成分と言い、交感神経系を亢進させます。神経に作用する分依存性が強く、成分が乳汁中に移行することも知られています。

c 正

キサンチン成分は、ジプロフィリンという気管支拡張成分に代表され、キサンチン骨格と呼ばれる構造を持ちます。自律神経系を介さずに平滑筋に直接作用するのが特徴です。これらは、心臓刺激作用による動悸や、間接的に中枢神経系が刺激されることによる甲状腺機能障害や癲癇等、持病の悪化を引き起こす場合があります。

d 誤

クロルフェニラミンマレイン酸塩は抗ヒスタミンという、アレルギーに効く成分であり、主に気管支の症状に作用します。この成分は、気管粘膜の粘液分泌を抑制するために、痰は出にくくなります。

 

 

 

問32
咳止めや痰を出しやすくする目的で用いられる漢方処方製剤として、次の記述にあてはまる最も適切なものを一つ選べ。
 体力中程度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、しわがれ声、のどのつかえ感に適すとされる。
1 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
2 響声破笛丸(きょうせいはてきがん)
3 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
4 五虎湯(ごことう)
5 甘草湯(かんぞうとう)

 

マオウ、カンゾウ、ダイオウは副作用を生じやすいため、これらを含む成分を把握しておきます。

1 誤

麻杏甘石湯は、体力中等度またはそれ以上な人の咳や気管支炎、喘息など主に気管支の症状に作用します。マオウとカンゾウを含みます。

2 誤

響声破笛丸は体力にかかわらず利用でき、しわがれ声等に効きます。カンゾウを含みます。

3 正

4 誤

五虎湯は体力中等度以上の人の気管支喘息、気管支炎など気管支の症状に効きます。マオウやカンゾウを含みます。

5 誤

甘草湯は体力を問わず、咳、しわがれ声等に使用します。カンゾウのみを成分として含んでおり、過剰摂取はグリチルリチン酸の摂取量増加とそれによる偽アルドステロン症発症に繋がります。偽アルドステロン症は低カリウム状態を伴う高血圧を引き起こします。

 

 

 

問33
胃に作用する薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
スクラルファートは、マグネシウムを含む成分であるため、透析を受けている人では使用を避ける必要がある。
b ピレンゼピン塩酸塩は、血栓のある人、血栓を起こすおそれのある人では、生じた血栓が分解されにくくなることが考えられる。
c ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)は、消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すことを目的として配合されている場合がある。
d ウルソデオキシコール酸は、胆汁の分泌を促す作用(利胆作用)があるとされ、消化を助ける効果を期待して用いられる。

 

a 誤

スクラルファートは胃粘膜の保護や修復を行います。透析を受けている人は使用を避けなければいけませんが、その理由はマグネシウムでなく、アルミニウムが含まれているからです。同じようにアルミニウムが含まれている胃粘膜保護成分としてアルジオキサがあります。

b 誤

ピレンゼピン塩酸塩は、胃液の分泌を抑制します。副作用には排尿困難や動悸、目のかすみがあります。血栓に注意するのは、胃粘膜保護成分であるセトラキセート塩酸塩と、これが少し形を変えたトラネキサム酸という感冒薬に含まれる成分です。

c 正

ジメチルポリシロキサンは消泡成分として利用されます。お腹にたまった空気を出すことで整腸作用が期待されます。

d 正

ウルソデオキシコール酸は消化成分として働きます。腸での食物の消化には胆汁という成分がとても重要です。この胆汁の成分がコール酸やデオキシコール酸であり、その仲間であるウルソデオキシコール酸の摂取は胆汁分泌を増やし、消化を進めます。

 

 

 

問34
整腸薬又は止瀉薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 腸内殺菌成分の入った止瀉薬は、下痢の予防で服用したり、症状が治まったのに漫然と服用したりすると、腸内細菌のバランスを崩し、腸内環境を悪化させることがある。
b トリメブチンマレイン酸塩は、消化管の平滑筋に直接作用して、消化管の運動を調整する作用があるが、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある。
c ロペラミド塩酸塩が配合された止瀉薬は、効き目が強すぎて便秘が現れることがあり、まれに重篤な副作用としてイレウス様症状を生じることがある。
d ベルベリン塩化物は、海外において長期連用した場合に精神神経症状が現れたとの報告があるため、1週間以上継続して使用しないこととされている。

 

a 正

腸内には善玉菌と悪玉菌がいると聞いたことはあるでしょうか。善玉菌は乳酸菌など、腸の環境を整えたりする、身体に害のない細菌を指します。悪玉菌がいないからといって、善玉菌も排除してしまえば、結局腸内環境は悪化してしまいます。しかし、一般用医薬品の範疇で、悪玉菌だけを上手く識別して排除するのは難しいので、腸内殺菌成分の過剰摂取は、善玉菌への影響を考えて控える必要があります。

悪玉菌の方が多いときは、善玉菌とのバランスがずれているため服用を勧めますが、ある程度症状が治まった後は、バランスが整ってきたと考えられるため、服用を中止します。

b 正

問題文の通りです。文中の事項を覚えておけば問題ありません。

c 正

ロペラミド塩酸塩は食べ過ぎ飲み過ぎによる下痢に効きます。効き過ぎることがあるため3日ほどで治らなければ使用は控えます。下痢に効きすぎるため、便が硬くなりすぎて腸閉塞(イレウス)を起こすこともあります。その他の重篤な副作用にはショックや皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症があります。

皮膚粘膜眼症候群(別名スティーヴンスジョンソン症候群)と中毒性表皮壊死症はどちらも、顔から始まり全身に赤発疹やただれが生じます。前者は全身の10%未満、後者は30%以上に症状が出た状態を指し、10%未満以上30%未満では2つがオーバーラップしていると言います。

d 誤

海外において長期連用した場合に精神神経症状が現れたのは、細菌性の胃腸障害に対し腸の運動を鎮める成分である収斂成分を含む次没食子ビスマスです。

ベルベリン塩化物はそのような制約をもたない腸内殺菌成分です。aで述べた理由の通り、漫然とした長期服用は避けます。

 

 

 

問35
瀉下薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 酸化マグネシウムは、腸内容物の浸透圧をさげることにより、糞便中の水分量を増やす作用がある。
b センノシドが配合された瀉下薬については、妊婦又は妊娠していると思われる女性では、使用を避けるべきである。
c ビサコジルを含む腸溶性製剤は、胃内でビサコジルが溶け出すおそれがあるため、服用後1時間以内は牛乳の摂取を避けることとされている。
d ジオクチルソジウムスルホサクシネートは、糞便中の水分量を増して柔らかくすることによる瀉下作用を期待して用いられる。

 

a 誤

酸化マグネシウムは腸内容物の浸透圧を上げます。糞便の水分量を増やすには腸内に多くの水分を取り込まないといけません。腸内容物の浸透圧をあげることでこれを実現します。酸化マグネシウムが腸内にあることで腸内容物の濃度が高くなり、それに対して塩に水分を取られるキュウリの要領で水分が湧き出てきます。

b 正

センノシドはセンナという生薬に由来する大腸刺激性瀉下成分です。小腸・大腸刺激性瀉下成分は、腸を急激に運動させるために、早産や流産を誘発しやすく、妊婦の服用は避ける必要があります。

c 正

ビザコジルを含む腸溶性製剤は、名前の通り腸で溶けることで役割を発揮するため、胃で溶けてしまわないよう錠剤がコーティングされています。胃の中では胃酸の影響で溶けにくく、そこから抜けて腸に到達するとコーティングが解ける仕組みのため、牛乳のような制酸作用があるものを摂取すると、本来より早くコーティングが溶けてしまい、上手く効果が得られません。

d 正

ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)は問題文に示された内容のみ覚えておきましょう。

 

 

 

問36
次の記述にあてはまる漢方処方製剤として、最も適切なものを一つ選べ。
 体力中程度以下で、ときに便が硬く塊状なものの便秘、便秘に伴う頭重、のぼせ、湿疹・皮膚炎、ふきでもの、食欲不振、腹部膨満、腸内異常醗酵、痔などの症状の緩和に適すとされる。
六君子湯(りっくんしとう)
2 大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)
3 人参湯(にんじんとう)
4 麻子仁丸(ましにんがん)
5 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

 

1 誤

体力中等度以下の人の胃腸虚弱、消化不良などの胃の不調に作用します。カンゾウを含みます。

2 誤

大黄牡丹皮湯は体力中等度以上の人の月経不順や便秘に作用します。特徴的な月経への作用を覚えておきましょう。ダイオウを含みます。

3 誤

人参湯、別名理中丸は体力虚弱な人の胃腸虚弱や下痢嘔吐に作用します。カンゾウを含みます。

4 正

5 誤

桂枝加芍薬湯は体力中等度以上な人の、残便感のあるしぶり腹や下痢便秘に効きます。カンゾウを含みます。

 

 

 

問37
胃腸鎮痛鎮痙薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a チキジウム臭化物には、口渇、便秘、排尿困難等の副作用が現れることがある。
b ブチルスコポラミン臭化物は、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることが知られている。
c ロートエキスは、吸収された成分の一部が母乳中に移行して乳児の脈が速くなる(頻脈)おそれがある。
d パパベリン塩酸塩は、抗コリン成分と異なり、眼圧を上昇させる作用はない。

 

a 正

抗コリン成分であるチキジウム臭化物は、副交感神経を抑制することで口渇、便秘、排尿困難等の副作用を生じます。これは、副交感神経というリラックスの神経を抑制することで、逆の作用を持つ戦闘モードの交感神経系が優位に働いてしまうためです。戦闘モードの時に便は出ないし尿意も感じないことから、症状が予想できます。この作用の一環で、胃腸の鎮痛や鎮痙を担います。

b 正

ブチルスコプラミン臭化物は、aで述べたのと同じ抗コリン成分で作用も先ほどと同じです。それに加えて、重篤な副作用としてショックがあげられます。

なお、アナフィラキシーショックを単にショックと略すことがありますが、意味は特に変わりません。

c 正

ロートエキスは上記と同じ抗コリン作用を示す生薬です。先ほどと同じく戦闘モードなので、脈は比較的速くなっています。成分が乳汁中に移行する場合があり、移行した場合は乳児にも同じ作用を及ぼしてしまうため、授乳中の利用は控えます。

d 誤

パパベリン塩酸塩は上記3つと異なり、抗コリン作用なしで鎮痙作用を得られますが、これとは関係のない経路で眼圧の上昇を招いてしまいます。

 

 

 

問38
一般用医薬品の強心薬に配合される生薬成分のうち、鎮静作用を目的として配合されるものの組合せを一つ選べ。
a ロクジョウ
b シンジュ
c センソ
d ジンコウ

 

a 誤

ロクジョウは、強心・強壮作用を持ちます。心筋を刺激することで心臓をより収縮させることを強心作用と言います。

b 正

シンジュは鎮静作用を持ちます。強心成分と同時に摂取することで強心作用を助けます。

c 誤

センソは微量で強い強心作用を示します。一日5mg以上だと劇薬と指定されるくらいに強いです。皮膚や粘膜に触れると局所麻酔作用を示します。ヒキガエルの毒腺から分泌されたもので、毒のイメージを強めに持っておくと雰囲気をつかみやすいです。

d 正

ジンコウは、小児の疳に対してよく利用されます。鎮痛・健胃などの作用を持ちます。

 

 

 

問39
一般用医薬品の苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 体力中等度以下で、めまい、ふらつきがあり、ときにのぼせや動悸があるものの立ちくらみ、めまい、頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、神経症、神経過敏に適すとされる。
b 利尿作用により、水毒(漢方の考え方で、体の水分が停滞したり偏在して、その循環が悪いことを意味する。)の排出を促す。
c 強心作用が期待される生薬を含んでいる。
d 構成生薬としてカンゾウを含むため、高血圧、心臓病、腎臓病の診断を受けた人では、偽アルドステロン症を生じやすい。

 

a 正 b 正 d 正

苓桂朮甘湯についてはこの3つの選択肢に書かれた内容を覚えておけば問題ありません。

c 誤

bで述べられているとおり、この漢方は主に水毒の排出を目的としており、強心作用は期待できません。

 

 

 

問40
次の成分の一般用医薬品の高コレステロール改善薬を購入しようとする者への登録販売者の説明について、適切なものの組合せを一つ選べ。
 6カプセル中:<成分ー分量>
 パンテチンー375 mg
 大豆油不けん化物ー600 mg
 トコフェロール酢酸エステルー100 mg
a 腸管におけるコレステロールの吸収を抑える働きがある成分が含まれています。
b 末梢血管における血行を促進する成分が含まれています。
c 尿が黄色くなる成分が含まれていますが心配ありません。
d 1年くらい服用を続けても症状・コレステロール値に改善が見られない時には、服用を中止し、医療機関を受診してください。

 

 各成分の作用は以下の通り

 *リポタンパク質リパーゼの活性を高めてHDLの生産を促すと記述されている参考書等もあります。これは、HDLがいきなりそのものとして体内で作られるのではなく、肝臓で作ったLDLの中身が、リポタンパク質リパーゼという酵素によって分解されることでHDLに変化するという仕組みに依っています。

 *過酸化脂質には血栓を生じやすくさせるなどの害があります。

a 正

大豆油不けん化物の性質です。

b 正

トコフェロール酢酸エステルの性質です。血行の促進は末梢の血管でも起こります。

c 誤

同じ高コレステロール改善の作用を持ち、尿が黄色くなるのはリボフラビン(通称ビタミンB₂)です。尿が黄色くなるのは薬品の性質にすぎないので、使用中止の検討は不要です。

d 誤

市販薬で1年は様子の見過ぎです。即効性がないとはいえ、1~3ヶ月で症状の改善が見られなかった場合は医療機関の受診を勧めます。高コレステロールには、食生活が原因のものだけでなく、家族性のものや、他の持病から派生した病態である可能性もあることに注意が必要です。

2023年度(令和5年度)登録販売者試験過去問 第3章(問21~30)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第3章の問21~30を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

 

目次

問21 問22 問23 問24 問25 問26 問27 問28 問29 問30

 

 

問21
かぜ及びかぜ薬(総合感冒薬)に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a かぜは様々な症状が組み合わさって現れるため、様々な症状を緩和させるために多くの成分を含有する総合感冒薬を選択することが推奨される。
b かぜ薬は症状の緩和に加えて、原因となるウイルスの増殖抑制効果も期待できる。
c 冷気や乾燥、アレルギーのような非感染性の要因は、かぜの原因とはならない。
d かぜはウイルス(ライノウイルス、コロナウイルスなど)の感染が原因であり、細菌の感染は原因とはならない。

 

a 誤

一言に風邪といっても様々な症状を指すので、総合感冒薬(風邪薬)はあらゆる成分を含んでいます。しかし、不必要な成分を身体に取り込むのは良くないので、頭痛や発熱のように症状が明確な場合は、その症状に特化した医薬品を使用します。

b 誤

風邪薬にはウイルスを除去する力は存在しません。ウイルスは生物と非生物の間と位置づけられる特殊な存在であり、細菌に効く抗生物質も使えません(なお抗生物質一般用医薬品ではありません)。風邪薬はあくまで対症療法と言い、ウイルス等(細菌含む)による症状をひとまず抑えることを目的としています。

なお、風邪の8割はウイルスで起こるとされますが、細菌や冷気など他の要因も存在します。

c 誤

ウイルスや細菌が繁殖していなくても、寒くて鼻風邪を引いた、喉が痛いから風邪を引いたのだろう、などと言うことがあるはずです。乾燥や冷気による身体の不調も風邪の場合があります。

d 誤

先にも述べたとおり、風邪の8割ほどはウイルスが原因ですが、その他にも細菌が原因のものなどがあります。

 

 

 

問22
かぜ薬(総合感冒薬)の配合成分とその配合目的との関係について、正しいものの組合せを一つ選べ。
<配合成分ー配合目的>
a サリチルアミドー咳を抑える。
b グアイフェネシンー痰の切れを良くする。
c チペピジンヒベンズ酸塩ー発熱を鎮める。
ベラドンナアルカロイドーくしゃみや鼻汁を抑える。

 

a 誤

サリチルアミドは、風邪薬の中の解熱鎮痛成分に含まれます。15歳未満の小児でインフルエンザに罹患しているときは、ライ症候群と呼ばれる脳症を引き起こす恐れがあるため使用できません。

b 正

グアイフェネシンは風邪薬に去痰成分として含まれます。

c 誤

ペピジンヒベンズ酸塩は、風邪薬に鎮咳成分として含まれます。

d 正

ベラドンナアルカロイドは、風邪薬の中の抗コリン成分というくしゃみや鼻水を抑える成分です。これらの症状が起こっているとき、自律神経系の一環である副交感神経が優位に働いているのですが、この副交感神経の働きに必要なコリンを抑えることで症状を和らげます。

 

 

 

問23
かぜの症状緩和に用いられる漢方処方製剤のうち、マオウを含むものの組合せを一つ選べ。
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
b 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
c 小青竜湯(しょうせいりゅとう)
d 葛根湯(かっこんとう)

 

漢方は多くの成分からなりますが、中でもマオウとカンゾウは、重篤な副作用を起こしやすいために、注意が必要です。これらが含まれている漢方を把握しておきます。

a 誤 

柴胡桂枝湯は、風邪に効く漢方で、体力中程度またはやや虚弱な人向けです。重篤な副作用に間質性肺炎や肝機能障害、副作用として膀胱炎等があります。カンゾウを含みます。

b 誤

麦門冬湯は体力中等度以下の人向けで、痰や気管支の症状に効きます。重篤な副作用には間質性肺炎や肝機能障害があり、カンゾウを含みます。

c 正

青竜湯は、体力中等度またはやや虚弱な人の痰や気管支、鼻の症状に効きます。重篤な副作用には、間質性肺炎や肝機能障害、偽アルドステロン症があり、カンゾウとマオウを両方含みます。

なお、偽アルドステロン症とは、低カリウムや高血圧を招く病態です。アルドステロン症はアルドステロンというカリウムなどの濃度を調節するホルモンの値が上昇するのに対し、薬品等によって生じる偽アルドステロン症では、似た症状が現れるもののアルドステロンの値が上がりません。

d 正

葛根湯は、体力中等度以上の人の風邪に効きます。重篤な副作用には肝機能障害や偽アルドステロン症があり、カンゾウとマオウを両方含みます。

 

 

 

問24
解熱鎮痛薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
アセトアミノフェンは、15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も一般用医薬品として使用してはならない。
アスピリン喘息は、アスピリン特有の副作用であり、他の解熱鎮痛成分では起こらない。
c 解熱鎮痛薬の服用期間中は、飲酒は避けることとされている。
d 多くの解熱鎮痛薬には、体内におけるプロスタグランジンの産生を抑える成分が配合されている。

 

a 誤

アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬の1つです。同じ解熱鎮痛薬の成分のうち、アスピリン、サザピリン、イブプロフェンの3つが、いかなる場合も15歳未満の小児に使用してはいけないとされています。

b 誤

一般的な喘息と似た症状が出る、風邪薬の服用により生じる病態はアスピリン喘息と呼ばれます。アスピリンが原因の場合もありますが、他の解熱鎮痛成分由来でもアスピリン喘息になり得ます。

c 正

風邪薬に限らずですが、アルコール摂取後はアルコールの成分を分解するために肝臓が通常以上に働きを増します。その状態で医薬品を摂取すると本来期待されている以上の代謝が行われてしまい、肝機能障害を初めとする副作用を生じやすくなります。

d 正

プロスタグランジンは脳が感じる痛みを増強させる役割があります。よってプロスタグランジンの生成抑制によって解熱鎮痛効果が期待できます。

 

 

 

問25
解熱鎮痛薬に配合される成分の配合目的に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a ケイヒは、骨格筋の緊張を鎮める目的で配合される。
b 水酸化アルミニウムゲルは、解熱鎮痛成分(生薬成分を除く。)による胃腸障害の軽減を目的として配合される。
c メトカルバモールは、中枢神経系を刺激して頭をすっきりさせたり、疲労感・倦怠感を和らげることなどを目的として配合される。
d ビタミンB1は、発熱等によって消耗されやすいビタミンの補給を目的として配合される。

 

a 誤

ケイヒは生薬の成分で、発汗を促すことで解熱を助けます。

骨格筋の緊張を緩める成分にはメトカルバモールがあげられます。主に筋肉のこりを和らげる作用があります。

b 正

酸化アルミニウムゲルは制酸成分として扱われます。胃酸を中和する成分のことで、胃腸障害を軽減できますが、胃腸薬のように薬効を表示することはできません。

c 誤

aに示したとおり、メトカルバモールは骨格筋の緊張を緩める成分です。

「中枢神経系を刺激して頭をすっきりさせたり、疲労感・倦怠感を和らげる」のはカフェインの作用です。

d 正

ビタミンB₁はチアミン硝化物等を指します。作用は疲労回復と覚えてけば問題ありません。

 

 

 

問26
25歳女性が月経痛の症状があるため、次の成分の一般用医薬品の解熱鎮痛薬を購入する目的で店舗を訪れた。
 1錠中:<成分ー分量>
 イソプロピルアンチピリンー75 mg
 アセトアミノフェンー125 mg
 アリルイソプロピルアセチル尿素ー30 mg
 無水カフェインー25 mg
この解熱鎮痛薬に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
イソプロピルアンチピリンは、ピリン系解熱鎮痛成分によって薬疹等のアレルギーを起こしたことのある人は使用しない。
b 本剤には、血栓予防薬としても用いられる成分が含まれている。
アセトアミノフェンは、他の解熱鎮痛成分に比べて胃腸障害を起こしやすいため、本剤は空腹を避けて服用する。
アリルイソプロピルアセチル尿素は、脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする効果が期待できる。

 

各成分の作用は以下の通り。

イソプロピルアンチピリンー解熱鎮痛作用

アセトアミノフェンー解熱鎮痛作用

アリルイソプロピルアセチル尿素ー鎮痛作用

カフェインー頭をすっきりさせ、疲労感や倦怠感を和らげる

a 正

ピリン系とはピラゾロン骨格というある決まった構造が、化合物の中に含まれている医薬品を指します。イソプロピルアンチピリンは、名前から予想できるようにピリン系です。解熱鎮痛効果はかなり強いですが、抗炎症作用はあまり強くなく、他のピリン系医薬品でアレルギーを起こしたことがある場合は、似た構造で構成されるイソプロピルアンチピリンの服用にもリスクが生じるため使用は控えます。

なお、現在使用されているピリン系医薬品はイソプロピルアンチピリンのみで、アスピリンは商品名のため、ピリン系ではありません。

b 誤

上記成分一覧の通り、血栓予防の成分は含まれません。

同じく解熱鎮痛薬によく含まれるアスピリンという解熱鎮痛成分は、医療用医薬品としては血栓を予防するために使用することもありますが、一般用医薬品において同様の効果を期待することはありません。

c 誤

アセトアミノフェンは胃腸障害を起こしにくい解熱鎮痛作用の代表として覚えておきましょう。解熱鎮痛薬は、痛みを増幅するプロスタグランジンという物質に作用しますが、その過程で胃粘膜を調節する機構も鈍らせてしまうために、一般に胃腸障害を招きやすいです。そうでないものを覚えておきましょう。

d 正

アリルイソプロピルアセチル尿素は鎮痛作用を持つので正解です。なお、鎮痛成分には依存性があることも同時に覚えておきましょう。

 

 

 

問27
神経質、精神不安、不眠等の症状の改善を目的とした漢方処方製剤に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 加味帰脾湯(かみきひとう)は、体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う高血圧の随伴症状、神経症、更年期神経症、小児夜なき、便秘に適すとされる。
b 抑肝散(よくかんさん)は、体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症不眠症、小児夜なき、小児疳症、歯ぎしり、更年期障害血の道症に適すとされる。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)は、体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの不眠症神経症に適すとされる。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は、体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの貧血、不眠症、精神不安、神経症に適すとされる。

 

a 誤 d 誤

aで示されているのが柴胡加竜骨牡蛎湯、dが加味帰脾湯です。それぞれ逆の内容となっています。なお、柴胡加竜骨牡蛎湯重篤な副作用としては、肝機能障害や間質性肺炎があり、ダイオウ(副作用が生じやすい)を含みます。加味帰脾湯は重篤な副作用として偽アルドステロン症があり、カンゾウを含みます。

間質性肺炎は、肺全体が硬くなり、空咳を生じる病気です。

b 正 c 正

抑肝散・酸棗仁湯の説明は問題文の通りです。どちらもカンゾウを含みます。

 

 

 

問28
眠気防止薬の有効成分として配合されるカフェインに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 腎臓におけるナトリウムイオンの再吸収抑制作用があり、尿量の増加をもたらす。
b 胃液分泌抑制作用があるため、胃酸過多の人でも服用できる。
c 作用は弱いながら反復摂取により依存を形成するという性質がある。
d 乳汁中に移行しないことから、授乳中の女性でも摂取量を気にせず摂取できる。

 

a 正

カフェインを摂取するとトイレが近くなるのはご存知の方も多いかと思います。人間は腎臓で一度尿として濾しだした成分から、ナトリウムのような身体に有用な成分を再吸収という名の機構で血液内に取り戻します。この作用を抑制すると、尿が濃くなるで、きゅうりを塩に漬けると水分が出てくるのと同じ効果(浸透圧と言います)で、尿量が増えます。

b 誤

カフェインは胃酸の分泌を亢進(より激しく)します。よって胃腸障害を起こしやすく、胃酸過多の人には勧められません。

c 正

カフェイン依存という言葉を聞いたことはありませんでしょうか。毎日コーヒーを飲まないと、エナジードリンクを飲まないとやっていけない!といった状態をカフェイン依存と呼びます。もちろん違法薬物ほどの依存性はありませんが、一定の依存性を孕みます。

d 誤

カフェインは、妊娠中の母体から乳児に移行することが明確に知られている数少ない成分で、これにより胎児の発育不良につながる恐れがあります。乳汁中にも移行するため授乳中の女性も使用を控えます。

なお、母体から胎児に成分が移行する際、血液胎盤関門という場所を通ります。単純に胎盤を通って胎児に影響が及ぶというイメージで問題ありません。

 

 

 

問29
乗物酔い防止薬の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a ジプロフィリンは、不安や緊張などの心理的な要因を和らげることにより乗物酔いの発現を抑える。
b メクリジン塩酸塩は、胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激を和らげる。
c スコポラミン臭化水素酸塩水和物は、肝臓で速やかに代謝されるため、抗ヒスタミン成分と比べて作用の持続時間は短い。
d ジフェニドール塩酸塩は、内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流を改善する作用を示す。

乗り物酔いとは簡単に言うと目眩が生じている状態です。めまいは別名眩暈といい、乗り物酔いを防ぐ薬のことを鎮暈薬と言います。

a 誤

ジプロフィリンは、気管支を拡張する成分です。キサンチンという構造を含む通称キサンチン成分で、自律神経系を介さずに直接筋肉に作用して気管支を広げるのが特徴です。

b 誤

胃粘膜を麻痺させることで吐き気を抑えるのは、局所麻酔成分であるアミノ安息香酸エチルです。この成分は6歳未満は使用禁止です。メクリジンは抗ヒスタミン成分の一種として乗り物酔いを防ぎます。

基本的にヒスタミンは、自律神経に関わるアレルギーを起こす物質と認識しておけば問題ありません。このヒスタミンの効果を抑制することで、自律神経による嘔吐中枢の刺激等を抑えることができます。

c 正

スコポラミン臭化水素酸塩水和物については問題文に書かれている程度のことを覚えておけば良いです。抗コリン成分です。

d 正

ジフェニドール塩酸塩も問題文の通りです。作用は抗ヒスタミン成分に似ていて、自律神経反射に関わるような作用を持ちます。ただし、抗ヒスタミン成分ではなく抗めまい成分です。抗めまいと言えばジフェニドール塩酸塩ですので、必ず覚えておきましょう。

 

 

 

問30
小児の疳を適応症とする生薬製剤・漢方処方製剤(小児鎮静薬)に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a ゴオウ、ジャコウは、鎮静、健胃、強壮などの作用を期待して、小児の疳を適応症とする生薬製剤に用いられる。
b 身体的な問題がなく生じる夜泣き、ひきつけ、疳の虫等の症状については、症状が治まるまでは保護者側の安眠等を図ることを優先して小児鎮静薬を使用することは適すとされている。
c 小児の疳を適応症とする漢方処方製剤のうち、用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合は、生後1か月の乳児にも使用できる。
小建中湯(しょうけんちゅうとう)を乳幼児に使用する場合は、体格の個人差から体重当たりのグリチルリチン酸の摂取量が多くなることがあるので、特に留意する必要がある。

 

小児の疳とは、簡単に言えば癇癪を起こしているような状態です。

a 誤

問題文のような作用を示す生薬成分はジコウです。

ゴオウやジャコウは、緊張や興奮を静めることで血液の循環を促します。

b 誤

もちろん小児の夜泣きを全て親がひたすら我慢することを正当化してはいけませんが、子供の疳を親のために薬で抑えることも正当化されてはいけません。冷静に考えて、"泣きわめくなようるさいな!薬飲んで大人しくなっとけ!”とはならないのです。もし本当に子供の疳に疲れ果てている親がいた場合は、カウンセラーの紹介や、社会福祉サービスの利用につなげましょう。

c 誤

漢方は、必ず、全てのものにおいて、3ヶ月未満の乳児は使用禁止です。

d 正

問題文の通り、小建中湯の使用はグリチルリチン酸の摂取量を増加させます。グリチルリチン酸の過剰摂取は、偽アルドステロン症のリスクを急激に増大させるので、注意が必要です。

2023(令和5年度)登録販売者試験過去問 第1章(問11~20)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第1章の問11~20を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

 

目次

問11 問12 問13 問14 問15 問16 問17 問18 問19 問20

 

 

問11
高齢者への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」において、おおよその目安として65歳以上を「高齢者」としている。
b 高齢者は、持病(基礎疾患)を抱えていることが多いが、一般用医薬品の使用によって基礎疾患の症状が悪化することはない。
c 高齢者は、生理機能の衰えの度合いに個人差が小さいため、年齢から副作用を生じるリスクがどの程度増大しているか判断することができる。
d 高齢者は、喉の筋肉が衰えて飲食物を飲み込む力が弱まっている場合があり、内服薬を使用する際に喉に詰まらせやすい。

 

a 正

問題文の通り、「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」において、65歳以上が高齢者と定められています。また、1歳未満が乳児、1歳以上7歳未満が幼児、7歳以上15歳未満が小児です。小児というと小学生までをイメージするかもしれませんが、正しくは15歳未満ですので、特に用法用量を間違わないよう注意が必要です。

b 誤

薬には禁忌とが存在することがあります。例えば、副作用として腎機能を低下させることが分かっている薬を、腎臓病の人に飲ますのは禁忌です。腎機能に関わらず、高齢者は心機能や肝機能など、身体のあらゆる部位に不調が生じていることが予想されるため、一般用医薬品を利用する際に、注意が必要です。

c 誤

高齢者の生理機能の衰えは個人差が大きいとされています。ぱっとイメージしても、毎日元気に水泳やランニングをされている高齢者の方と、ほぼ寝たきりの高齢者の方と、どちらも簡単に思い浮かぶのではないでしょうか。なお、高齢者の個人差が大きいのは事実ですが、高齢者に限らずどの世代の人間でも個人差はあります。

d 正

高齢者が餅を詰まらせるのはよく聞く話でしょう。多くの高齢者は嚥下能力(ものを飲み込む力)が弱っているため、特に大きめの錠剤を服用するとき、喉に詰まらせやすいです。

 

 

 

問12
妊婦又は妊娠していると思われる女性及び母乳を与える女性(授乳婦)への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られており、母乳を介して乳児が医薬品の成分を摂取することになる場合がある。
b 多くの一般用医薬品は、妊婦が使用した場合における胎児への安全性に関する評価は困難とされている。
c 便秘薬には、配合成分やその用量によっては、流産や早産を誘発するおそれがあるものがある。
d ビタミンAは、胎児にとって非常に重要な成分の一つであるため、妊婦に対して特に妊娠初期(妊娠3か月以内)のビタミンA含有製剤の過剰摂取には留意する必要はない。

 

a 正

問題文の通り、一部の医薬品は、その成分が乳汁に移行する場合があります。この際に乳児に及ぶ影響は、明確には分かっていないですが、乳児に必要のない薬の成分を摂取させるのは避けるべきです。授乳中でも問題のない成分で構成されているかの確認が必要です。

b 正

妊婦が医薬品を使用した場合における胎児への影響は、その評価のために人体実験を行うわけにもいかないので、不明瞭であることが多いです。よって、一般に医薬品の使用は「相談すること」とされています。この表示があるときは、使用前の医師への相談が勧められています。

c 正

問題文の通り、便秘薬は流産や早産の誘発リスクがあるので、妊婦は使用を控えるべきです。

d 誤

ビタミンAが一切ないのも問題ですが、ビタミンAの過剰摂取は胎児の先天性異常を招く恐れがあるとされています。よって、様々な注意が必要な妊娠中の薬剤の中でも、ビタミンA含有製剤は特に注意が必要です。

 

 

 

問13
プラセボ効果に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
プラセボ効果は、医薬品を使用したこと自体による楽観的な結果への期待(暗示効果)は関与しないと考えられている。
プラセボ効果によってもたらされる反応や変化は、望ましいもの(効果)であり、不都合なもの(副作用)はない。
プラセボ効果は、主観的な変化だけでなく、客観的に測定可能な変化として現れることがある。
d 医薬品の使用によってプラセボ効果と思われる反応や変化が現れたときには、それを目的として使用の継続が推奨される。

 

a 誤

プラセボ効果とは、薬を飲んだことで生じる、薬の成分に依らない作用のことです。具体的には、”薬を飲んだからもう大丈夫だという安心感で症状が治ってしまい、薬の成分は関係なかった”という”暗示効果”と、”純粋に時間が経ったから症状が治まった”という”自然寛解”の2つが原因として考えられています。

b 誤

本来副作用の生じない量の薬を、ただ渡されるのと、「これを飲んだら高確率で嘔吐と下痢が止まらなくなるけど頑張って飲もうね」と言って渡されるのとでは薬へのイメージがだいぶ変わるでしょう。わざわざ悪いことを他人から吹き込まれなくても、自分自身が何となく悪いイメージを抱いている薬を飲んだ後は、気分が悪くなってしまうこともあるかもしれません。暗示効果は良いようにも悪いようにも働きます。

c 正 d 誤

先ほどの例のように、勝手な副作用を吹き込んで、その際の反応を客観的に統計を取ることは事実上は可能です。そこで測定可能な結果が得られる場合もありますが、あくまで科学的な根拠には基づかないものであり、信用性に欠けます。医薬品開発の目的としては利用されません。

 

 

 

問14
医薬品の品質に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 医薬品の有効成分には、高温や多湿により品質劣化を起こすものはあるが、光(紫外線)による品質劣化を起こすものはない。
b 医薬品が保管・陳列される場所については、清潔性が保たれるとともに、その品質が十分保持される環境となるよう留意する必要がある。
c 品質が承認等された基準に適合しない医薬品、その全部又は一部が変質・変敗した物質から成っている医薬品は販売が禁止されている。
一般用医薬品は家庭の常備薬として購入されることも多いため、外箱等に表示されている使用期限から十分な余裕をもって販売することが重要である。

 

a 誤

「高温や多湿により品質劣化を起こすものがある」は正解です。そして光によっても薬品は劣化します。薬の多くはややこしい構造の化合物で出来ています。光に当て続けることでその成分が分解してしまうと品質劣化に繋がります。

b 正

身体に利用する薬品ですから、もちろん清潔性を維持するのは重要です。また、aで述べたとおり、薬品は高温や多湿、直射日光下で劣化しうるなど、保管に注意を要する物を多いです。保管環境は重要になります。

c 正

感覚的にも正しいでしょう。医薬品は本来体内に入れるべき物ではなく、少しの間違いと思われても身体に甚大な悪影響を及ぼしてしまうこともあります。変性・変質した医薬品は絶対に販売してはいけません。

d 正

スーパーで買うお惣菜と違い、医薬品は購入してからも長期間保存し続ける物です。100錠入りの薬品を1ヶ月で使い切ったりすることなどそうそうないでしょう。よって、使用期限ギリギリの薬品は、期限内に購入しても使用するのは期限後、といった自体が発生しかねないので、販売を控えるべきです。

 

 

 

問15
一般用医薬品で対処可能な症状等の範囲に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
一般用医薬品の役割として、健康の維持・増進があるが、健康状態の自己検査は含まれない。
b 科学的・合理的に効果が期待できるものであれば、生活習慣病の治療も一般用医薬品の役割として含まれる。
c 乳幼児や妊婦等では、通常の成人の場合に比べ、一般用医薬品で対処可能な範囲は限られる。
一般用医薬品にも使用すればドーピングに該当する成分を含んだものがあるため、スポーツ競技者から相談があった場合は、専門知識を有する薬剤師などへの確認が必要である。

 

a 誤

一般医薬品の分類の中には、一般用検査薬という物が含まれます。尿糖・尿たんぱく検査薬や、妊娠検査薬が例であり、これらの、日常のイメージでは医薬品と言うより検査用品である物品も、検査”薬”の名の通り、医薬品として扱います。

b 誤

生活習慣病に関わる一般用医薬品の役割としては、「生活習慣病の疾病に伴う症状発現の予防」とされています。一般用医薬品は、医療機関での治療を受けるほどではない症状に対して用いられる物であり、”治療”が必要なほどの状態にある場合は、一般用医薬品で対処できる科学的根拠が整っていても適切とは言えません。

c 正

乳幼児や妊婦の場合、服用者本人や胎児に対する医薬品の副作用が生じやすかったり、副作用の深刻化を起因するリスクが高まったりします。医薬品の使用者がこれらに含まれる場合、注意が必要です。

d 正

例えば、市販されている多くの総合感冒薬(風邪薬)にはドーピングを疑われる成分が含まれています。近年、悪気がないのに市販薬の服用によりドーピング違反となってしまうスポーツ選手がしばしば見受けられるので、安易に判断せずにその分野に詳しい専門家に確認を取ります。

 

 

 

問16
一般用医薬品の販売時のコミュニケーションに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
一般用医薬品では、情報提供を受けた当人のみが医薬品を使用するとして、販売時のコミュニケーションを考える。
一般用医薬品の購入者は、使用者の体質や症状等を考慮して製品を事前に調べて選択しているのでなく、宣伝広告や販売価格等に基づき漠然と製品を選択していることがあることにも留意しなければならない。
c 登録販売者は、生活者のセルフメディケーションに対して、第二類医薬品及び第三類医薬品の販売、情報提供等を担う観点から、支援する姿勢が基本となる。
d 登録販売者からの情報提供は、説明内容が購入者等にどう理解されたかなどの実情を把握しながら行う必要はなく、専門用語を分かりやすい平易な表現で説明するだけでよい。

 

a 誤

誰かが調子を悪くしたら、それを心配して家族が薬を買いに行くことはよくあるかと思います。購入者=使用者とは限りません。

b 正

同じ胃腸薬であれば一番安いものにしよう、という考え方をする人がいてもおかしくないでしょう。しかし、ある胃腸薬は腎機能が悪い人は飲んではいけないとされているかもしれません。また、喉が痛いなと思って、たまたまそのときにCMでやっていた薬を買いに行くということもあるでしょう。その選択が危険な要素を含んでいないか確認することが必要です。

c 正

医師の処方箋なしに購入できる薬である一般用医薬品は、大きく第1類医薬品(リスクが特に高い)、第2類医薬品(リスクが比較的高い)、第3類医薬品(リスクが比較的低い)に分けられます。登録販売者が扱えるのはこのうち第2類医薬品と第3類医薬品で、これだけで一般用医薬品の9割を占めます。購入者の支援をあらゆる面から行います。

d 誤

もちろん自分なりにわかりやすく伝えたからと言って、それが伝わっていなければ意味がありません。購入者が正しく理解できているかを随時確かめながら説明を行います。

 

 

 

問17
医薬品の販売等に従事する専門家が、一般用医薬品の購入者から確認しておきたい基本的なポイント(事項)としての正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者等のニーズ、購入の動機)。
b その医薬品を使用する人が医療機関で治療を受けていないか。
c その医薬品を使用する人がアレルギーや医薬品による副作用等の経験があるか。
d その医薬品がすぐに使用される状況にあるか(その医薬品によって対処しようとする症状等が現にあるか)。

 

a 正

もし夜眠れないほどの頭痛が1週間続いているのが購入の動機であれば、市販薬の購入は勧めずに病院での診察を勧めなければなりません。

b 正

もし医療機関で治療を受けていて薬を処方されていれば、その薬と相互作用を起こす成分の入った市販薬を服用してしまわないように確認する必要があります。また、医療機関で治療を受けている、持病を持った方の場合、そうでない方よりも薬の副作用が出やすいことも考えられるため注意が必要です。

c 正

医薬品による副作用発症の経験がある場合、同じ成分を含む医薬品に注意するのはもちろんのこと、その副作用やアレルギーが体質等から生じている場合、他の成分の医薬品に対しても副作用を起こしやすい可能性が考えられるため、販売前に確認しておきます。

d 正

医薬品には劣化しやすい物が一定数存在します。例えば多湿にとても弱い薬品を、使用予定はないが常備薬としておいておこうと梅雨の季節に購入しようとしている人がいたら、購入を禁止はせずとも、劣化を招きやすいとアドバイスすることにもつながります。

 

 

 

問18
厚生省(当時)は、悲惨な被害を再び発生させることのないように、その決意を銘記した「誓いの碑」を建立した。この「誓いの碑」の記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せを一つ選べ。
「誓いの碑」には、「命の尊さを心に刻みサリドマイド、スモン、( a )のような( b )による悲惨な被害を再び発生させることのないよう( c )の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する 千数百名もの感染者を出した『( d )』事件 このような事件の発生を反省しこの碑を建立した平成11年8月 厚生省」と刻まれている。

 

a HIV感染 b 医薬品 c 医薬品の安全性・有効性 d 薬害エイズ

もちろん碑の文章を覚える必要はありませんが、過去の薬害を把握しておくことは必要です。なお、薬害とは医薬品の副作用によって甚大な被害が及んだケースを指します。

サリドマイドは、催眠鎮静剤として利用されていたものの、妊婦が飲むとその成分が胎児に移行し、血管新生が阻害されたために四肢欠損等の障害が生じました。副作用情報収集のきっかけになっています。

スモンは整腸剤であるキノホルム製剤の服用で生じた亜急性脊髄視神経症という疾患の略称です。主に麻痺や失明などの神経症状を引き起こします。医薬品副作用救済制度設立のきっかけです。

HIV、通称エイズは、血友病という血の止まりにくい病気の治療に使われていた、ヒトの血液成分が由来の医薬品にHIVウイルスが含まれていたために多くのエイズ患者が発生た薬害エイズの原因ウイルスです。問題にある誓いの碑がたてられたきっかけです。

 

 

 

問19
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)及びCJD訴訟に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a CJD訴訟とは、脳外科手術等に用いられていたウシ原料由来の人工硬膜を介してCJDに罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
b CJDは、細菌の一種であるプリオンが原因とされている。
c 本訴訟では、輸入販売業者及び製造業者が被告として提訴されたが、国は提訴されなかった。
d 本訴訟を一因として、生物由来製品による感染等被害救済制度が創設された。

 

a 誤

ヒト乾燥硬膜という、ウシではなくヒトの硬膜に由来しています。

b 誤

プリオンとは細菌ではなくタンパク質の一種です。タンパク質が上手く本来の形になれなかったときにプリオンというタンパク質の塊になります。アルツハイマー病の原因はプリオンとされており、CDJにおいても認知症に似た症状が現れます。

c 誤

国、輸入販売業者及び製造業者全てが被告として提訴されました。のちに地裁で和解が成立しています。

d 正

問題文の通りです。この薬害事件を契機に、「生物由来製品による感染等被害救済制度」が作られました。

 

 

 

問20
C型肝炎及びC型肝炎訴訟に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
C型肝炎訴訟とは、ウイルスに汚染された注射器(注射針や注射筒)が連続使用されたことが原因で、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
b 国及び製薬企業を被告として、複数の地裁で提訴されたが、判決は、国及び製薬企業が責任を負うべき期間等について判断が分かれていた。
C型肝炎ウイルス感染者の早期・一律救済の要請にこたえるべく、2008年1月に議員立法による特別措置法が制定、施行された。
d 「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」を受け、医師、薬剤師、法律家、薬害被害者などの委員により構成される医薬品等行政評価・監視委員会が設置された。

 

a 誤

本文のように注射器の使い回しにより生じたのはB型肝炎です。C型肝炎は、血液から作られた医薬品である血液製剤C型肝炎ウイルスが含まれていたために広まってしまいました。

b 正 c 正

国や製薬企業を被告として裁判が行われ、その判決内容は地域ごとに相違がありました。国によるC肝特措法の成立に伴う被害者救済策の提示により和解が進んでいますが、まだ完全には解決していません(2024年2月現在)

d 正

医薬品等行政評価・監視委員会とは、C型肝炎のみに留まらず、様々な薬害に対して議論していく厚生労働省管轄下の組織です。医療関係者や法律家など、薬害に携わる多領域の専門家から構成されています。

2023(令和5年度)登録販売者試験過去問 第1章(問1~10)

2023年度(令和5年度)の登録販売者試験過去問から、第1章の問1~10を取り上げて”超”詳しく解説していきます。(なお、問題は関西広域連合のものを利用します)

いきなり過去問を解いて勉強できるように構成しています。

 

 

目次

問1     問2   問3   問4   問5   問6   問7   問8   問9   問10

 

 

問1

医薬品の本質に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 法では、健康被害の発生の可能性の有無にかかわらず、異物等の混入、変質等がある医薬品を販売してはならない旨を定めている。
一般用医薬品には、添付文書や製品表示に必要な情報が記載されているので、販売時に専門家は専門用語を分かりやすい表現で伝えるなどの情報提供を行う必要はない。
c 医薬品は、効能効果、用法用量、副作用等の必要な情報が適切に伝達されることを通じて、購入者等が適切に使用することにより、初めてその役割を十分に発揮するものである。
d 医薬品は、人の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されるなど、その有用性が認められたものであり、使用に際して保健衛生上のリスクは伴わない。

 

<解説>

a 正

ここでの法とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医療機器等法)を指します。この法律では、健康被害の発生の可能性の有無にかかわらず、異物等の混入、変質等があってはならないと定められています。

b 誤

たしかに一般用医薬品には添付文書や製品表示に必要な情報が記載されていますが、それだけでは内容の誤解や理解不足が生じかねません。販売時には登録販売者または薬剤師が専門用語を分かりやすい表現で伝えるなどの工夫が必要です。

せっかく専門家を置いているのにわかりやすい説明が不要ってことはないですし、それをわざわざ試験で答えさせるのはナンセンスです。

c 正

 文中にもある通り、医薬品は効能効果・用法用量・副作用等の必要な情報が適切に伝達されて、購入者等が適切に使用することにより、初めてその役割を発揮します。「すべてのものは毒であり、毒でないものはない。用量だけが毒でないことを決める。」という言葉がありますが、どんな物質も必要な情報のもと用法を守って使用しないと毒となります。

d 誤

cの解説の通り、医薬品含めこの世の全ての物質は利用方法によっては保健衛生上のリスクを伴うため、正解は「誤」です。なお、人の疾病の診断に用いられるのは多くが一般用検査薬と呼ばれるもので、例として尿糖・尿たんぱく検査薬や妊娠検査薬があります。予防に利用される医薬品の例としては、滋養強壮の効果を持つ薬品などがあげられます。例えばビタミンB₁₂は赤血球の形成を助ける作用を持ちますが、これは何らかの症状の改善を目的にするというよりは、ビタミンB₁₂の不足による貧血等の症状を”予防”しています。

 

 

 

問2
医薬品のリスク評価に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 医薬品は、治療量上限を超えると、効果よりも有害反応が強く発現する「中毒量」となり、「最小致死量」を経て、「致死量」に至る。
b 医薬品は、少量の投与でも長期投与されれば慢性的な毒性が発現する場合がある。
c ヒトを対象とした臨床試験の実施の基準には、国際的にGood Clinical Practice(GCP)が制定されている。
d 医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準として、Good Vigilance Practice(GVP)が制定されている。

 

a 正 b 正

どんな物質も、規定の量以上を摂取すると毒となります。医薬品とは基本的に体内で”自然に”起こっている何か(入ってきたウイルスを追い出すための自然な機構である炎症反応など)を止めるものですから、比較的身体に害になりやすくなっています。医薬品でもたらされる作用のうち、身体への(良い)効果よりも有害反応である副作用の症状が強く現れるとそれが中毒量で、治療量上限を超えたことになります。それより多いと最小致死量、致死量と呼び方が推移していきます。

治療量上限を超えるんだから有害なのは間違いありません。中毒量、最小致死量、致死量の順にやばさが増していくのは直感で理解できます。

c 正

ヒトを対象とした臨床試験ではGCP(Good Clinical Practice)が利用されます。よく比較されるのはその前段階である動物実験のGLP(Good Laboratory Practice)です。他にも試験の略称が出てきますが、この2つが比較対象になるので注意して覚えておきましょう。臨床は人相手なのでClinical。いつもクリニックで診察を受けますよね。動物実験は実験室(Laboratory)で行われるのでGLPです。

ちなみに人を人類というより1つの生物種として見るとき、ヒトというカタカナ表記になります。区別は出来なくて大丈夫です。

d 誤

医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準はGPSP(Good Post-marketing Study Practice)、製造販売後の安全管理基準がGVP(Good Vigilance Practice)です。この2つが対になって出題されます。どちらも製造販売後の基準ですが、GVPは医薬品の製造販売業に携わる場合必ず必要な安全管理についてなのに対し、GPSPは販売時点で必須ではなく、製図販売後の調査・試験が必要になった際に定めるものです。

 

GPSP=調査・試験するなら必要 GVP=必ず必要な安全管理基準

 

 

 

問3
健康食品に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 「特定保健用食品」は、身体の生理機能などに影響を与える保健機能成分を含むものであり、特定の保健機能を示す有効性や安全性などに関して、国への届出が必要である。
b 「栄養機能食品」は、国が定めた規格基準に適合したものであれば、身体の健全な成長や発達、健康維持に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)の健康機能を表示することができる。
c 「機能性表示食品」は、事業者の責任で科学的根拠をもとに疾病に罹患した者の健康維持及び増進に役立つ機能を商品のパッケージに表示するものとして国に届出された商品である。
一般用医薬品の販売時には、健康食品の摂取の有無について確認することは重要で、購入者等の健康に関する意識を尊重しつつも、必要があれば健康食品の摂取についての指導も行うべきである。

 

a 誤

特定保健用食品はあくまで食品です。医薬品は品質や有効性も重要視されているのに対し、食品は安全性の確保のみ規制対象となります。特定保健用食品消費者庁への申請でマークを得るものの、「身体の生理機能などに影響を与える保健機能成分を含む」「有効性を国に届け出る」と言い切ってしまうのは不適切です。

食品は安全性が保証されても効能の保証を断言することはできません。表示するだけ。

b 正

特定保健用食品と同様に、食品なので栄養成分の健康機能を”表示”するに留まります。栄養機能食品だから栄養成分の健康機能を“表示”。そのままですね。

c 誤

繰り返しです。承認申請を消費者庁に対して行います。国の機関であり、事業者ではありません。

d 正

健康食品は食品のため、その有効性については保証されていませんが、例えばビタミンを含んでいる健康食品というのは事実としてあるかと思います。消費者が購入しようとしている一般用医薬品もビタミンを含んでいると過剰摂取になってしまうかもしれません。どんなものも、摂取量が基準値を上回れば毒になります。気をつけましょう。

 

 

 

問4
セルフメディケーションに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ
選べ。
世界保健機関(WHO)によれば、セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、中程度の身体の不調は自分で手当てすること」とされている。
b 急速に少子高齢化が進む中、持続可能な医療制度の構築に向け、医療費の増加やその国民負担の増大を解決し、健康寿命を伸ばすことが日本の大きな課題であり、セルフメディケーションの推進は、その課題を解決する重要な活動のひとつである。
c 平成29年1月からは、適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、条件を満たした場合にスイッチOTC(Over The Counter)医薬品の購入の対価について、一定の金額をその年分の総所得金額等から控除するセルフメディケーション税制が導入された。
セルフメディケーション税制については、令和4年1月の見直しにより、スイッチOTC医薬品以外にも腰痛や肩こり、風邪やアレルギーの諸症状に対応する一般用医薬品が税制の対象となっている。

 

a 誤

正しくは「中程度→軽度」です。健康に関する定言をしているのは大体が世界保健機関(WHO)で、そこでは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度の身体の不調は自分で手当てすること」であるセルフメディケーションが提唱されており、近年関心が高まっています。

中程度の不調を自分で処理してしまうのはまずそうですよね。

b 正

先述のように自分自身の健康に責任を持ったり、軽度の体調不良を自分で手当てするセルフメディケーションを実現することは、医療費の削減に繋がります。現在少子高齢化に伴う年金問題が取り沙汰されていますが、年を取ると身体の不調が起こりやすいという人間としての特性上、少子高齢化は医療費負担の増加にも影響します。国民の健康意識を向上させておくことは、この医療費増大を少しでも和らげることに役立ちます。

c 正 d 正

OTC医薬品とは、薬局で処方箋なしに購入できる一般用医薬品のうち、”over the counter”つまり薬局のカウンターの向こうで買うもの(商品棚には並んであらず、カウンターで注文しなければならないもの)を指しています。昔は薬は当たり前のように医師に処方されるものでしたが、セルフメディケーションの考え方もあいまり、軽度の症状であれば市販の医薬品を購入して自分で対処できるようになっています。このときに、「スイッチOTC医薬品の他、風邪やアレルギーの症状に利用する」などの条件を満たせば、一定の金額をその年分の総所得金額等から控除することが可能です。医療用医薬品からの移行がセルフメディケーションに乗っ取っていることから、セルフメディケーション税制と呼ばれます。なお、スイッチOTC医薬品とは、元は医師からの処方箋が必要な医療用医薬品だったものの、OTC医薬品へと移行(スイッチ)したものを指します。

 

 

 

問5
アレルギーに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 外用薬によって、アレルギーが引き起こされることはない。
b 医薬品の有効成分だけでなく、薬理作用がない添加物も、アレルギーを引き起こす原因物質となり得る。
c アレルギーと体質的・遺伝的な要素は関連がないため、近い親族にアレルギー体質の人がいたとしても注意する必要はない。
d 医薬品の中には、鶏卵や牛乳等を原材料として作られているものがあるため、それらに対するアレルギーがある人では使用を避けなければならない場合もある。

 

アレルギーとは身体にとっての異物を追い出すための反応を指しています。例えば卵アレルギーの人は、身体が間違って卵を危険なものと判断してしまうために、その成分を追い出したり体内で処理することに必死になってしまい、炎症が起こったり咳くしゃみが止まらなくなります。

a 誤

外用薬であろうと、医薬品としての効用がある時点で、皮膚から成分が体内に浸透しているはずですので、それを異物と認識してしまえばアレルギー症状を呈します。

b 正

薬理作用のない添加物とは、有効成分が溶けやすくしたり、逆に胃に到達するまで解けないようにコーティングしたりするために利用されます。しつこいですが、どんな物質であろうと身体が異物と認識すればアレルギー反応が起こります。

c 誤

アレルギーには体質的・遺伝的要素もあります。アレルギー反応に関わる免疫関連の細胞のバランスが崩れている人はアレルギーを起こしやすい、つまりアレルギー体質だということになります。細胞のバランスなどは頻繁に遺伝によって左右されており、例えばアレルギー性鼻炎を抱えている親の子は、そうでない子供よりもアレルギー性鼻炎に罹患するリスクが約4倍になるとされています。ただし、遺伝の詳しいメカニズムは明らかになっていません。

d 正

風邪薬には細菌を溶かすためにリゾチームという成分を含んでいるものがありますが、このリゾチームは卵の白身の成分でもあります。もちろん鶏卵や牛乳のような主要なアレルギー源をわざわざ薬に利用することは少ないですが、薬効のある成分がたまたまアレルゲン(アレルギー源の物質)に含まれる物質と類似していて、アレルギー反応が生じることは十分に考えられます。

 

 

 

問6
医薬品の不適正な使用と副作用に関する記述の正誤について、正しい組合せ
を一つ選べ。
a 医薬品の不適正な使用は、概ね使用する人の誤解や認識不足に起因するものと、医薬品を本来の目的以外の意図で使用するものに大別することができる。
b 人体に直接使用されない医薬品であっても、使用する人の誤解や認識不足によって、使い方や判断を誤り、副作用につながることがある。
c 医薬品の長期連用により精神的な依存がおこり、使用量が増え、購入するための経済的な負担が大きくなる例が見られる。
d 医薬品は、その目的とする効果に対して副作用が生じる危険性が最小限となるよう、使用する量や使い方が定められている。

 

a 正

問題を簡潔に言い換えると、「医薬品の不適切使用には、意図的でないもの(誤解や認識不足)と意図的なものに分けられる」となります。もちろん意図的か意図的でないかの2通りしかありません。

なお、「副作用」は適切な量のみ摂取している中生じる症状を指しており、医薬品を不適切使用したために不都合な症状が生じても、それは副作用ではありません。

b 正

人体に直接使用されない医薬品の例には殺虫剤が挙げられます。殺虫剤も医薬品なので間違わないようにしましょう。これは人体には直接使用されませんが、殺虫スプレーを誤って吸い込んでしまうと身体に害があるのはご存知でしょう。このように、人体に向けていなくても人体に副作用が生じる可能性は十分にあります。

c 正

違法薬物をする際に、一度手をつけてしまうと精神的にも身体的にも依存してしまう。さらに使用し続けると効果が感じられなくなってきて使用量がどんどん増えていく、という話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。一般用医薬品の場合は、純粋に「大切な時に起こる頭痛が怖くて薬が手放せない」といった例もありますが、市販の医薬品の中にも大麻と似た成分が少量とは言えど含まれていることもあり、病的な意味での依存にも注意が必要です。

d 正

本文は全て正しいです。医薬品としての(良い)効果と副作用とのバランスを取ることが重要なので、過剰摂取は副作用が強くなるようにバランスが傾いてしまいます。抗がん剤などは、副作用が内容量にしてしまうと良い効果もなくなってしまうために、患者さんの体力などとも相談してこのバランスを伺うことになります。

 

 

 

問7
一般用医薬品の適正使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ
選べ。
a 手軽に入手できる一般用医薬品を使用して、症状を一時的に緩和するだけの対処を漫然と続けているような場合には、適切な治療の機会を失うことにつながりやすい。
b 指示どおりの使用量であれば、一般用医薬品を長期連用しても、医薬品を代謝する器官を傷めることはない。
c 青少年は、薬物乱用の危険性に関する認識や理解が必ずしも十分でないため、身近に入手できる薬物を興味本位で乱用することがある。
d 適正に使用された場合は安全かつ有効な医薬品であっても、乱用された場合には薬物依存を生じることがある。

 

a 正

例えば頭痛が1ヶ月続いているとします。その間頭痛薬を使用し続けたら、症状は緩和し続けられるかもしれませんが、本当は重大な病気の症状だったのに見落とすきっかけになりかねないですよね。生理痛をずっと薬で抑えて我慢していたら子宮内膜症だった、なんてのは最近よく聞くようになった例です。痛みが生じているということは少なからず身体の中で異常が起こっているはずです。その痛みが止まないときは、痛みを抑える方法もそうですが、まずは原因を突き止める方向に考えることが必要です。

b 誤

薬というものは総じて少なからず身体に害です。摂取した薬は身体の中で分解されます(ずっと体内にのこっているわけにはもちろんいきません)が、それは本来普通に生活している中で多用する機能ではありません。その、普通は酷使しない機能を使い続けると、分解を担当する身体の部位が痛んでしまったり、薬品の分解でキャパオーバーした臓器が本来の役割にエネルギーを割けなくなりかねません。薬の長期摂取は控えるべきです。

c 正

乱用と一言で言われていますが、先輩に勧められて薬を乱用してしまうタイプだけでなく、純粋な知識不足で、「思ったように薬が効かないからもっと飲めばいいんだ」といった誤った考え方をしてしまう可能性もあります。もちろん大人の薬物乱用も重大な問題ですが、青少年の方がその後に対する考えが十分でないまま危険な道に走ってしまいやすいのも事実です。

d 正

薬品には”依存性”や、そこまでではないが薬の習慣的な服用に繋がる”習慣性”をもつものが一定数あります。薬の錠数が増えれば摂取する依存性物質や習慣性のある物質の合計量が増えるので、乱用によって薬物依存が助長されかねません。

 

 

 

問8
他の医薬品との相互作用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ
選べ。
a 医薬品の相互作用は、医薬品が吸収、分布、代謝又は排泄せつされる過程で起こり、医薬品の薬理作用をもたらす部位において起こることはない。
一般用医薬品のかぜ薬(総合感冒薬)やアレルギー用薬では、成分や作用が重複することが多く、通常、これらの薬効群に属する医薬品の併用は避けることとされている。
一般用医薬品の購入者等が医療機関で治療を受けている場合には、一般用医薬品を併用しても問題ないかどうか、治療を行っている医師若しくは歯科医師、又は処方された医薬品を調剤する薬剤師に確認する必要がある。
d 複数の医薬品を併用した場合、医薬品の作用が減弱することはあるが、増強することはない。

 

a 誤

医薬品の相互作用は、「医薬品が吸収、分布、代謝又は排泄せつされる過程」で起こり、「医薬品の薬理作用をもたらす部位」でも起こります。極端な例で言えば、カフェインを多量に含んだエナジー飲料を飲んだ後に、カフェインの含まれた眠気防止の市販薬を飲んでしまうと、カフェイン過多になって、カフェインの作用が強く出過ぎたり、副作用を招いたりします。胃酸の分泌を増強させる薬と抑える成分の入った別の薬を飲んでしまっては薬理作用が打ち消し合ってしまいます。このように、薬理作用の観点からいっても相互作用は起こります。

b 正

風邪薬は総合感冒薬の言葉からも分かるとおり、解熱鎮痛成分や去痰成分を始め、一通りの風邪症状に効果のある成分が色々混ざっています。つまり、風邪薬の網羅範囲が広すぎて、他の色んな薬と守備範囲が簡単に重なってしまうのです。重なると相互作用により作用の増強のしすぎや副作用の発生リスクが上昇します。よって風邪薬と、作用が似ている別の薬の併用は避ける必要があります。

c 正

薬の守備範囲が重なってはいけないのは、一般用医薬品同士だけでなく、医療用医薬品と一般用医薬品の場合も同様です。どの組み合わせであったとしても、同様の成分を含んでいた場合に相互作用が起こって期待しない症状を招く可能性があるため、医師や薬剤師への、服用薬の確認またはお薬手帳の確認などが必要です。

d 誤

aの解説同様、2つの薬にカフェインなどの同じ物質が含まれていたら作用の増強を招きます。反対に、胃液分泌を抑える薬と増強させる薬を併用すると効果が半減してしまいます。

 

 

 

問9
食品と医薬品の相互作用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ
選べ。
a カフェインを含む総合感冒薬と、コーヒーを一緒に服用しても、カフェインの過剰摂取になることはない。
酒類(アルコール)は、医薬品の吸収や代謝に影響を与えることがある。
c 生薬成分が配合された医薬品とハーブ等の食品を合わせて摂取すると、その医薬品の効き目や副作用を増強させることがある。
d 外用薬であっても、食品によって医薬品の作用や代謝が影響を受ける可能性がある。

 

a 誤

問8aの解説と同様です。カフェインに限らず、過剰摂取は相互作用により身体に悪影響を与えます。

b 正

お酒を飲み過ぎると肝臓が悪くなる、と聞いたことがないでしょうか。これは肝臓でお酒のアルコールが無毒化されているからで、このとき肝臓は無毒化のために活発に活動しています。この状態で薬品が入ってくると、医薬品の体内での処理も通常よりも高速で起こります。すぐに医薬品が分解されてしまって効果がなくなったり、逆に肝臓でいじられすぎて作用が大きくなりすぎたりと、薬品の吸収(消化管から吸収して血管などに取り込むこと)や代謝(生体内での全ての化学反応の総称)が変化します。

c 正

所謂生薬のうちには、医薬品の効能が表記されておらず、ハーブなどの形で食品として流通しているものもあるため、これと生薬配合の医薬品を同時摂取すると、同じ効能の物質を双方から得る過剰摂取が起こります。これでは相互作用により作用や副作用が増強しかねません。

d 正

外用薬であっても、皮膚や粘膜から薬品の成分が浸透して身体に影響を及ぼしているので、口から摂取した食品と、皮膚から浸透した成分が体内で相互作用を起こす可能性は十分に考えられます。

 

 

 

問10
小児等への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ
選べ。
a 小児の血液脳関門は未発達であるため、吸収されて循環血液中に移行した医薬品の成分が脳に達しやすい。
b 小児では、大人と比べて身体の大きさに対して腸が長いため、服用した医薬品の吸収率が相対的に高い。
c 乳児向けの用法用量が設定されている医薬品であっても、乳児は医薬品の影響を受けやすく、また、状態が急変しやすいため、基本的には医師の診療を受けることが優先され、一般用医薬品による対処は最小限にとどめるのが望ましい。
d 医薬品の販売に従事する専門家は、年齢に応じた用法用量が定められていない医薬品の場合には、成人用の医薬品の量を減らして小児へ与えるように保護者等に説明すべきである。

 

a 正

血液脳関門とは、体中に張り巡らされた血管から、脳の血管に入るときに通過する門を指しています。脳はとても敏感で脆弱な器官なので、脳血管を通過できる物質は限られていますし、通常薬の成分はこの血液脳関門を通過することは出来ません(つまり通常の薬品は脳に作用しません)。しかし、小児はこのフィルター機能が十分に機能しないために、脳に影響してはいけない薬品が脳に作用してしまいやすくなります。

b 正

小児の身体はもちろん大人よりも小さいですが、だからといって身体の小ささと同じくらい腸も短いと、普段の食事の消化が十分に行えません。そのため、相対的に腸が長いことになります。薬の吸収は主に省庁で行われるため、必要以上に薬品を吸収してしまうのです。正確には、小児がたくさん吸収してしまうのではなく、大人より少ない量でいいのに大人と同じように吸収してしまうため問題になります。

c 正

bで述べたとおり、小児、中でも乳児は身体の大きさに対する相対的な腸の長さが長いため、薬品が効きやすく、乳児用の容量が決まっていたとしても個人差なども出やすく、注意が必要です。また、問題文にもあるとおり、乳児は急変を起こしやすいため、少しの体調不良でも軽く見ずに、早めに医療機関を受診することが必要です。

d 誤

子供用の容量が記載されていない大人用の薬品とは、子供に投与してはいけない成分が含まれている薬をさしています。量を減らせば飲んでいい場合はきちんと記載されています。記されていない=飲んではいけないです。一例ですが、某頭痛薬は子供に飲ませた場合にのみ”インフルエンザ脳症”という非常に重篤な病気を引き起こす可能性があり、量に関係なく子供は服用不可となっています。